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春爛漫

第八話

作:HIKU


 「良美のやつには参ったな〜」

そう言いながら、俺は昨夜の手術後最初のお風呂を思い出していた。

「お姉ちゃん、早くおいでよねっ!」

良美のやつは、お風呂がたまったのを確認すると、さっさと制服を脱いで入ってしまった。

仕方がなく、俺もパジャマを脱ぐとお風呂に向かったのだった。

「それじゃ〜お姉ちゃん!

 女の子のお風呂の入り方、教えてあげる〜!」

そう言うと、俺は良美にシャワーの洗礼を受けたのだった。

「は〜い!まず足下からお湯をかけていって、

 徐々に上まであがっていってね!

 そう、そうやって全身を流してから、今度は足を少し開いてね。」

俺は、もう良美の言うなりだった。

「そうして、女の子の大事な部分にお湯を当てて、

 そうそれでいいわよ!

 そしたら、ボディソープを手にとってよく泡立ててねっ!

 決して、そのまま付けて洗わないこと、

 しみると、結構痛いわよ〜!」

痛いと聞いた俺は、念入りに両手で泡立てたのだった。

「もう、そのくらい泡立てたらいいわよ!

 そしたらその泡で、まず大事な部分の周りからねっ!

 そうそう、ヒダヒダの部分は優しく丁寧に洗うのよ!

 駄目、そんなんじゃ!

 指先で、そ〜っと撫でるように洗うのよ!

 そして段々内側まで洗って、

 はい、そこまででおしまい!

 後は、お湯をかけてよく流してねっ!」

大事な所を洗い終えた俺だったが、その頃の気分は最悪だった。

だって、心はまだまだ完全に男だったからである。

しかし、良美はそんな俺にお構いなしだった。

「そしたら、ゆっくりとお風呂に浸かって・・・

 お姉ちゃん!後色々なこと教えるからしっかりと覚えていってね!」

そうして、俺は女の子のお風呂の入り方の一から十までを教わることになったのだった。

 

さて、それから一週間が過ぎ経過も良く退院する日が決まった。

「良かったわね!お姉ちゃん!」

「まあ、とりあえず退屈な日々から解放されるのはうれしいよ!」

「その日は、ママと一緒に来るからね〜

 後、2日間の辛抱よ!

 うちに帰ったら、ビックリするわよ〜!」

「なんかあるのか?」

「それは、帰ってからのお・た・の・し・み!」

そして、良美は帰っていった。

「何なんだろうか?」

そう思いながら、受付を彷徨いていたら見たことのある女の子にあった。

「そうだ、隣に入院してた娘だ!

 確か、相沢理恵だったよな〜」

そう、思って見つめていると、そんな俺に気がついたのか、こちらに向かってきた。

「こんにちは〜」

「あっ、こんにちは!」

「まだ入院されていたんですねっ。」

「明後日退院なんだけどさ。」

「良かったですわねっ!」

「うん、ありがとう、

 ところで、今日は?」

「定期検診。」

「聞いてもいいかなぁ?何で入院してたのか。」

「腹膜炎だったけど、こじらせちゃってて・・・」

「そっか〜、それは大変だったね〜

 あっ、俺の名前、

 大山 美津子、よろしく!」

「私は〜」

「知ってるよ、相沢理恵  だろ!」

「まあ〜、

 え〜と、美津子さんは何で入院されていたのか聞いてもいいですか?」

「俺か?俺はね〜」

本当のことを言うのはと思い、

「あそこに、腫瘍が出来ててね、それを取ったんだよ!」

「そうなんですか〜

 それは、私より大変でしたわね〜」

「別に大変じゃなかったけどね・・・・・・」

そう言いながら、俺は下半身を撫でていたのだった。

「相沢 理恵さん〜、会計窓口まで〜」

「あっ、私だわ、それじゃ美津子さん、すいません。」

そして、彼女は会計窓口へと行ってしまった。

会計を終えた彼女が戻ってきて、

「そう言えば、美津子さんは明後日退院するんでしたねっ。」

「そうだけど、何か?」

「それだったら、綺麗にしないといけないわねっ!

 丁度いい物持ってるからお部屋にいましょう!」

そう言うと、彼女は俺の手を強引に引っ張って病室に向かったのだった。

「さあ〜美津子さん、そこのソファーに座ってくださいな。」

そして彼女は、バックからポーチを取り出すとその中から毛抜きを取り出した。

「じっとしていて下さいねっ!今から綺麗にしてあげますから!

 入院中ほったらかしにされていたのですね。

 眉毛を綺麗に整えてあげますわよ!」

そう言うと、俺の眉毛を次々と毛抜きで引き抜いていった。

「痛てっ、てててててっ!」

10分後、

「さあ〜て、出来ましたわよ!」

鏡で見せられたが俺の眉毛は細く柔らかな弧を描いた物になっていた。

その所為か、一段と少女らしい顔立ちになっていたのだった。

「どう?、気に入っていただけました〜?」

俺は、どう返事していいかわからず、ただ鏡を見つめているだけだった。

やがて、

「眉一つだけで、こんなに変わるんだな〜」

と言うと、彼女はうれしそうな顔をして俺に近づいてきた。

そして背後に回ると、後ろから俺を抱きしめたのだった。

これには俺もビックリしたが、なぜか払いのけようとする気がしなかった。

暫く俺は、そのままじっとしていると彼女は、

「可愛いわよ、美津子さん!」

そう言って、俺のまだ膨らんでいない胸を撫でるようにしてきたのだった。

後は、なるようになったのだが、一線を越えることはなかったのであった。

そして、帰り際に彼女は住所と電話番号書いたメモをおいて帰っていった。

 

2日後、

いよいよ退院の日だ、家族が来るのを今か今かと待っていた。

朝の回診が終わり、看護婦がこれからの飲み薬を置いていった。

もっとも薬の方は先週から飲んでいるものだったが・・・・・・

先生に聞いたら、この薬は女性化の促進剤でエチニルエストラジオールの0.5mgの錠剤で朝晩飲んでいたものだ。

やがて、お袋と良美が迎えに来た。

「美津子、ごめんなさいね。なかなか来られなくて。」

「いいよ、お袋は会社があるんだから。」

「お姉ちゃん、その分私が面倒見てきたものね〜!」

「良美ちゃん、ご苦労様!」

「あれ、お姉ちゃん、可愛い顔になってるわねっ!」

「ぎくっ!」

「ほんと、美津子、美人だわよ!」

「なるほど、眉をそろえたのね、似合うわよ!お姉ちゃん!」

「それじゃ、美津子、着替えて帰りましょうか。」

そう言うと、良美のやつが紙袋から、色々と服を取り出したのだった。

「おいおい、それは・・・」

出てきたのは、春物の淡い色のワンピース、キャミソールにランジェリー、ストッキングにレースの飾りの付いた靴下、そして、カーディガンだった。

俺は、それを見て固まってしまった。

「これを、俺が着るのか!」

「美津子、“俺”なんて言わないの!

 “私”か、せめて“僕”って言いなさい、いいわね!」

と、お袋は社長の顔をして俺をにらんだ。

「はいはい、わかりましたよ!」

「はい、それじゃ着替えなさい。」

「でも、どれから?」

「もう、お姉ちゃんたら、いつも何を見てきたの?」

「何を見てきたのって・・・」

「いいわ、私が手伝ってあげる。」

こうして、俺は良美に手伝ってもらって着替え終わった。

鏡で見てみたら、そこには可憐な少女が映っていた。

「これが・・・俺・・・僕?」

「後は、ヘアースタイルね、お姉ちゃん。」

「美津子、こっちへいらっしゃい、」

そう言って、お袋は、ウイッグを取り出した。セミロングのストレートヘアの物だった。

それを俺にかぶせると、丁寧に整えて最後にカチューシャを付けて終わった。

「後は、お顔だけね。

 今日は、ローションとリップだけでいいわねっ!」

そして、すべての用意が終わって、病室のロッカーを片づけると詰め所に挨拶をして帰ることにした。

「色々と、お世話になりました〜!」

「あれっ?美津子ちゃんね!見違えたわよ〜

 それじゃーお大事にね、1ヶ月後の検診忘れないようにね、

 薬も、忘れずに飲んでいってね。」

そして、看護婦たちに見送られて詰め所を後にして退院したのだった。

 

つづく

 

 


やっと、美津子ちゃんを退院させることが出来ました。

しかし、美津子ちゃんの周りには、危ない娘たちが沢山、これから家での生活がどのようになっていくでしょうか?

さあ、これからはもっと色々と楽しいデンジャラスなことが起きることでしょうねっ。

それでは、みなさんまたねっ。