「ハリウッド版(?)GM」メイキング
「短期決戦スクラッチビルド チャレンジ」
前編
 


この作品は、第15回全日本オラザク選手権(2012年11月発表)での入賞を目指し製作しました。今作のテーマは、「自製デザインのフルスクラッチ」です。最大の問題は締切りまで2ヶ月少々しかないこと。それも【MG級の可動ロボット1体のフルスクラッチ】なんてやった事がありません。ちょっと無茶苦茶です。

その解決方法がMODELA(PCで作ったデータを立体に削り出してくれる機械/CAM切削機)によるモデリングでした。以前にチョロQくらいのミニカー製作に使用しており、操作には習熟しています。部品単位では手作業より手間ヒマがかかるものの、PCシュミレーションで工作前におおよその完成形が見れるので、製作途中で全体バランスの崩れ率が低く、想定外を想定した時間マージンを考えずにギリギリいっぱいの予定がたてられます。
 
装備の少ないMSで原型点数をケチれば、原型製作1ヵ月、組立と塗装1ヵ月で何とか自製MGが可能な気がします。まあ、そんなご大層な思案の元、作ることになったのが「口のついたGM」というわけです(笑)。ずいぶんと長い前置きでしたが、そんな感じで製作スタート。

目指すはオラザク入賞!約2ヶ月の「短期決戦フルスクラッチ チャレンジ」のはじまりです。


 ハリウッド版(?)GMが出来るまで

先にゴール状態を掲載しますが、左の写真は、塗装前の仮組み状態です。ここを目指して製作します。足首以外は製作前に思い描いていたのとほとんど変わらないので、左の写真の様な仕上りを頭の中に空想していたとお考えください。


時間の都合で軽装なMSをモチーフにすることに決定。ここで機体の選定はGMに決まりました。
コンテストで目につくため、「GMのバリエーション機」にとどまらず、「GMに見える範囲で全く新しい機体」にしようと考え、デザインスケッチから開始。タイトルにある「ハリウッド版」を思い描いたと言うより、自分の思うカッコ良さをGMに乗せて行ったら「ハリウッド版」という言葉がしっくりきて、そこにまたアジャストしていった感じです。
 
で、それを紙に書いて、スキャナでPCに取り込みます。これを下絵にしてSHADEで3次元図面にするのですが、今回は手書きのものを一度イラストレーター(PCソフト)で清書してから下絵としました。
 
通常の絵に比べ、後から線幅を変えられたり、頭身を変更させたりが出来るという狙いです。(結局、今回は下絵をいじることはありませんでしたが)
 
なんだか味気ない感じの絵ですが、このあと、SHADEでデータ化するのと同時に要素を足していきます。この絵を忠実に3D化するのではなく、おおよその草案と言った感じです。


SHADEでの製作画面です。上記イラストをテンプレート(下絵)に、線を引いています。実際には上方、側方を併せた4画面で製作します。
(H24年6月下旬のデータです)
左の画像は、先ほどのイラストをなぞって線を引き、とりあえず形にしたものです。ワクをなぞっただけでヒドい有様です(^^;。ここから面に変化を付けて色気を出したり、ざっくり誤魔化している「絵の嘘」に辻褄を合わせたりします。関節などに流用パーツは欠かせませんが、この段階では、流用パーツの寸法などにはあまりこだわらず、とにかくカッコいい形を目指して修正していきます。


3日ほどで、概ね最終形になりました。燃えてたんですね。この文章の製作時に、ファイルの日付が間違ってないか、何度も確認したほどの驚異的な作りこみの早さです(笑)。
※ゴーグルが飛び出ているのは、「この形にヘルメットを削る」という引き算モデリング(擬似集合演算)の為です。

ガンダム式のクツが変更になったり、手甲の肘辺りがフレア形状になったり。
下絵を忠実に再現するのが本道ですが、原画にとらわれず、このように現実空間と相談しながらリファインしていけるのが、自製デザインの面白い部分です。

外装は概ね完成。可動モデルなので、MGの様な内部メカは無くとも、ポリキャップや流用関節を仕込む為の内側データが必要になります。
全身のまま内側データを作ると、PCの動作が重くなりすぎるので、これ以降は、部位ごとに製図を行います。


部位ごとの内部構造を作りはじめると、外装に気に入らない部分があった時の修正が面倒になるので、その前にMODELAで全身立像を作って大まかなバランスを見ます。モニター上と肉眼では、やはりかなりの印象差が出るからです。
 
約6センチ、大昔のガンダム消しゴムくらいの大きさに縮めて、棒立ち状態を出力してみます。今回のGMは、仁王立ちなら前後対称に一歩手前の単純な形状なので、パーツ分け無しで表裏半分づつ削る方法で大まかな形が出せます。
 
本番はワックスを使いますが、プレビュー用には、サンモジュールSSという化学木材(硬度と質感はキメの細かい角砂糖みたいな感じ)をMODELAに置いて、切削開始。
 
上からしか削れないので、背面から削って小一時間。表に返して小一時間、機械を回します。(実際は途中、荒削り用の3ミリ径と仕上げ削り用の1ミリ径のスピンドルを手動交換しています)
 
ふくらはぎと下腕裏の四角い切削用の支えは残り、湾曲した盾の裏面なども削れませんが、全体の雰囲気は充分確認できます。


で、見本の出来上がりがこちら。なかなかよさそうです。これならば、内部構造の製作に入っても大丈夫と判断しました。それにしても「こんなんが家ですぐに出来るってスゴイ時代だなぁ」といつも感心いたします(笑)。

後編へつづく
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