『歌謡(うた)つれづれ』063
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■■■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 2003.05.07 ■ ■■◇■ ◆■■ ---------- ■ 歌謡(うた)つれづれ ■◇ ■■ ■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 0063 ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ +++++ まぐまぐで読者登録された方へ送信しています。++++++ +++++ 等幅フォントによってレイアウトされています。++++++ ────────────────────────────── ────────────────────────────── ■□ 初恋の歌謡史(6) □■ ───────────────────────> 今号の担当 <                                                        小野 恭靖   ─────────────── 前回までに、日本の古代から近代(明治時代)に至る初恋の歌謡・ 和歌について紹介を重ねてきました。そして、いよいよ今回からは 現代の流行歌謡における「初恋」をテーマにして何回かの連載を続 けていきたいと構想していました。今日の流行歌謡には「初恋」と いうタイトルの曲だけでも相当数があります。それに「初恋の〜」 や「〜の初恋」などのタイトルを持つ曲を加えれば、枚挙にいとま がないくらいの、さらに多くの曲目が存在しています。当初はそれ らのうちの代表的な曲の歌詞を比較して、数回にわたって連載する ことを計画していました。 しかしその後、引用における著作権の問題に思い至りました。そし て、最終的には本稿がメールマガジンであるという性格から考えて 、今回一回に限り直接的な引用を避ける書き方で、現代の「初恋」 題歌謡について言及させていただき、この「初恋の歌謡史」の連載 を終結することとしました。筆者の意のあるところをご理解いただ きたいと思います。そして、また別の機会をいただいて現代の初恋 をテーマとした歌謡について語らせていただければ幸いです。 これまでに管見に入った「初恋(はつこい、はつ恋、初戀)」(英 語題「first love」及びカバー曲は除く)というタイトルの現代歌 謡は次のような歌手によって歌われている曲があります。歌手名の 五十音順に掲出してみます。 ◆ ────────────────────────── ◆   a aiko     b 五木ひろし  c イルカ   d 大沢誉志幸  e 角松敏生  f 小島麻由美 g 斉藤由貴   h さだまさし i 猿岩石   j 沢田知可子  k 高橋由美子 l chiaki   m チェッカーズ n CHARA o TUBE   p つのだ☆ひろ q 元ちとせ  r ふきのとう   s 松山千春   t 美空ひばり u 南沙織   v 三好鉄生   w 村下孝蔵  x 最上由紀子   y ユニコーン  z YURI MARI ◆ ────────────────────────── ◆ おそらくこれらの他にも、筆者の管見に入らない曲が存在するもの と思われますが、とりあえずはこれらの曲のみに絞って考察します 。なお、mは楽曲で歌詞がありません。またxについては歌詞を入手 できておりませんので、以下の考察からは除外します。 まず、これらの曲の中で歌われている初恋が現在進行中の想いであ るのか、過去のものであるのかによって分類すると次のようになり ます。アルファベットは上記の曲に付した記号と対応しています。 ◆ ────────────────────────── ◆ ・ 現在進行中の想い……a,c,d,g,i,k,l,n,p,q,y ・ 過去の想い……b,e,f,h,j,o,r,s,t,u,v,w,z ◆ ────────────────────────── ◆ この結果からは、過去の初恋を後年に振り返って歌うというパター ンがやや優勢であることがわかります。そもそも恋歌は現在の感情 をそのまま歌うことが基本と思われます。恋をする喜びも、恋がう まくいかない辛さも、現在進行形の形で表明されるものです。たと えそれが過去に振られたことを嘆く失恋の歌であっても、その辛い 気持ちが現在までも継続していることを訴える歌であるはずです。 ところが、ここに挙げた初恋の歌はそれとは異なり、過去の恋の思 い出を懐かしく穏やかに回顧するといったものが主流です。恋歌の 中でも初恋の歌の持つ特殊性がここに見られるのではないかと考え ます。 また、これらの初恋の歌にはいくつかのキーワードと呼ぶべき単語 が折り込まれています。 以下にキーワードとそれが用いられている曲を上記のアルファベッ ト記号で示しておきます。 ◆ ────────────────────────── ◆ ・ 涙……a,b,d,I,q,r,s,t ・ 胸……a,g,h,k,p,u,w,y,z ・ 夢……b,g,I,n,q,s,u,w ・ 幸せ(幸福)……e,h,p,v ・ 切なさ(−い)……e,k,p,q,s ・ 悲(哀)しみ(−い)……f,h,k,t,v.w ・ 泣く……b,k,n ・ 白い……f,t,u ◆ ────────────────────────── ◆ これらの語以外にも、「昔」「ときめき」「儚い」「懐かしい」「 美しい」などが複数の曲の歌詞中に見られます。 以上の語をもとに初恋を読み解いてみましょう。すなわち、初恋と は「夢」多き時代に「胸」を「ときめかせ」ながら経験する「切な い」恋で、「儚く」も淡く終わってしまいます。そして、その失恋 の「悲しみ」にそっと「涙」を流して「泣く」のです。恋が終わっ たあとも初恋の相手は「懐かしく」、今となっては遠い場所からそ の人の「幸せ」を祈ります。初恋は「昔」の青春の「白い」清潔な 想いとして、少しの苦さとともに美しく輝いているのです。 この国の時が流れ、「初恋」の意味するところが恋愛の最初の段階 から人生最初の恋愛経験へと移行しても、「初恋」は一貫して夢の ような時間の流れの中で、初々しくも切なく始まり、静かに終わっ ていく懐かしい存在であることに変わりはないようです。 「初恋の歌謡史」の連載は今号で終了いたしますが、今後も継続し て考えていきたいテーマですので、どんな些細なことでも結構です から読者の皆様のご意見をお聞かせいただければ幸甚です。 ────────────────────────────── >>>>>>>> 前号配信数 / 250 <<<<<<<<< ────────────────────────────── ▼ ひ と こ と ▼ またまた、たいへんご無沙汰の、「歌謡つれづれ」です。 さて今回は、小野氏の連載、「初恋の歌謡史」のいちおうの締め。 氏は連載をうち切る理由として、「著作権」についての問題を指 摘されたと記しています。たとえば、小野氏のテーマは、現代の 商業歌謡とのつながりを抜きにしてはなかなか語れないと思いま す。 ですが、それが著作権をないがしろにしてよい理由にはなりません 。歌謡の歌詞をあつかう場合、とくに言及が現代の歌謡におよぶ場 合、著作権の問題は避けて通れません。今回の読者の方からの指摘 を受けて、執筆者一同気を引き締めていきたいと考えます。 ご報告が遅れましたが、私が住む京都の地元紙「京都新聞」夕刊の 「ねっと人こだわり派」というコーナーに、この「歌謡つれづれ」 が紹介されました。この記事を見てあらたに登録して下さった読者 の方も居られると思います。こんな地味なマガジンに注目して下さ った記者の方、ならびあらたな読者の方に深く感謝いたします。 記事掲載から、1ヶ月以上がたち、ようやく新しいナンバーが配信 されるというこのペース。忘れたころにやってくるというのが、こ のマガジンです。こんなマガジンでもよろしければ、これからも気 長にお付き合い頂ければ、幸いです。 また、下記の要領で、日本歌謡学会の大会が開かれます。今回は、 創立40周年記念ということで、歌謡そのものをテーマにした、興味 深いシンポジウムが二つ予定されています。関心のある方はどうぞ 聴講なさってください。(編) ──────────────────────────────  ◆◇◆平成15年日本歌謡学会創立40周年記念春季大会◆◇◆ ■5月10日(土)11日(日) ■明治大学駿河台キャンパス(大学会館8階他)    ■第1日 ◆開会の辞 大久間喜一郎(高岡市万葉歴史館館長) ◆公開講演会 13:10-14:10 「歌謡とは何か」     馬場光子(杉野服飾大学教授) ◆第1シンポジウム 14:45-17:45 テーマ「歌謡の表現史 ―その生態とテキストの間―」  司会            居駒永幸(明治大学) 「伝承者によるテキスト化」  狩俣恵一(沖縄国際大学) 「大歌と小歌」        飯島一彦(獨協力大学) 「志多羅歌と現尓也娑婆」   永池健二(関西外国語大学) 「口承と書承の間」      小野恭靖(大阪教育大学) ■第2日 ◆研究発表 9:30-11:30 「『みやこ』へのまなざし」  伊藤高広(滝野川中学校) 「声技の思想」        清水真澄(青山学院大学) 「『松の葉』端唄の考察」   梅澤伸子(国士舘大学) ◆第2シンポジウム 13:00-16:00 テーマ「歌謡の変容        ―『制度』の視点から・表現の制約と自由―」  司会            植木朝子(十文字学園女子大学) 「宮廷及び伊勢神宮という制度」藤原享和(同志社高等学校) 「寺社という制度」      宇津木言行(木更津工業高専) 「『劇場』『遊里』と言う制度」菅野扶美(東横学園女子短期大学 「学校という制度」      長野隆之(國學院大學)  ◆閉会の辞 真鍋昌弘(日本歌謡学会会長・奈良教育大学教授) ────────────────────────────── ▼ ご 注 意 ▼ このメールマガジンは、歌謡研究会のメンバーが交替で執筆してい ます。よって、できる限り学問的な厳密さを前提として記している つもりですが、メールマガジンという媒体の性質上、かなり端折っ て記さざるを得ません。ここでの記述に興味をお持ちになり、さら に深く追求なさりたい場合は、その方面の学術書などに直接当たっ ていただくようお願いいたします。 各号の執筆は、各担当者の責任においてなされます。よって、筆者 のオリジナルな考えが記されていることもありますので、ここから 引用される場合はその旨お記しください。 また、内容についてのお問い合わせは、執筆担当のアドレスにお願 いいたします。アドレスが記されていない場合は、このマガジンに 返信すれば編集係にまず届き、次に執筆担当者に伝えられます。そ れへの返答は逆の経路をたどりますので、ご返事するまでに若干時 間がかかります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■ □------◆ 電子メールマガジン:「歌謡(うた)つれづれ」 □----◆ まぐまぐID:0000054703 □--◆ 発行人:歌謡研究会 (末次 智、編集係) □◆ E-mail:suesato@mbox.kyoto-inet.or.jp ■ Home Page:http://web.kyoto-inet.or.jp/people/suesato/ □◆ 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