『歌謡(うた)つれづれ』061
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■■■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 2003.01.09 ■ ■■◇■ ◆■■ ---------- ■ 歌謡(うた)つれづれ ■◇ ■■ ■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 0061 ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ +++++ まぐまぐで読者登録された方へ送信しています。++++++ +++++ 等幅フォントによってレイアウトされています。++++++ ────────────────────────────── ────────────────────────────── ■□ 中国の歌謡曲…… □■ ───────────────────────> 今号の担当 <                         手塚 恵子   ─────────────── 最近各種のメディアで中国について取り上げることが多くなりまし た。アジアの他の地域の停滞をよそに世界の工場として発展し続け る中国! 私がしばらく中国で暮らすと決めた1986年、多くの人 がまるで私が地の果て世界の果てに行ってしまうかのように、驚い ていたことを思うと、いまさら夢のような時の流れです。 配給切符がなければ主食が売ってもらえなかった時代、我慢強く行 列に並んだあげく服務員に「没有」と怒鳴られた時代に、街に流れ ていたのが「十五的月亮」(歌:石祥、詞:鐵源、曲:徐錫宜)でし た。 ◆ ────────────────────────── ◆  十五夜の月は 故郷を そして 国境を照らす  静かな夜更けに あなたも そして 私も思いを巡らす  あなたは赤子の揺りかごの側に寄り添い   私は祖国の国境線を警邏するあなたは故郷で 田畑を耕し   私は国境で守りにつく  ああ 豊作の喜びはあなたのものであり、そして私の喜びでもあ  る  軍の勲功も ああ 半分が私のものであり 半分があなたのもの  である十五夜の月は 故郷を そして 国境を照らす  静かな夜更けに あなたも そして 私も思いを巡らす  あなたは労を厭わず父母に孝養を尽くし 私は祖国に身を捧げ血  や汗を流すことを厭わない あなたの肩が一家の任を担ってくれ  るので 私は国家の安全を守ることができる   ああ 祖国の繁栄には あなたの そして私の貢献があるのだ  満ち足りた団らんが 私の願いであり あなたの願いでもある  ああ あなたの願いでもある  十五的月亮 照在家郷  照在邊關  寧靜的夜晩 ni也思念 我也思念  ni守在嬰儿的搖籃邊 我巡邏在祖國的邊防線  ni在家郷 耕耘著農田 我在邊疆站崗値班  a 豊收果里有ni的甘甜 也有我的甘甜  軍功章呵 有我的一半 也有ni的一半  十五的月亮 照在家郷 照在邊關  寧靜的夜晩 ni也思念 我也思念  ni孝敬父母任勞任怨 我獻身祖國不惜流血汗  ni肩負著全家的重任 我在保衛國家安全  a 祖國昌盛有ni的貢獻 也有我的貢獻  万家團圓 是我的心愿 也是?的心愿  a 也是ni的心愿 ◆ ────────────────────────── ◆ 「十五的月亮」は、今でも三十歳以上の人ならだれでもうたうこと ができるほど、中国では大変有名な曲で、私が住んでいた頃には、 頻繁にラジオやテレビで流れていました。歌い手は軍服を着ており 、姿勢正しくしっかりと発声します。男女のディエットでうたわれ ることもあります。 (http://market.agr.tottori-u.ac.jp/wanli/wchmusic.htmlで聞く ことができます) 中越戦争が背景にある歌ともいわれ、私が住んでいたのが中越国境 を抱える広西壮族自治区だったせいなのかもしれませんが、この歌 には、みなさんかなり感情移入しているようにみえました。 残念ながら私は、旋律にも歌唱スタイルにもそして歌詞にもなじめ ませんでした。当時は「十五的月亮」と同じようなタイプの曲が普 通であったように思います。宴会芸と割り切ってうたう以外は、私 には楽しみをもたらさないものでした。90年代にはいると状況が 変わりはじめます。 北京語でも声を張り上げないでうたう歌い手が現れたのです。なか でも「97年になったら香港のヤオハンで買い物ができるかしら」 というフレーズで話題を呼んだ「私的1997年」をうたった瀋陽 出身の艾敬に注目が集まりました。ギターを片手にうたう、作り込 んでいないスタイルは、これまでの北京ポップスにはなかったもの でした。 次の歌は艾敬が1995年にリリースした 「艷粉街的故事」(曲詞とも艾敬。http://www.aijing.comで聞くこ とができます)です。 ◆ ────────────────────────── ◆  私が幼かった頃暮らした家は艷粉街にある  そこはいろんな出来事が起こったところ  私には三輪車はなく  遊びといえばケンケン  大人たちは忙しく立ち働き  大好きだったのは五分のあめ玉  私たち三姉妹が父と母の宝物  家には一冊の貯金通帳もなかったけれど  門の前のあの木のことをこれからも覚えているだろう  木の下には石段があったっけ  虹色に輝くライトはなく  煉瓦と土できたものだったけれども  それが私の幼い頃の舞台だった  そこで私は自分を探し当てた  それぞれの時代には それぞれの音楽があるのだろう  「我愛北京天安門」が私の愛唱歌だった  雑貨屋さんの前の大きな黒石も覚えている  昔は獅子があったというけれど  私が見たのはおじいさんとおばあさんだけ  石頭がすり減って滑らかに暖かに光っている  私はそれにもたれ、未来を夢見ていた  ここでもビルディングが増えていくのかしら  私が故郷を離れても  頭上の月は同じように私を照らしてくれるかしら  ある日長髪の若者が  艷粉街を通り抜けていきました  彼のラッパズボンは最新流行のもの  でもそのせいで彼は禍に巻き込まれてしまった  街のうるさいおばさんによって引き回され  ズボンは既に引き裂かれ  尊厳は既にはげ落ち  表情はうつろに  艷粉街はなんということのない普通の街  私の幼い頃の楽しかった生活と   楽しくはなかった生活とを記録している  艷粉街はなんということのない普通の街  幼い頃の出来事が埋まっている  何度も 私はさまよい艷粉街に戻ってくる  友達が私を待っていてくれる  私たちは旗を振り拳を上げて  これをあれを打倒せよと叫んでいた  何もわからないままに  知っていたのは学校で勉強しなくてもいいということだけ  lai lai 艷粉街  そこはいろんな出来事が起こったところ  我的童年家住在艷粉街  那里發生的故事很多  我沒有漂亮的兒童車  我的游戲是跳方格  大人們在忙碌的活著  我最愛五分錢的糖果  我們姐妹三個是pa和媽的歡樂  盡管我家里沒有一個存折  我永遠記得門前的那go樹  還有樹下的台階  那里沒有五光十色的燈光照射  只是磚和土的結合  卻是我童年的舞台  在那里找到了自我  什麼樣的年代 有什麼樣的音樂  我愛北京天安門是我最愛唱的歌  我也記得雜貨鋪門前的大青石  傳説以前有個石獅子  我只看見坐著的老nainai和老爺爺  石頭被磨的又光又滑又暖和  我tang在上面幻想著未來  這里的高樓會不會愈來愈多  如果我背景離郷  頭上的月亮會否依然照耀我  有一天一個長頭發的大哥哥  在艷粉街中走過  他的喇叭ku時髦又特別  他也因此惹上了禍  被街道大媽押送他游街  他的ku子已被撕破  尊嚴已剥落  臉上的表情難以捉摸  艷粉街一條普不普通的街  記録我童年快不快樂的生活  艷粉街一條普不普通的街  童年的往事在那里淹沒  多少次 我彷佛又回到了艷粉街  那里的huo伴在等我  我們高舉著彩旗和拳頭  叫著打倒這個和那個  雖然不明白為什麼  只知道不用上學做功課  le 艷粉街  發生的故事很多很多 ◆ ────────────────────────── ◆ 艾敬は彼女の育った艷粉街をうたいました。艾敬は1969年生ま れ、文革期の昂揚と混乱も皮膚感覚として知っています。貧しくと も楽しかった日々の暮らし、素直にうたえた(多分今でも好きなの だと思う)「我愛北京天安門」、少しでも他と違えば指弾された時 代、深く考えず拳を振り上げた社会を振り返ります。それがどのよ うなものであっても、自分の育った街の歴史として向き合う潔さに は、淡々とうたわれるだけなのに、凄みがあります。うたうごとに 愛おしく思える北京語の歌に出会うことができました。 (歌詞原文の中のローマ字は漢字が出ない箇所です。) ────────────────────────────── >>>>>>>> 前号配信数 / 251 <<<<<<<<< ────────────────────────────── ▼ ひ と こ と ▼ 読者のみなさん、あけましておめでとうございます。今年も、歌謡 つれづれをよろしくお願いいたします。 さて、今年最初に配信するのは、私などはまったく知らない、現代 中国のポピュラーソングについての報告です。人間が生活するとこ ろにはかならず歌謡(うた)があるのですから、中国にも現在流行し ているうたがあっても不思議ではないのてすが、こうして歌詞の内 容を読ませていただくと、やはり政治的な状況が反映していること を知ることができます。 でも「97年になったら香港のヤオハンで買い物ができるかしら」 というフレーズが流行ったというのも、面白いですね。「十五的 月亮」が日本のかつての軍歌のようですが、すると、「艷粉街的 故事」の方は演歌のように思われます。 私の職場にも、中国からの留学生がたくさん在籍していて、仕事柄 その学生達と話す機会が多いのですが、とてもあかぬけていて、携 帯電話やパソコンを使いこなす現代的な彼らのイメージとはあまり 合わないような気もします。もっとも、日本の私学に私費留学でさ せることのできる家庭は、そんなに多くないとのことですが。 今年が、みなさんにとりまして、良い一年でありますように。(編) ────────────────────────────── ▼ ご 注 意 ▼ このメールマガジンは、歌謡研究会のメンバーが交替で執筆してい ます。よって、できる限り学問的な厳密さを前提として記している つもりですが、メールマガジンという媒体の性質上、かなり端折っ て記さざるを得ません。ここでの記述に興味をお持ちになり、さら に深く追求なさりたい場合は、その方面の学術書などに直接当たっ ていただくようお願いいたします。 各号の執筆は、各担当者の責任においてなされます。よって、筆者 のオリジナルな考えが記されていることもありますので、ここから 引用される場合はその旨お記しください。 また、内容についてのお問い合わせは、執筆担当のアドレスにお願 いいたします。アドレスが記されていない場合は、このマガジンに 返信すれば編集係に届き、次に執筆担当者に伝えられます。そ れへの返答は逆の経路をたどりますので、ご返事するまでに若干時 間がかかります ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■ □------◆ 電子メールマガジン:「歌謡(うた)つれづれ」 □----◆ まぐまぐID:0000054703 □--◆ 発行人:歌謡研究会 (末次 智、編集係) □◆ 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