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■■■■■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 2002.12.02 ■
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◆■■ ---------- ■ 歌謡(うた)つれづれ ■◇
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■□ 「掛唄」のことども(1) □■
───────────────────────> 今号の担当 <
宮 崎 隆
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歌はよいもの気持ちもなごみ明日の英気が湧いてくる
歌に女の気持ちを探り男と女の掛け合いおもしろい
石垣島で自慢の声で恋人見つけて帰りたい
歌垣の良さはラブソングにあるよ私も一人見つけたよ
私の気持ちが通じるならば一人ぐらいは来るはずだ
見つけた女性をずっと離さず秋田に連れて帰りたい
(石垣島市民会館にて実演:中川原信一;後藤弘)
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前回お話しした「アジア民俗芸能祭〜いしがき90〜」での「掛唄
」です。舞台の袖で「なんと唄うべぇか」と思案していましたが、
後攻めの後藤さんが仕掛けて面白くなりました。現代の「掛唄」は
、男同士が競技として楽しむ面が強く、“恋の応酬”は少なくなっ
ています。政治批判や社会時評的なものが人気を博します。
その前年(1989年 平成元年)、金沢八幡宮では次のような歌
が掛け合わされました。
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元年という年厳しい年だ我々悩める消費税あり
消費税リクルートに国会揺れるいらえばいらうほど悪ものだ
悪い物だよ消費税は見直しするとはどこまで出来るやら
今の世の中狐と狸だれも頼れないで生きていく
竹下狸で宇野は狐今の海部は何と見る
おれだば今の海部の総理まるきりムジナと思っている
今の政府はだましの獣いつか鉄砲で打ち落とす
選挙のときばり頼むと願う頭ペコペコ下げまわる
(金沢3回戦−5番目 後藤弘;川村与七郎)
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おもしろいでしょう。ムジナは元気で、消費税もそのまま、米も自
由化。“平静”どころか、不況が始まり、見通しの悪い時代の始ま
りでした。これでは、民謡のプロテストソング「掛唄」は、その存
在価値がなくならないでしょう。
新しいようでちゃんと伝統も踏まえているのです。「今の海部は何
と見る」というのがそれで、相手に問いかける詞型は、ずっと昔か
らあります。少しバレ唄かもしれませんが……。
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おまえそんなに中まで入れて中で折れたら何とする
中で折れたら私のものよ蝶よ花よと育てます
「宮田熟穂資料」(昭和初期の掛唄ノート)より
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因みに、現代の秋田の「掛唄」は、一番ずつ勝ち負けが決まるわけ
ではありません。そんなことは、歌い手と聴き手にはわかりきって
いることで、無粋なことはせず、全部終わってから審査員が等級を
発表し、賞品を授与するのです。なお、後藤氏の方が川村氏より上
位(2位)でした。
〔以後しばらく「掛唄」の紹介と随想を掲載します。〕
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>>>>>>>> 前号配信数 / 250 <<<<<<<<<
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▼ ひ と こ と ▼
先月の23日(土曜)に開かれる歌謡研究会の例会では、前号でご紹
介した手塚さんを迎えて、ご本の合評会を行いました。報告者のお
一人である永池健二氏からは、中国の少数民族の歌垣歌謡を理解す
る上で、その本が画期的であることが強調されました。
そして、今回は、日本の歌掛けからのご報告です。宮崎氏の言われ
るように、これらは時事的な内容で、現在の私たちの関心を惹くも
のになっています。「プロテストソング」といいう言い方が当を得
ているように思います。
手塚さんのご報告にも、中国の国家を批判する歌のことが書かれて
いました。文化大革命の時、政府が「歌掛け」を禁止したのは、そ
れが広がることを恐れたからだそうです。日本の場合は、今回取り
上げられた歌のように、その場の憂さ晴らしに近いのかも知れませ
ん。日本と中国のこの違いはどこからくるのでしょうか。これは、
歌謡の力を考える上で、重要なテーマかも知れません。(編)
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