『歌謡(うた)つれづれ』059
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■■■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 2002.12.02 ■ ■■◇■ ◆■■ ---------- ■ 歌謡(うた)つれづれ ■◇ ■■ ■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 0059 ■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ +++++ まぐまぐで読者登録された方へ送信しています。++++++ +++++ 等幅フォントによってレイアウトされています。++++++ ────────────────────────────── ────────────────────────────── ■□ 「掛唄」のことども(1) □■ ───────────────────────> 今号の担当 <                         宮 崎 隆   ─────────────── ◆ ────────────────────────── ◆   歌はよいもの気持ちもなごみ明日の英気が湧いてくる   歌に女の気持ちを探り男と女の掛け合いおもしろい   石垣島で自慢の声で恋人見つけて帰りたい   歌垣の良さはラブソングにあるよ私も一人見つけたよ   私の気持ちが通じるならば一人ぐらいは来るはずだ   見つけた女性をずっと離さず秋田に連れて帰りたい       (石垣島市民会館にて実演:中川原信一;後藤弘) ◆ ────────────────────────── ◆ 前回お話しした「アジア民俗芸能祭〜いしがき90〜」での「掛唄 」です。舞台の袖で「なんと唄うべぇか」と思案していましたが、 後攻めの後藤さんが仕掛けて面白くなりました。現代の「掛唄」は 、男同士が競技として楽しむ面が強く、“恋の応酬”は少なくなっ ています。政治批判や社会時評的なものが人気を博します。 その前年(1989年 平成元年)、金沢八幡宮では次のような歌 が掛け合わされました。 ◆ ────────────────────────── ◆   元年という年厳しい年だ我々悩める消費税あり   消費税リクルートに国会揺れるいらえばいらうほど悪ものだ   悪い物だよ消費税は見直しするとはどこまで出来るやら   今の世の中狐と狸だれも頼れないで生きていく   竹下狸で宇野は狐今の海部は何と見る   おれだば今の海部の総理まるきりムジナと思っている   今の政府はだましの獣いつか鉄砲で打ち落とす   選挙のときばり頼むと願う頭ペコペコ下げまわる        (金沢3回戦−5番目 後藤弘;川村与七郎) ◆ ────────────────────────── ◆ おもしろいでしょう。ムジナは元気で、消費税もそのまま、米も自 由化。“平静”どころか、不況が始まり、見通しの悪い時代の始ま りでした。これでは、民謡のプロテストソング「掛唄」は、その存 在価値がなくならないでしょう。 新しいようでちゃんと伝統も踏まえているのです。「今の海部は何 と見る」というのがそれで、相手に問いかける詞型は、ずっと昔か らあります。少しバレ唄かもしれませんが……。 ◆ ────────────────────────── ◆   おまえそんなに中まで入れて中で折れたら何とする   中で折れたら私のものよ蝶よ花よと育てます       「宮田熟穂資料」(昭和初期の掛唄ノート)より ◆ ────────────────────────── ◆ 因みに、現代の秋田の「掛唄」は、一番ずつ勝ち負けが決まるわけ ではありません。そんなことは、歌い手と聴き手にはわかりきって いることで、無粋なことはせず、全部終わってから審査員が等級を 発表し、賞品を授与するのです。なお、後藤氏の方が川村氏より上 位(2位)でした。      〔以後しばらく「掛唄」の紹介と随想を掲載します。〕 ────────────────────────────── >>>>>>>> 前号配信数 / 250 <<<<<<<<< ────────────────────────────── ▼ ひ と こ と ▼ 先月の23日(土曜)に開かれる歌謡研究会の例会では、前号でご紹 介した手塚さんを迎えて、ご本の合評会を行いました。報告者のお 一人である永池健二氏からは、中国の少数民族の歌垣歌謡を理解す る上で、その本が画期的であることが強調されました。 そして、今回は、日本の歌掛けからのご報告です。宮崎氏の言われ るように、これらは時事的な内容で、現在の私たちの関心を惹くも のになっています。「プロテストソング」といいう言い方が当を得 ているように思います。 手塚さんのご報告にも、中国の国家を批判する歌のことが書かれて いました。文化大革命の時、政府が「歌掛け」を禁止したのは、そ れが広がることを恐れたからだそうです。日本の場合は、今回取り 上げられた歌のように、その場の憂さ晴らしに近いのかも知れませ ん。日本と中国のこの違いはどこからくるのでしょうか。これは、 歌謡の力を考える上で、重要なテーマかも知れません。(編) ────────────────────────────── ▼ ご 注 意 ▼ このメールマガジンは、歌謡研究会のメンバーが交替で執筆してい ます。よって、できる限り学問的な厳密さを前提として記している つもりですが、メールマガジンという媒体の性質上、かなり端折っ て記さざるを得ません。ここでの記述に興味をお持ちになり、さら に深く追求なさりたい場合は、その方面の学術書などに直接当たっ ていただくようお願いいたします。 各号の執筆は、各担当者の責任においてなされます。よって、筆者 のオリジナルな考えが記されていることもありますので、ここから 引用される場合はその旨お記しください。 また、内容についてのお問い合わせは、執筆担当のアドレスにお願 いいたします。アドレスが記されていない場合は、このマガジンに 返信すれば編集係にまず届き、次に執筆担当者に伝えられます。そ れへの返答は逆の経路をたどりますので、ご返事するまでに若干時 間がかかります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■ □------◆ 電子メールマガジン:「歌謡(うた)つれづれ」 □----◆ まぐまぐID:0000054703 □--◆ 発行人:歌謡研究会 (末次 智、編集係) □◆ E-mail:suesato@mbox.kyoto-inet.or.jp ■ Home Page:http://web.kyoto-inet.or.jp/people/suesato/ □◆ 購読の停止、配信先の変更等は、上記Webにて可能です。 □--◆ また、歌謡研究会の例会の案内・これまでの内容、 □----◆ そして、会誌『 歌 謡 ― 研究と資料 ― 』 □------◆ の目次も、上記Webで見ることができます。 ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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