『歌謡(うた)つれづれ』051
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■    歌謡(うた)つれづれ−051 2002/04/01 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■    ★ まぐまぐで読者登録された方へ送信しています。★ ************************************************************ □□■ 歌謡、私のベスト3 ■□□ 手塚 恵子 <tezuka@kyotogakuen.ac.jp> □◆□ ブライアン・イーノ…… □◆□ 編集の末次さんから次の企画は「歌謡、私のベスト3」などはどう でしょうとお話があったときに、気楽におもしろいですね、OKな どと言ってしまい、今更にして焦っています。なぜなら私は日本の 歌謡を知らないのです。古典といわず今時の歌謡曲さえも。関西出 身の30歳以上の婦女子は全て歌って踊れるとされるピンクレディ のヒット曲すら、ワンフレーズしか歌えない。後は推して知るべし ですね。 一応理由づけておくと、自分は社会と音楽の関係を考えているので 、自分の音楽的趣向によって個々の楽曲に先入観をもってはいけな い、アジアの歌に関してはなるだけ素の状態で接したいと(どこか で)思っていることも事実です。でも真の理由はそれではありませ ん。どうやら私は音楽に関してストライクゾーンが極端に狭いので す。 そのような私にとって例外的な存在がブライアン・イーノです。イ ーノのポップ系のアルバムは、同じタイトルをレコードでもCDで も持っていたりもします。私がイーノのアルバムを始めて手にした のは1976年だったように思います。中学生の時でした。抱きしめた いくらい好きになりました。これは今でも変わりません。現在も文 章を書くときにはイーノの曲が欠かせません。 たぶん歌謡研究会のメンバーの方はブライアン・イーノをご存じな いだろうと思うので(ファンだったらうれしいな)、近年、日本で 公開されたものをあげておくと、NHKで放映された「高橋尚子・ 私の42、195キロ」のラストシーンで流れた音楽(アルバム On Lan d)、ナンニ・モレッティ監督「息子の部屋」のラストシーンで流れ た音楽(Before & After Science)などがあります。岡野玲子「陰陽 師」のCDアルバムのCD2はなぜかイーノのアルバムになってい ます。 私が好きなのはポップ系のイーノなので、この三曲の中なら「息子 の部屋」の曲が好きです。でも社会的に評価されているのは、On L andのような非ポップ系です。イーノは90年代になって日本でも耳 にするようになった環境音楽やヒーリング音楽を始めたアーティス トとして知られています。それ以前にも現代音楽の作曲家による環 境音楽はありましたが、イーノがニューヨークのラガーディア空港 のために作成したMusic for Airportsから、日常生活の中に環境音 楽が入ってきたのだと思います。 Music for Airportsは1978年の発売ですから、私がイーノを知って から間もなくのことでした。私の周りでも今までイーノのファンで なかった人までも大騒ぎしていました。ポップ系イーノがお気に入 りの私はこれ以降20年間、複雑な気持ちで過ごすことになります 。世紀の最後になってやっとポップ系イーノが帰ってくるまで、初 期の数枚のアルバムを聞き続けていたのです。 海外の空港で偶然耳にしたMusic for Airportsは感動的でした。Ne roliがかかっている産婦人科なら子供を産んでみたいとも思いまし たが、自宅でそれらを聴こうとは思いませんでした(CDは持って います、アハハ)。それらはそれらを聴くにふさわしい空間がある ように思えたのです。 イーノは、デビットボウイ、トーキングヘッズ、U2など、他のミ ュージシャンのプロデュースもたくさん手がけていて、イーノが手 がけるとトップアーティストになるという定評があるくらい、仕事 をしています。イーノのプロデュースの仕事についてミュージシャ ンが、噂には聞いていたけれど、彼は何もしない。ただ座って曲を 聴いているだけというのは本当だったと語っているのが、いかにも イーノらしい。 私は20年の悲しみ故、積極的なイーノファンではありませんから 、イーノのプロデュース作品までチェックしていませんが、(90 年代後半はソロアルバムすらチェックしていませんでした) それ でも時々車のラジオから、あるいは外出先の有線放送から、これイ ーノ?と思う曲がかかっていて、あわててチェックすると、イーノ のプロデュース作品だったことが何回かありました。 不思議ですね。イーノはその作品をただ座って聴いていただけのは ずなのに、それを偶然耳にした私がどうして解ってしまうのでしょ うか。そこでは何が受け渡されたのでしょうか。わかりません。ウ タの研究者としてはぜんぜんだめじゃんと自分で思います。でもた ぶんそれは音楽の豊かで深いところにつながる大切な問題なのだと 思います。 ************************************************************ ▼ ひ と こ と ▼[前号配信数/249] うーん、ブライアン・イーノですか。名前を聞いたことがあるくら いかなー、と思って、原稿を読んでいると、岡野玲子「陰陽師」の CDアルバムのことが触れられていました。最近は少し冷めていま すが、ご多分にもれず岡野玲子『陰陽師』のコミックスにハマって いた編集子は、友人のレコードから録音したものを持っていたので した。これを探し出して、今聴きながら書いているのですが、これ がなかなか面白い。( http://www.jvcmusic.co.jp/m-serve/onmyo ji/audio/ でも、一部を視聴することができます。身近なところで はWindows95起動音もイーノによるものであるとのことです。)以前 聴いたときよりも面白く感じられるのはなぜでしょう。以前はおそ らくコミックスのイメージにひかれていたのてしょう。イーノのポ ップス系の曲を聴いてみたくなりました。 本人は、今回の原稿について「今回は詩なしです。例外的に許して ください」と、メールで記しています。「社会と音楽の関係」を考 えているという氏の問題意識のなかでは、イーノの音楽は歌謡研究 とも深い関係にあるのです。広い意味での歌謡研究の今後を考えさ せる、今回の内容だと編集子は思います。 これまで、中国の少数民族の歌垣についての興味深いレポートを寄 せて下さっている手塚氏は、私事で恐縮ですが、編集子が大学院時 代に属していた学生による日本の古代文学の研究会に、中国文学専 攻の学生として参加してきました。当時京都の短大に勤めながらフ ェミニズムの騎手としてすでに活躍していた上野千鶴子氏が、学生 だけのそのささやかな勉強会に話しに来たことがあるのも、手塚氏 の直接交渉によるものでした。 つねに刺激的な氏は、いつのまにか中国に渡り、少数民族の教育機 関に入り、そこで生活しながら、数年に渡り歌垣の調査を行なった のでした。その歌垣についての研究成果が、大修館書店から近々刊 行されると、久しぶりに会った氏から聞きました。内容についての 話を十年以上前から聞いている編集子としては、楽しみでなりませ ん。刊行されましたら、このメルマガでも報告させていだきます。 日本文学の学生が集う研究会に手塚氏が参加したのは、これを、日 本を代表する神話学者である松前健先生が指導しておられたからで もありました。またまた、歌謡研究会とはあまり関係のない私事に なりますが、編集子も大学院時代に教えていただいた、その松前先 生が先日亡くなられました。まったく不肖の教え子でしかない編集 子ですが、この場をお借りして、松前先生のご冥福をこころよりお 祈り申し上げます。                  (編) ************************************************************ ▼ ご 注 意 ▼ このメールマガジンは、歌謡研究会のメンバーが交替で執筆してい ます。よって、できる限り学問的な厳密さを前提として記している つもりですが、メールマガジンという媒体の性質上、かなり端折っ て記さざるを得ません。ここでの記述に興味をお持ちになり、さら に深く追求なさりたい場合は、その方面の学術書などに直接当たっ ていただくようお願いいたします。 各号の執筆は、各担当者の責任においてなされます。よって、筆者 のオリジナルな考えが記されていることもありますので、ここから 引用される場合はその旨お記しください。 また、内容についてのお問い合わせは、執筆担当のアドレスにお願 いいたします。アドレスが記されていない場合は、このマガジンに 返信すれば編集係にまず届き、次に執筆担当者に伝えられます。そ れへの返答は逆の経路をたどりますので、ご返事するまでに若干時 間がかかります。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ □電子メールマガジン:「歌謡(うた)つれづれ」 □まぐまぐID: 0000054703 □発行人: 歌謡研究会 □E-Mail: suesato@mbox.kyoto-inet.or.jp (末次 智、編集係) □Home Page: http://web.kyoto-inet.or.jp/people/suesato/ ■ ※購読の中止、配信先の変更は上記Webから可能です。 ■ ※また、歌謡研究会の例会案内・消息、それに研究会の会誌 ■  『 歌 謡 ― 研究と資料 ― 』のバックナンバーの目次も、 ■  ここで見ることができます。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



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