脚注 9
本来,電子の運動は,分子全体に広がっている.エネルギーを詳しく議論するには,分子軌道で議論しなければならないが,分子の形や大まかな性質を考える場合には,混成軌道の考えかたのほうが簡単である.
次の例は,分子の骨格を混成軌道法でくみたて,物質の性質を分子軌道法であつかっている.
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図 r9.2 ブタジエン.ブタジエンを構成する4つの炭素原子は,sp2混成で骨格構造を形成していると考える.残る4つのp軌道を黄色のローブで示している. |
分子の基本骨格は,sp2軌道をもとにした σ 結合で構成されている.残ったp軌道がπ結合を形成し2重結合を作るが,4つのp軌道がならんでいるので,この4つのp軌道に対して分子軌道法を導入している.すなわち,化学的性質に関係するところだけ,分子軌道法を使っている.
古典的方法と現代的方法をごちゃごちゃにつかっているので,混乱の原因になります.私が学生のころは,今のようにはコンピュータが発達してなかったので,仕方のないところもありますが,あやまった理解の原因でした.
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![]() | LUMO | |
![]() | HOMO | |
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図 r9.3 ブタジエンの4つのp軌道がp結合を形成する.4つのp軌道から,4つの軌道が形成される.4つの図のうち,一番下の軌道エネルギーが一番低い.下から2番目の軌道がその次に低く,ここまで電子が満たされているので,最高占有軌道と呼ばれる. |
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