かがくののおと 28


電気化学の応用

  1.  電池

     化学電池におけるエネルギーは,反応のギブスの自由エネルギーである.つまり,ギブスエネルギーは,非膨張仕事の,最大効率を示している.

  2.  燃料電池

     燃料電池による発電は,古くて新しい技術である.もともと昔から知られていた技術であり,一部では,利用されていが,一般の人に知られるようになったのは,最近になってからである.つまり,経済的に実用化できる見込みが出てきたのは,最近である.

     水素と酸素の燃焼反応は,次の化学反応式で示される.

       2H2   +   O2  -->   2H2O

     上の反応式は,水素と酸素を1つの場所で混合し,反応させた場合の反応式である.燃焼反応は,酸化還元反応であるから,酸化反応と還元反応を別々に考えることができる.水素と酸素の反応を,イオンと電子に分け,それぞれ別々の経路で移動させて,反応させる.イオンの通り道は,電解質である.電解質の違いにより,移動するイオンの種類や反応が変わる.

    酸性水溶液の場合 

    酸化    2H2            -->   4H+  +  4e  式 

    還元   O2 + 4H+ + 4e  -->   2H2O        式   

     赤色のH+ は,電解質中を移動してきたイオン.電子は外部の回路を移動する.

     

     図 酸性電解質での燃料電池.水素イオンが移動する.

     

    アルカリ水溶液の場合 

    酸化    2H2       + 4OH  -->   4H2O +  4e  式 

    還元   O2 + 4e + 2H2O  -->   4OH        式   

     赤色のOH は,電解質中を移動してきたイオン.電子は外部の回路を移動する.

     

     図 アルカリ性電解質での燃料電池.水酸イオンが移動する.

     

     酸性電解質でもアルカリ性電解質でも,反応の収支は,下の式になる.

       2H2   +   O2  -->   2H2O

     25℃におけるこの反応の自由エネルギー変化は,ΔG = − 237.2kJ/mol (liq) なので,得られる電圧は,この反応式で水が2分子得られ,4電子反応であるので,

         E = − ΔG / n F

           = 237.2 x1000 x 2 / (4 x 96485) = 1.229 V

     この電圧が,水素酸素燃料電池で得られる,25℃における理論電圧である.また,同時に,25℃における水の理論分解電圧でもある.25℃におけるこの反応のエンタルピー変化は,ΔH = − 285.8kJ/mol (liq) なので,燃料電池の達成できる,最大理論効率は,

        最大理論効率η = ΔG / ΔH = 0.83

     となる.しかし,実際には,電流を流すと,抵抗などの損失が発生するため,効率は50%程度になる.効率を低下させる損失は,熱となるが,この熱を一部利用することで,総合的な効率を改善しようとするのが,コジェネレーションである.コジェネレーションは,電力を必要とする場所で,熱エネルギーも供給する仕組みである.燃料電池は,コジェネレーションに向いている発電方法であるが,別の意味で言えば,コジェネレーションを持ち出さないと,燃料電池の効率を改善できないということもできる.

  3. 実際の燃料電池

     小規模の燃料電池

     アルカリ型燃料電池

     固体電解質型燃料電池

     メタノール直接反応型燃料電池

     

     大規模の燃料電池

     リン酸型燃料電池

     溶融炭酸塩型燃料電池   仲講師は,かつて民間企業にいたころ,この(MCFC)研究に没頭していたのである.

     固体電解質型燃料電池

     

  4.  イオン選択制電極

     pHメータ

     図 pHの測定に用いる,ガラス電極.先端部分のガラス薄膜の内部と外部の電位差を測定する.中心に見えるのは,Ag-AgCl電極で,もう一組内蔵されている.Ag-AgCl電極の左に見えるのは,温度測定用センサ(たぶんサーミスタ).

     

     ネルンストの式(27.7)は,

           式27.7

     この式において,25℃における定数,RTFを代入し,常用対数でかくと,

           式28.*

     pH電極は,ガラス薄膜の両側の濃度差による電位差を測定しているので,n=1を代入し,さらに,内部の水素イオン濃度を一定にすると,

           式28.**

     従って,pHの定義から,

           式28.***

     pHが 1 変化すると,電位は59.1 mV 変化する.pHメータでは,ガラス電極の外側の水素イオン濃度による,混合エントロピーの効果を測定しているのである.ガラス電極は,水素イオンにのみ応答する電極である.特定のイオンにのみ応答する電極,イオン選択性電極も作られている.イオン選択制電極でも,イオンの濃度が1桁変化すると,電位は59.1 mV 変化する.

     

  5.  酵素電極

     グルコースセンサー

     


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Last updated, Nov. 6, 2001.