とぜんぐさ(不定期雑記)

a@007  「週刊金曜日」がおこなったという悲しい行為

  悲しい報道を見た。

  「週刊金曜日」という週刊誌の記者が、曽我ひとみさんに対して、曽我さんの家族との北朝鮮におけるインタビュー記事を見せた、というのだ。

  結果はどうだったか。

  記事は次のように書いていた。
  『…内閣府職員が曽我さん宅を訪れると、曽我さんはうつぶせて泣いていた』
  『政府の支援担当者が訪れた際、曽我さんは「見てよ、こんなことが書いてある」と言って同誌を投げ付け、こたつに突っ伏して泣きじゃくった。同県議が昼前に到着した際も、目はうつろで、タオルで目頭を時々押さえた。』

  曽我さんの悲しみや怒りが伝わってくるようだ。

  『「向こうは会いたい、こっちは会えない。しようがないよね」』
  曽我さんの言葉だそうだが…

  「週刊金曜日」とはどんな雑誌か?
  わたしは読んだことがないので軽々に語ってはいけないのだが、たしか10年くらい前に創刊され、本来のジャーナリズムを追求する雑誌として、わずかに記憶がある。なにやら当時、そのような紹介のされ方をしていたのではなかったかと。
  わたしはいわゆる「知識人」というものにいまひとつ信頼感を持てない(社会主義者が多いという偏見もあるので。いや、別に社会主義が悪いというのではなく、社会主義国家の広告塔として、確たる自分個人の信念を持たずに持っているマネだけしてる人が嫌いであるという、非常に偏った見方が原因なのだが…)ので、この手の雑誌は生理的になじめないのだ。

  しかし今回、HPを覗いてみた。

  『ここにこだわっています』ということで、以下のように書かれていた。長いが引用させていただくことにしよう。

  『新聞・雑誌・テレビ・インターネットなど、メディアが多様化する「情報過多」の時代だからこそ、『週刊金曜日』は情報の取捨選択にこだわります。話題性だけを重視した「売らんかな」の商業主義に左右されることなく、「いま、何を伝えるべきか」「何が重要なのか」を読者とともに考え、こだわり続けていきます。』

  そして主たるテーマとして、「人権」「市民運動」「護憲」「平和」「報道」「環境」「生活」「福祉」「政治・経済」「国際」と、挙げられている。

  「市民運動」というテーマに関しては、『議会制民主主義が十分に機能していない日本では、市民の怒りや要望が国政には届かない。規模・地域は違っても、「地球市民」として行動するすべての人たちを応援する』。
  「報道」というテーマに関しては、『「書いたもの勝ち」の無責任主義を謳歌する、いわゆる大マスコミ。メディア批判とプライバシー擁護を大きな柱に据え、報道姿勢を問う』。

  それぞれに立派な姿勢が掲げられている。

  ううむ、素晴らしい雑誌ではないか。

  編集委員にもそうそうたる顔ぶれが名を連ねている。
  「佐高信」「椎名誠」「落合恵子」「筑紫哲也」「本多勝一」。
  いくつかのコラムも読ませていただいたが、共感できるものも数多い(できないのもあるが、議論しても勝てっこない面々だ)。

  どうして今回のようなことになってしまったのだろうか。

  記者個人の資質と、ジャーナリストとしての特権意識(いみじくも「週刊金曜日」自身が創刊時に第四権力としてのジャーナリズムの役割に言及している)に問題はなかったか?
  軍国時代に日本がアジアで行った行為ゆえに、日本はアジアにおいて今日に至ってもなお、強気に出る資格はない、などという考え方は根底にないか?

  隣人が間違ったことをしていると確信できるなら、殴られるとわかっていても諫めるのは、勇気ではないだろうか。
  「まあまあ」と言いながら、相手のご機嫌を最優先にノラリクラリとかわしておいて、家の中では内弁慶。そんな姿勢がどこかにないだろうか(わたし自身も戒められるべきだが)。

  おやおや、「週刊金曜日」を批判したいのか、擁護したいのか、いったいどっちなんだ。

  間違いなく言えるのは、今回、「週刊金曜日」は人の心の中に土足で踏み込んだ、ということだと思う。
  少し考えればわかることだと思うのだ。先だって行われたキム・ヘギョンさんに対するインタビュー報道で学ぶことはなかったのだろうか。
  すべてをシャットアウトと言っているのではない。報道が政治色を持たずに、それでも国民が用いうる正しい武器や盾となるためには、「一個人の感情」を忘れぬ思いやりが必要なのだと思うのだ。加えて大局から見た国益もである。

  とてもまとまりのない文章だが、今日の報道を読んで、とても悲しくなったので勢いに任せて本気で書いた。わたしはどちらかというと、無責任に言いたい放題が好きなのだが… でも、今回のはあまりに悲しかったので…

(H14.11.15 記)





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