No33



秘すれば花・・・瀬戸内寂聴著「
秘花」
 世阿弥晩年の輝き〜老いも愉し




世阿弥の晩年を描いた長編小説。
72歳で佐渡に配流になり、その後10年ほどを生きた能の大成者。今年85歳になった瀬戸内さんが構想を得たのが4年前。同年代の世阿弥を通して
「老い」をみつめ、 「老い」と闘う世阿弥晩年の
輝きを綴る。

老いてなお生きようとすれば、その生を支え続ける目標がいる。

世阿弥が生き続けられたのは、彼に<能>があったからである。

作家の瀬戸内さんにも<小説>がある。
それが人間を支える。






「秘花」は・・・
「秘すれば花なり秘せずば花なるべからず」
 世阿弥の「風姿花伝」の有名な一節。

観客が予想もしない演出こそが驚きと感動を生む。しかしそれを悟られると演出の効果は失われてしまう。)という意味。

目もかすみ耳も聞こえなくなった世阿弥は、座禅と瞑想にふけり、夜は早くにやすみ、朝は日の出と共に起きる規則正しい生活を送り、自然に健康を守っている。

小説の中で「花」とは「色気だ。惚れさせる魅力だ。」「幽玄」とは、「洗練された心と、品のある色気」と語られる。

また「長く生きた者には、生きた長さに見合う想い出が頭の中につまっている。それをなぞるだけでも退屈などする閑もない」と

そして79歳、ひとりで謡い、舞い、お稽古と自称するものを一日たりともおろそかにせず、
命に終わりあり
能には果てあるべからず
とつぶやき
「新しい能のの題名「秘花」と力強く書かれ、その日の午後、倒れられた・・・。

<芸術家の老い>をテーマに芸術論の言葉にはめ込められた、世阿弥の実人生の体験に、これからの生き方を学ぶことができた。

                 2007 7/15 管理人

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