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<秘すれば花・・・瀬戸内寂聴著「秘花」
世阿弥晩年の輝き〜老いも愉し

世阿弥の晩年を描いた長編小説。 72歳で佐渡に配流になり、その後10年ほどを生きた能の大成者。今年85歳になった瀬戸内さんが構想を得たのが4年前。同年代の世阿弥を通して
「老い」をみつめ、 「老い」と闘う世阿弥晩年の
輝きを綴る。
老いてなお生きようとすれば、その生を支え続ける目標がいる。
世阿弥が生き続けられたのは、彼に<能>があったからである。
作家の瀬戸内さんにも<小説>がある。
それが人間を支える。
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「秘花」は・・・
「秘すれば花なり秘せずば花なるべからず」
世阿弥の「風姿花伝」の有名な一節。
観客が予想もしない演出こそが驚きと感動を生む。しかしそれを悟られると演出の効果は失われてしまう。)という意味。
目もかすみ耳も聞こえなくなった世阿弥は、座禅と瞑想にふけり、夜は早くにやすみ、朝は日の出と共に起きる規則正しい生活を送り、自然に健康を守っている。
小説の中で「花」とは「色気だ。惚れさせる魅力だ。」「幽玄」とは、「洗練された心と、品のある色気」と語られる。
また「長く生きた者には、生きた長さに見合う想い出が頭の中につまっている。それをなぞるだけでも退屈などする閑もない」と。
そして79歳、ひとりで謡い、舞い、お稽古と自称するものを一日たりともおろそかにせず、
命に終わりあり
能には果てあるべからずとつぶやき
「新しい能のの題名「秘花」と力強く書かれ、その日の午後、倒れられた・・・。
<芸術家の老い>をテーマに芸術論の言葉にはめ込められた、世阿弥の実人生の体験に、これからの生き方を学ぶことができた。
2007 7/15 管理人 |
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