No24

   <挑戦、それは私の義務>

     〜 2006年11月22日 朝日新聞記事より

 古楽界の重鎮、指揮者のニコラウス・アーノンクールが今月、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と、自ら創設した古楽集団「ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス」をそれぞれ率いて来日した。日本で舞台に立つのは26年ぶり。その間、音楽界での評価も「異端児」から「大家」へと様変わりした。

 「一番よくないのは、仕事がルーチンに陥ること。作品には、常に新しい態度で臨みたい」

 まもなく77歳。「賞味期限の近い牛乳みたいなもの」とおどけてみせるが、ここ数年の活躍はめざましい。01年と03年にはウィーン・フィルのニューイヤーコンサートに出演。モーツァルトイヤーに沸いた今年のザルツブルク音楽祭では、オペラに演奏会にと引っ張りだこだった。


古楽に人生を託そうと決めたのは「一筋縄ではいかぬ生徒で、常に先生の言うことを疑っていた」大学時代。チェロの勉強をしていたが「コレッリやパーセルなどのバロック音楽が、『簡単』かつ『退屈』なものとして扱われていたことに疑問を持った。音楽ではなく、演奏が『退屈』なのではないか、と」。

バロック時代の楽譜は、奏でられる音のすべてを今ほど厳密に指示していない。「バッハもマーラーも楽譜の見た目は同じようでも、音符の指示する内容がまったく違う。同じように演奏したら、バッハの方が退屈にきこえて当たり前」

「楽譜を読むのは、絵画に向き合うのに似ている。同じ絵を数人が見たら、それぞれが違う想像力をかきたてられるでしょう。その数人が議論し、その想像力を束ね、ひとつの作品をつくってゆく。私たちがやってきたのはそういう作業

音楽を実現するのは、あくまで演奏家の想像力。その演奏は今日の聴衆のためにある」。

作品から常に何かを『再発見』しようとする姿勢が大切」とも語る。

 「私にとって、挑戦はやりたくてやるものじゃない。むしろ義務なのです」


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