No2

<書籍の紹介> 

往復書簡
 いのちの対話 「露の身ながら」

                     (集英社)
       多田富雄  免疫学者
      柳澤桂子  遺伝学者


この本は、共に素晴らしい業績ある学者のお二人が、現在も病と闘いながら、それぞれの分野で
手紙のやり取りを通し、<生きていくこと>について語られています。

著者の多田富雄氏は東大の名誉教授でもあり、文化功労者で、国際的な学者として活躍の中、2001
年5月、脳梗塞で倒れ声を失い右半身付随となり、
リハビリを行いながら、パソコンを左手で著作活動を続ける。また能楽にも造詣深く新作能の作者としても知られている。

柳澤桂子氏は原因不明の難病で研究生活を断念、激痛と闘いながらも、病床からサイエンス・ライターとして啓蒙書を書き続け、NHKTVにドキュメントでも取り上げられた、<般若心経・生きて死ぬ智慧>が話題となり多くの感動を与えている。
周期性嘔吐症という病名が解明され、治療中。



お二人とも音楽や芸術にも大変詳しく、科学の積み重ねと比較されるところは、興味深いものがありました。
「芸術は新しい次元の開拓、創造がなければならないでしょう。質的に違うものへのジャンプがなければならないという点では、科学と同じなのではないかと思います。」
西洋音楽でもバッハがなければ、ハイドンやベートーヴェンは生まれなかったと思います。」

また、オペラファンでもありメトロポリタンや、ミラノ・スカラ座でのワーグナー、イタリアオペラの感動の不思議は、音楽の持つ特権と書かれています。
さらに、バロックのオペラ〜モンテベルディーなど、
大好きと、幅広い知識と興味の深さに、感嘆し、人間的な魅力を感じずにはいられません

 不自由をおして、展覧会や劇場へ出かけお能はもちろん、バレエやコンサートを楽しまれる多田氏、柳澤さんは<車椅子に乗る時はおしゃれをして>と
<人間としての喜びを失わないように> 
努力されています。

右手が一切使えず、不自由でお気の毒・・・と考えてしまう私達のほうが、よっぽど何かにこだわり、
不自由に思い込んだ生活をしているのでは、と恥ずかしさのようなものを感じました。 

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