|
2005年 11月10日
<マルタ・アルゲリッチ:ソロ活動復活を“宣言”
「生きている限り進化」−−来日会見>
アルゲリッチは世界の音楽ファンからソロ・リサイタルを熱望されながら、ここ10年ほど室内楽などのアンサンブルに活動の中心を置き、ソロ活動から離れている。かつてその理由として「一人で舞台に立つのが恥ずかしい」などと言っていたが、今回、自らの夢を聞かれ、「またソロをしようかと思っている。自分の演奏活動のなかにソロがないのはやはりしっくりしないと思い始めた」と世界の音楽ファンを狂喜させるような言葉が飛び出した。
自分の演奏については「私は即興演奏はしないけれども、自分が弾いているときにいつも即興的なものを感じている。もちろん、楽譜に基づいてはいるが、音楽に反応して自分が新しい音楽を生み出す。それは自分にとっては即興と言える。だから、練習しているときには、フレーズのことなどいろいろ考えているけれども、演奏している最中は、徹底して音楽を聴いている。なにか音楽に演奏させられている、という感じ。ときには全く関係のないことを頭のなかに思い浮かべていたりもする」と語った。まさに、あの彼女の自由自在な音楽の躍動を解明してみせてくれる言葉だ。
|
|
「いつも自分の演奏を友人や若い演奏家に聴いてもらい、自分が進化しているかどうか確かめている。自分自身では、時とともに失っている部分もあるし、進化しているところもあると思う。自分が今後どういうふうに進むのか難しい所に来ている。もう若くはないし、しかしとても年をとったというわけでもない。私は60歳を越して、日本では大人になった(還暦)と言うらしいが、自分にはなにかをやりとげたという気持ちはさらさらない。すべきこと、学ぶべきことが山のようにある。生きている限り、進化していきたい」
アルゲリッチといえば、ショパン国際コンクールでの優勝、同コンクールでの審査員としての歯にきぬを着せない発言など、同コンクールと切っても切れない関係にある。会見時はまさにワルシャワでのコンクールの本選直前であったが、コンクールに対する冷静な言葉が返ってきた。
「人々はショパン・コンクールのなかで新しいショパン像・解釈が生まれることを期待するが、(開催の)5年ごとに全く新しいものが生まれるわけがないし、こういうコンクールから偉大なアーティストが生まれるとも思わない。コンクールは音楽づくりに直結する場所ではない。むしろコンクールの外で新しい解釈は生まれるのではないだろうか」
〜11/9毎日東京夕刊 記事より〜
|
|