ギターの弦高調整の仕方 手順編

新型コロナウィルス感染拡大予防対策で自主休業していた間に「ご質問箱」と云うページを設置して皆様から頂いたご質問のお答えさせて頂いておりましたが、これを項目別に整理してコラム記事にさせて頂きました
 
Q:Fが押さえられない、綺麗な音が鳴らくて、才能がないと思って辞めてしまう人が沢山いるようですが、ギターを調整してもらうことで弾き易くなるのでしょうか?

A:初心者「あるある」ですね
初心者で押弦する力やコツをまだ得ていないと云う事もあるでしょうが、以下の3点を調整する事で各段に弾き易くなり挫折しないで済むかも知れません
その3点は以下の通り
@ネックの反り
ネックが順反っていると弦高が高くなり押さえ辛くなりますのでまずネックが反っていないか確認します
反りが確認出来たらトラスロッドで調整すれば弦高は下がり押さえ易くなります

Aナット弦溝の高さ
多くの既製品、特に大量生産物のナットの弦溝は高めに切られています
これは製造時にナットの弦溝をヤスリで切る時にうっかり削り過ぎて低くしてしまうと開放弦でビビりが出てしまいそのまま出荷すると不良品になってしまうからです
「うっかり」が防げるマージンを稼ぐとナットの弦溝は高くなってします
ナットの弦溝が高くて押さえ辛いと云うだけでは明確な不良案件とは言い辛いですし、購入された方は「自分が下手だから押さえられないんだ」と思ってしまう事が多いと思います
また一部のメーカーでは予め弦溝が加工された樹脂製のナットを取り付け、弦溝の微調整をせずにそのまま出荷すると云う所もあります
この場合もナット取り付け部分の製造誤差から弦溝が低くなってしまわない様にマージンを取ってナットを取り付けられます
また、ナットは消耗品ですから使っているうちに摩耗して低くなりいずれ開放弦でビビりが出てナットの交換が必要になりますが、「新品なので寿命が短すぎない程度に弦溝を高くしている」と云った言い分もあるかも知れません
これは大いに一理ありますが、そう云った言い分も通じないくらい弦溝が高い物もあります
ちなみに「弦溝の高さ」を勘違いされておられる方がいらっしゃいますのでイラストで説明いたします

この様に弦がナット表面から飛び出している物を弦溝が高いとか、逆に深く入り込んでいる物を弦溝が低いと言われる方がいらっしゃいますが、これはナット表面の高さに対する高低であって本当の「弦溝の高さ」とはフレットに対する弦溝の高さの事です
弦溝の高さは以下方法で測ります

この様に3フレットを押さえた時の1フレット頂点と弦の距離が弦溝の高さを表します
この距離が遠い程、弦溝が高くなり押さえ難くなります
逆にこの距離が近い程、弦溝は低くなり押さえ易くなりますが、弦とフレットが接触してしまうと弦溝が低過ぎて開放弦を鳴らした時に1フレットに当たりビビってしまいます
通常は上のイラストの様に3フレットを押さえてから1フレットの上で弦をチョンチョン突いて弦がどれくらい動くかで微妙な高さをチェックしますが、一般の方では分かり難いと思いますので簡単なチェック方法をご紹介します
基本的には上のイラストのように3フレットを押さえると云う所は同じなのですが、この状態で1フレットと弦の間にコピー用紙(0.1ミリ厚)を差し込んでみて下さい

この様に。
これを1弦から6弦まで全弦でチェックしてみて下さい
この様にして、コピー用紙が1フレットと弦の間に抵抗無く入ってコピー用紙から手を離すとコピー用紙は挟まったままになれば初心者にとってはベストな弦溝の高さです
コピー用紙が入らなければ弦溝は低過ぎる可能性があります
ただ、この状態でも弾いていてビビりを感じなければそのまま使用しても大丈夫です
弦溝が低過ぎるくらいなのにビビらないのであればそれは極限の低さの弦溝高で、押さえ易さと云う点では極限に押さえ易い状態と言えます。が、そろそろナットの寿命が途絶える時期ですのでナット交換の為に貯金を始めた方が良いでしょう
ちなみに当店のナット交換工賃は工賃自体は5,000円、ナット素材代金が素材により違い400〜1,200円です。貯金するほどでもないですね(^^)
で、もし差し込んだコピー用紙がパタパタと上下に動くような場合は1フレットと弦の距離が遠いと云う事になります
あなたがFコードが押さえられなくて挫折しそうになっていたならこの様にしてチェックしてみて下さい
もし差し込んだコピー用紙がパタパタと動くようでしたらそのギターを弾き易く調整出来る可能性です
ナットの弦溝を調整しただけで楽々Fコードが押さえられるようになるかも知れません!
またまたちなみに当店でのナット溝調整工賃は1か所辺り500円ですので全部の弦でコピー用紙がパタパタしたのなら6か所で3,000円になります

「コピー用紙が挟まったまま抜けない」様な状態が“初心者にとってベストな弦溝の高さ”と書きましたがある程度弾けるようになって来て自分の好みが分かるようになって来ると少数派ですが高い方が心地良いと感じる方もいらっしゃいますのでその様に表現致しました
低い弦高が好きな方は初心者で無くてもナットの弦溝は低い方が弾き易い思います
リペアマンをやっていて感じるのですがセッティングの好みも人それぞれなんです
結構違うもんなんですよ
「ナットの弦溝が高いとピッチが悪くなりますよ」などと云ったデメリットはアドバイスさせて頂きますが、高くするか低くするかはプレイヤーの方ご本人の意思で決めてもらいます
リペアマンはそう云った演奏者の好みを尊重すべきだと思います

まだまだ続きますよ!
Bサドルの高さ調整
で、ネックの反り調整、ナットの弦溝調整、とやれば少なくともローポジションに関しては弾き易くるでしょう
ローは押さえ易くなったけどミドル〜ハイポジションになるとまだ押さえ辛いとなった時に初めてブリッジ側、サドルの高さ調整となります
この順序は大切で、弦高が高いと感じるとまずサドルの高さを調整しがちですが、サドルの高さ調整をする前に必ずネックの反りのチェックをして下さい。ネックが順反ったままサドルを下げて弦高調整するとミドル〜ハイポジションのどこかでビビりが出てくる可能性が大きくなります
ですので弦高を下げたいならまずネックの反りチェックして順反っていればトラスロッドで調整して下さい。ネックが順反っていると弦高が高くなりますので、順反りを修正するだけで弦高は下がります
「弦高調整はまずネックの状態ありき」です!
それでも弦高が高く感じるなら今度はナットの弦溝をチェックです
ナットの弦溝が高いままサドルを下げて弦高調整すると押弦した時に弦高が低くなり過ぎてしまいます

上図の太い黒線は指板、緑の線は開放での弦のラインの状態で、赤線は押弦した状態の弦のライン
@の図が元の状態で、Aはやりがちなサドルだけ下げて弦高を下げようとしたパターン、Bはサドルはそのままでナットの弦溝を低くしたパターン
赤矢印の部分が12フレットとして、元の弦高が例えばここで2.0ミリだったとして、これを1.5ミリにしたいと思ってナットはそのままでサドルだけ下げて12フレット上の弦高を1.5ミリにしたのがAの図です
Aのパターンの場合、開放状態での12フレット上の弦高はBと同じなのに、押弦時ではローポジションは元の弦高とほぼ変わらぬ高さなのにハイポジションでは異常に低くなり弦が指板に接近しているのが分かると思います
弦が指板上のフレットに近付き過ぎると弦が振動して振幅が発生した時にフレットに接触しビビりになります
一方Bの方はハイポジションでの弦と指板の距離はAと比べると十分余裕がありますので更にサドルを下げる事が出来、結果ビビりが出ない範囲でAの時よりも弦高を下げる事が出来るようになります
この様にナットの弦溝の高さは弦高を決める上で非常に重要な要素なんです

あと、初心者にありがちなのは肩に力が入ってしまって肝心な左手(右利きの人の場合ね)の手のひらに力が行かなくなってしまっているパターンです
その人が持っている力が10として肩に力が入ってそこで5の力が使われると手のひらの力は5以下しか入って居ない事になります
当店にご来店頂く初心者の方にもそう云った方が多いのですが、ギターの調整をさせて頂いた上で、「肩や腕の力を抜くように心がけて」とアドバイスもさせて頂きます
ギターを弾く時の姿勢も重要で、女性の体が小さな方などはギターを抱えた時にギターが大きすぎてネックが体から遠くなり、右ひじがボディの一番幅広いお尻の所に掛かると弦に手が届きに難くなりピッキングもし難くなります
そう云った時は女性だからと恥ずかしがらず足を広げてギターを抱えるようにとアドバイスします
そうするとネックが体に近くなりますし、右ひじはボディの「くびれ」部に近くなってボディの幅が狭い所で右腕をストロークさせる事が出来ますので演奏が楽になります
店頭でお客様と対面しているとそう云ったどこか無理があると言うか楽に弾けていない何かに気が付く事が良くあります
ベテランの方にそう云う事をアドバイスするのは失礼かと思いますので思っても口には出しませんが、初心者の方にはそう言いう機会が良くあります
次回は今回書き切れなかった「DIYトラスロッド調整」について書かせて頂きます
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