テンション?実験編

前回は弦のテンション(張力)について書かせて頂きました
今回はそれについて実験をし実証していきたいと思います
物凄く長い内容になっておりますので覚悟のうえご閲覧下さい(^_^;)

まずは前回のおさらいから



ダダリオの弦パッケージには張力の資料が書いてあります
ここで書かれている張力についてイメージ化したのが上の図です
3弦を例にしてご説明します
(3弦でなくても良いんですが後で出てくる実験を3弦でやったので…)
例えば壁に0.016インチの太さの弦を引っ掛け、反対側をギュイ~ンと引っ張ります
で、この引っ張る力を6.66Kgで維持したまま、弦に支えA,Bを648ミリの距離を開けて設置し、このA,B間をピンッと弾くと196Hzの周波数で振動する、つまりギターで言うと3弦のG(ソ)の音程になります
と云う事がパッケージに書かれている訳です

ダダリオのパッケージにはフェンダーのストラトキャスターやテレキャスターのスケールである648ミリの場合の張力しか書かれていませんが、上図(A)をナット、(B)をサドルと考え、引っ張る力を6.66Kgに維持したままA,B間の距離を縮めるとどうなるでしょう?
スライドバーでナット付近から1フレット側に向けてぎゅ~んとスライドさせると音程が上がるのをイメージしてもらうと分かり易いと思いますが弦を引っ張る力を維持したままナットとサドルの距離を縮めると音程が上がります
例えば648ミリスケールのストラトキャスターではナットから24ミリ ブリッジ寄りの位置が
レスポールなどに採用されている624ミリスケールのナット位置にあたりますが、この位置にスライドバーを当ててピッキングすると半音近く(約80セント)音程が上がります
つまり、同じ太さの弦をレスポールなど624ミリスケールのギターに張り、648ミリスケールと同じ張力で引っ張ると音程は高くなってしまいますのでペグを緩めて(張力を緩めて)音程を合わる事になりますから、ストラトキャスターと同じ太さの弦をレスポールに張ると同一音程ではテンション(張力)は弱くなると云う事です
これがスケールが短くなるとテンション(張力)が緩くなる仕組みです
例えばあなたがストラトキャスターとレスポールを持っていてどちらも同じテンション(張力)感にしたい場合、 レスポールには少し太い弦を張ってやる必要があると云う事です

レスポールなどギブソン系のギターの多くにはテールピースと云う弦を止める部品があり、ブリッジとは別に高さを設定できるようになっています
今回はこのテールピースの高さを変えて張力は変わるのか?実験したいと思います
まず、前回の記事にも出て来ましたが進入角についてもう一度説明させて頂きます


前回の記事ではベースを例にブリッジプレートと弦の間の角度をサドル進入角と図で説明いたしましたが今回は具体的な数値を出す必要がありますのでナット~サドル間の弦とサドルからテールピース間の弦の角度として説明させて頂きます

画像にあるようにナット~サドル間の弦に大してテールピース~サドル間の弦の角度が大きい場合「進入角が深い(きつい)」、角度が小さい場合「進入角が浅い(緩い)」と表現します
店頭でお客様にご説明する時はついついサドル進入角が緩いとかきついとか言ってしまうのですが記事上は張力の緩さやきつさと混同されないように「浅い」「深い」と云う表現に統一させて頂きます
前回の記事にも書きましたがこの「進入角」と云う言葉は私が便宜上勝手に使っている言葉ですので他所では通じないかも知れません
他のリペアショップや楽器店で「サドル進入角が…」などと発言すると「何それ??」言われる可能性が大ですので「ここの角度が…」と指差してもらった方が良いでしょう

では実験に入ります
検体は私物のトーカイレスポール、安物ですがゴリゴリのロックな音を出してくれるお気に入りのヤツです(^.^)
テストするのは3弦、使用弦は0.016インチです
普段は0.017を使っていますが弦を酷使するテストですので予備が沢山あった0.016弦で実験しました
サドルの進入角はテールピースベタ付けの時は約20度
テールピースを浮かせた時は進入角0度ですとサドル上で弦が暴れてチューナーが正確な音程を検知してくれませんのでサドルに弦が落ち着くギリギリの約5度に統一してテストします

はじめの実験ではギターを机に固定し、テールピースから弦のボールエンドを引っ張り出して圧力センサー式のデジタル測りに引っ掛け何Kgの力で引っ張られるか計測します
ヘッド側が写っていませんが、ヘッド側は何も細工をしていない状態で普通にヘッドに付いているペグでチューニングしましたのでナット進入角はヘッド角度とほぼ同じの15度での計測になります



デジタル測りの持ち手ベルトは机に固定した角材に引っ掛けています
このデジタル測り、実験前に精度を試したところ±20g程度の誤差が有りましたがこの実験には十分でしょう
安物の割には使えるヤツだと思います
チューナーは正確にチューニングされている証明として一緒に写し込みます
このチューナーはメーターの上にある3個のLEDの真ん中グリーンのLEDが点灯したら規定音程±3セントになった事を指しますのでグリーンが点灯した時点での測りの数値を計測します

計測手順は測りのフックに力が掛からないようフックにたわみが出来るまで弦を緩めてから測りの電源を入れキャリブレートを取ります
一旦フックを手で引っ張ってから再度たわませてメモリがゼロになるのを確認します
この時、ゼロにならないとキャリブレートが取れていないのでやり直します
キャリブレートが取れていることが確認出来たら急いでチューニングします
このデジタル測りは2分でオートオフし もたもたしてると撮影出来ずに電源が切れてしまうので大忙しです(^_^;)
チューナーのグリーンが点灯した瞬間を撮影したら再度弦を緩めてキャリブレートを取り直しからやり直しを繰り返します
今回行なった実験の中でデジタル測りを使用した実験は全てこれと同じ手順で行ないました
一応これを5回繰り返し平均値を抽出するつもりでいましたがどの実験も撮影に失敗してばっかりで実際のところはもっとやりました
とにかく3枚撮影できたらその中で真ん中の数値が出た画像を抽出する事にしました
やるたびにメチャメチャ誤差が出たらどうしようと思いましたが、最初のデジタル測りの誤差内で数値が出ました

で、実験結果は↓



チューナーの拡大部分ですがこれ「36」ではありませんよ!「3G」です
「keyC 3G」とキーCで13音階の3オクターブ目のGの音程(ギターのレギュラーチューニング3弦の音程)が検出された事を表しています
で、結果ですが
サドル進入角が深い時・・・5.630kg
サドル進入角が浅い時・・・5.935kg

テンションが緩くなると言われるテールピースを浮かせたセッティング(サドル進入角が浅い)の方が 約300gほど張力が強いと云う結果になりました
これは測りの誤差からはかなりかけ離れており正確に張力が違っている事を表しています

なぜこの様に張力の差が出るのか?
すでにお気付きの方もいらっしゃると思いますがサドル進入角が深いとサドルを押さえ付ける力が大きくなりますが、この押さえ付ける力=圧力エネルギーはどこから来ているのかと言えばこれは当たり前ですが弦の張力しかありません
つまり弦の張力をサドルを押さえ付ける力とテールピースに掛かる力(今回の実験の場合は弦のボールエンド)に分散されるため力が分解されてテールピースに掛かる力に差が出るのです
サドルに掛かる力が強ければそれだけテールピースに掛かる力は弱くなり
サドルに掛かる力が
弱ければそれだけテールピースに掛かる力は強くなります

これも実験して計測してみます
装置はこんな感じ↓



まさに有り合せの妙技!
修理中のギターを立てておく自作のスタンドにギターを固定し、デジタル測りの持ち手ベルトを荷造りベルトに通してこれをスタンドのネック枕に引っ掛けます



デジタル測りのフックはこの様に3弦をサドルからほんの少しだけ浮かせる様に掛けています
こうやってチューニングをした時にサドルに何kgの力が掛かるか実験する訳ですが、この様にしてテスト出来るのはフック部分が伸びない圧力センサー式の測りならではで、バネ式測りではフック部分が伸びてしまいますので計測は相当困難な作業になってしまいますね
計測手順は始めの実験と同じ様にチューニングして計測の繰り返しです
計測結果は↓



サドル進入角が深い方はある程度引っ張る力が働いているので測りは正面を向いていてくれたのですが進入角が浅い方は少ししか引っ張られないせいか図り直すたびに画面があっち向いたりこっち向いたりしてそのたびにカメラを持って右往左往(ーー;)
誤差も進入角が深い方はデジタル測りの誤差内の計測値でしたが、進入角が浅い方は600g~700gの間を行ったり来たり、定まってくれません
恐らく引っ張る力が少ないので何らかのちょっとした要素で計測値に差が出てしまうのでは無いかと思われます
で、計測結果ですが
進入角が深い時は2.225kg
進入角が浅い時は0.645kg

推測通り双方に大きな違いが出ましたがその差は1.58kg
ん?テールピースに掛かる力の差が0.3kgでサドルに掛かる力の差が1.58kgじゃ計算が合わないじゃないか??
そう思われる方もいらっしゃるかも知れませんが実はテールピースに掛かる力とサドルに掛かる力を足したらナット~サドル間の張力になると言うような簡単なモノでは無いんです
これは足し算や引き算では計算出来ない所謂「三角関数」で計算するようになります
物理の授業で習った「サインコサインタンジェント」ってヤツですね
聞いただけでアレルギーを起こしてしまいそうになるほど学生時代は嫌な科目でしたが、実はギターも物理現象の塊でギターに起こる事象を物理で解き明かせる事が出来、ギターの構造を考える上で物理は必ず必要になります
(職人の魂でどうにかなるものではない!!)
物理が必要と言ってもsin,cos,tanなんて計算はそれを証明する為のモノで実際はそんなモノ使わなくてもほとんどは一般的な物理の知識があれば理解出来る物です
後の方でその三角関数の計算式を使って今回の実験を検証して行きますが、私自身三角関数の計算なんて30年以上ぶりでサッパリ覚えていませんでした
と言うか学生時代でさえまともに理解していたか定かではありません
何たって数学・物理がほとんど赤点だったくらいですから(^_^;)
そんな私(高卒でしかも文系普通科)の私でも理解出来るくらいの物理的知識があれば十分です

と、言う訳でテールピースに掛かる力を計測してもナット~サドル間の張力ははじき出せないので別の計測方法を取ります



まずテールピース側からチューニング出来る様に木片で部品を作りペグを取り付けました



弦のボールエンドはヘッド側に来ますのでこちらにデジタル測りのフックを掛けて計測します
ギターは机に直接クランプで固定し、デジタル測りは机に固定したクランプに持ち手ベルトを引っ掛けます
この際のナット進入角ですが、テールピース側の実験でサドルとテールピースに張力が分散されたように、ヘッド側でもナット進入角があるとやはり張力が分散されるためナット~サドル間の張力を測るには進入角0度でなくてはならないのですが、それではナット上で弦が暴れてしまいチューニングが決まりませんので、ナット上で落ち着く程度に浅い約5度の進入角を付けました
計測手順はテールピース側で計測した時と同じです
計測結果は…




テールピースの位置の違いまで映し込まないといけないので画像が大きくなってしまいました
スマホで閲覧してる方、見難くてごめんなさい(汗
計測結果は
サドル進入角が深い時・・・5.905kg
サドル進入角が浅い時・・・5.925kg

その差は20g
デジタル測りの誤差内です
ナット進入角がわずか5度ですがありますので完全なナット~サドル間の張力を表している訳ではありませんがサドル進入角を深くした時も浅くした時もナット進入角は常に同じですので、サドル~デジタル測り間の張力はサドル進入角の違いの影響をほとんど受けていない事がご理解頂けると思います

つまりテールピースを上げたって下げたって張力は変わらないんです!

ここから大嫌いな物理で習った三角関数を使って計算式でそれを証明したいと思います
と言っても計算式なんか学生時代からロクに理解していなかった私ですから改めて勉強し直しました
こう云う時、ネットは本当に便利でググってみると分かり易いサイトが簡単に見つかりました
今回こちらのサイトを参考にさせて頂きました
力の分解
力の合成・分解
どちらのサイトも簡潔で分かり易くアホな私でも三角関数を応用できるようになりました
サイト製作者のりるさんとろっとんさんに感謝いたします



弦の張力は上図の様に分散・分解されます
物理学的な用語は極力使わずギターに特化した説明にさせて頂きますので物理に長けた方にはアホっぽく見えると思いますがお許しを(^_^;)
弦の張力はサドルの上でサドルを押す力テールピースに掛かる力に分けられます
サドルを押す力は画像下向きに掛かっていますが、押す力の向きは同軸上では引く力と同じになりますので説明し易いように同軸上上方向に向きを変えています

どのくらいの配分で力が分けられるかはサドル進入角から出来る直角三角形の「辺」の比率で決まります
例えばサドル進入角が30度の場合
辺Cは辺Aの50%の長さ、辺Bは辺Aの約87%の長さとなります
つまりナット~サドル間の張力が10kgでサドル進入角が30度の場合
サドルを押す力は5kg
テールピースに掛かる力は8.7kgとなります
単純な足し算で5kg+8.7kg=13.7kgと計算してしまうと元々の弦の張力10kgと同じにならないのが物理の難しいところで、私が物理が嫌いになったのもこう云う「何でやねん!?」からだったのでしょうねぇ~
学生時代の先生がこう云う何でやねん?を面白く解説してくれる先生だったらもっと賢い子になってたはずです!

平日の昼間っからごろごろ~ごろごろ~
「あ~あ物理の先生が壇蜜だったら良かったのになぁ~」©ずん飯尾




サドル進入角によるサドルを押す力とテールピースに掛かる力の配分具合は上図のようなイメージになります
サドル進入角が作る直角三角形が肝になっている事がご理解頂けるでしょうか?

それぞれが力の配分と同時に力が掛かる向きも変わっている事にも注目して下さい
サドルを押す力の向きはサドル進入角に対して必ず直角になりますが、サドル進入角が深すぎると図の様にかなり斜めネック向きに力が掛かってしまいます
アコースティックギターでサドルがネック側に傾いてブリッジが割れてしまっているギターをたまに見かけますが、その原因としてブリッジのサドル溝が浅すぎる事が多いのですが、サドル進入角が深すぎると云う構造的欠陥が原因である事もあります

話を戻してサドルを押す力とテールピースピースに掛かる力の比率を表すのが「サインコサインタンジェント」で、上図の辺Aに対する辺Cの比率がsin(サイン)、辺Aに対する辺Bの比率がcos(コサイン)になります
この比率はサドル進入角(物理学的にはθ(シータ)と呼ばれる)により変わりますのでその数値を割り出すのは私の頭では無理!
と云う事でスマホの計算アプリにお願いしました\(^o^)/

3つの実験で出た数値と計算式を図にしてまとめました


(ナット進入角はテールピース側を計測した時は約15度、ヘッド側を計測した時は約5度と同一ではありませんので混同しないよう上図中では省略しています)
上図赤文字部分が計算アプリを使ってはじき出したcos値とsin値です
(cosやsinの値は計算機では数値で答えが出ますが上で説明した内容に合わせて辺Aに対しての%に換算ました)
これと実験で分かっている数値を使って計算してみます
参考にした物理のサイトでは力を分解した計算式がありましたが今回の実験の場合、分解される前の力(ナット~サドル間の張力)が正確に計測できませんでしたので実測できたテールピースに掛かる力を元に逆算していきます
元になる力にcos値を掛けると分解された辺B(2つ上の図参照)に掛かる力が計算されると参考サイトにありましたので、これを逆算して、テールピースに掛かる力(TP)をcos値で割ります
計算式は
(TP)÷cos値=ナット~サドル間の張力(Te)
サドル進入角5度の場合cos値は99.6%ですから
5.935kg÷99.6%=5.959kg
と出ました
同様にサドル進入角20度の時の計算をすると
5.630kg÷94.0%=5.989kg
とその差は30gの差はあるもののほとんど同じ
テンションが強くなると言われるサドル進入角が深い時の方が30g大きいので「ほらやっぱり進入角が深い方がテンションが強くなるんじゃないか!」と思われた方もいらっしゃるでしょうが、測りに±20gの誤差がある事を思い出してください
私はこの30gは誤差の内だと思いますし、仮に実際に30gの差があるとして約6kgの張力のわずか200分の1の違いが人に分かるのでしょうか?
ちなみにダダリオのパッケージにあるテンション表によるとギターの1弦レギュラーチューニング、648センチスケールの場合
0.009インチの太さで5.96kg
0.0095インチの太さで6.64kg

ダダリオ独特のの0.0005インチ刻みのゲージでも680gの差がある訳ですから30gはその約20分の1の差でしかないのです
30gの張力の違いで押弦し易くなったり、チョーキングが軽くなったりなんてあるんでしょうか??

私は無いと思います!!

すいません、興奮してしまいましたm(__)m
気を取り直して…
ここで上図でもう一つご注目頂きたいのがサドル進入角5度の時のテールピースに掛かる力とヘッド上で計測した張力の数字です
テールピース側の張力を計測した時は
ナット進入角15度、サドル進入角5度で5.935kg
ヘッド側で計測した時は
ナット進入角5度、サドル進入角5度で5.925kg
ナット進入角が10度違っても計測張力は10gの差でしかなく、こちらもデジタル測りの誤差内ですからナット進入角が変わっても張力は変わらないと云う結果が出た訳です

では、今度はサドルに掛かる力を計算します
物理サイトでは辺C(2つ上の図参照)に掛かる力を計算するには
元になる力にsin値を掛けるとありましたので上の計算で出た計算上のナット~サドル間の張力(Te)を元に計算してみます
計算式は
(Te)×sin値=サドルに掛かる力
サドル進入角5度の時のナット~サドル間の計算上の張力は5.959kg、sin値は8.7%でしたので
5.959kg×8.7%=0.518kg
と出ました
実験による実測値が645g、計算値が518gと127gの差が出ました
実験の時にも書いたようにサドルに掛かる力を計測するのは大きな誤差が出てしまったのでナット~サドル間の張力の時のように思惑通りの数値とは言い難いのですが、上図中にあるようにサドル進入角20度の時の実測値と計算値と合わせて比較すると
   実測値  計算値
進入角20度の時   2.225kg  2.048kg
 進入角5度の時  0.645kg  0.518kg
 20度時と5度時の差  1.58kg  1.53kg
サドル進入角20度の時と5度の時の実測時の差1.58kgに対し計算時の差1.53kgと似た数値になります
つまりサドル進入角20度の時よりも5度の時の方がサドルに掛かる力は約1.5kg軽くなる事は証明出来たと思います

ここで閃いた方がいらっしゃるかも知れません
「テールピースを上げた進入角5度の時の方がサドルに掛かる力が軽くなると云う事はサドルと弦の摩擦が小さくなるのでチョーキングが軽くなると云う事では?
つまりやっぱりテールピースを上げるとチョーキングが軽くなると証明された!?」と。
ではこちらも実験してみましょう
実験方法は3弦のサドルとテールピースの間に針を貼り付けます。次に3弦に貼り付けた針先がメモリに合うように定規の位置を決めて1、2弦の上に貼り付け、12フレット上で2音チョーキング分弦を引っ張った時に針先がどれくらい動くのかgifアニメにして比べてみます
まずはサドル進入角20度の場合から



よ~く見て頂くと静止時とチョーキング時でほんの少しだけ針先が動くのがお分かり頂けるかと思います
楕円小窓は針先部分を拡大し、定規の目盛り1ミリの中に更に10分の一の目盛りを合成しました
これで0.1ミリ単位で動く量が分かるようにしたかったのですが、動く量が0.1ミリ以下でよく読めません(ーー゛)
0.1ミリ目盛りの半分くらい動いているように見えますのでサドル進入角20度の時動く量は0.05ミリとします

ではサドル進入角5度の場合は



こちらの方がほんの少しですが多く動いているようにも見えますが、サドル進入角20度の時との差は0.05ミリも無いはずです

サドルに掛かる力の違いでサドル~ナット間で動く弦の量はどうも変わるようです
ただ、これ、3弦を2音チョーキングした時の場合です
12フレット上で3弦を2音チョーキングするには2.5センチほど弦を引き上げる必要があるのですが、この時弦は約0.5ミリ引き伸ばされる様になります



三角関数でも計算できる数値ですが、当然現物を測った方が早いのでこの様に測りました
3弦の12フレットからサドルまでの距離が316ミリ
3弦から12フレット沿いに25ミリ移動した場所から3弦のサドルまでの距離が316.5ミリ
その差は0.5ミリです
(実際は12フレットからナットまでも同様にに伸ばされるのですがこちらの伸び分はペグ~ナット間で弦が動きますので、サドル~テールピース間の弦の動きはサドル~12フレット間の弦の伸びの影響だけを受ける事になります)
3弦は2音チョーキング時に0.5ミリ伸ばされる事になるのですが、これに伴うサドル~テールピース間の弦の動きがサドル進入角20度と5度で大目に見ても0.05ミリ以下の差が出る事でチョーキングが軽くなったり重くなったりするでしょうか?
「チョーキングで伸ばされる長さの1割近く違うんだから影響が出て当然」
と云う考えも有るでしょう
「いやいや、1割り以下の違いなんて感じるはずが無い」
と云う意見も有ると思います
個人的な意見を述べさせて頂くと

少なくとも私は違いなんて感じない!

です

今回のテストで何回もテールピースを上げたり下げたりしてその都度弾き比べましたが私は全く違いを感じませんでした
しかし実際にチョーキングのし易さが変わったと実感された方もいらっしゃるでしょから完全否定はいたしません

ただ、普通の押弦時はチューキング時の様にはサドル上で弦は動きませんので、押弦時に限って言うとテールピースの上げ下げでテンションが変わると云うギターの世界の常識はここまでやってきた実験と計算式の証明を根拠に

完全否定させて頂きます!

では、サドル進入角の違いなんかで何にも変わらないのか?
実は音が変わるのです
どの様に変わるかは次回の記事にさせて頂きます
音に関しては計算式で証明する事は出来ませんし、それなりの機材があれば実験検証出来るのでしょうがそんな機材は持ち合わせていませんので次回は状況観察による個人的な見解になりますが皆さんにとってはまた意外なお話になると思います

それではお楽しみに!

おまけ
こんな実験もしてみました

2音チョーキングし切った時点の張力ですが、当然の数値でした
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