ご質問箱

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では、早速頂いたご質問にお答えしたいと思います


4月30日ご投稿C
Q:多弦ベースにおいては数種類の木材を使用した多層構造のネックが多いと思います。 このような構造のベースは、私の印象では音的にケロっているという表現になりますが、独特な音になっていると感じます。これは接着剤の影響だと思うのですがいかがでしょうか。
A:多弦ベースの様にネック幅が広くなると材木確保の点から多層構造になってしまう事はある程度仕方ありません
独特な音になるのは接着剤による影響か?とのご質問ですが、私はそうは思いません
ネックの厚み:幅の比率が幅方向に大きくなる(比率上薄くなる方向)ほどネックは弦振動エネルギーを受けて振動し易くなります
むしろそう云ったネックその物の振動し易さが独特な音になっている可能性を感じます
当店のコラム記事「デッドポイントとは何ぞや」の実験動画をご覧に頂くと、振動し易い土台で揺れる振り子は、振り子の振動エネルギーを土台が受けて振動し、この土台の振動が共振や干渉となって振り子を不規則な振動にさせる事がご理解頂けると思います
「音的にケロってる」の意味が分からなかったのでググってみたところ、どうやらヴォイスエフェクトの事のようで Perfumeのヴォーカルの様な、昔で言うヴォコーダーによるヴォーカルエフェクトの様に語尾でケロケロ云う様なエフェクト効果とありましたが、ご質問中の「ケロってる」がこれに当てはまるのであればそれこそネックが振動し易い為に弦振動がネックの振動の共振や干渉を受けてストレートな弦振動と様相が変わり独特な音になってしまったのでは無いかと思います

ちなみに、ネック折れ修理をお問い合わせやご相談を頂いた時にネック折れ修理後は音が変わってしまうのか?と云ったご質問を良く受けます
恐らく今まで無垢だったところに接着剤が入る事に対する不安があるのでしょうが、この時の私の回答は2種類ありまして
「ネック折れ修理すると音は変わるん
ですか?」と聞かれると「変わりませんよ」と答えます
一方「ネック折れ修理すると音は変わるん
ですよね?」と聞かれると「ですよね?と聞かれた時点で貴方の結論は出ているので、変わります」とお答えします
すんごく意地悪だとは分かっていますが「ですよね?」は質問では無くて既に出ている答えの“確認作業”と私は受け取っていますので、変わると思い込めば変わって聴こえますと答えるのが逆に誠実だと思うんです
多分私がそこで「それくらいで変わりませんよ」と言った所でご本人の気持ちが変わらない限り変わって聴こえると思いますし、「変わってるじゃねーかウソつき」と思われかねませんから。
音ってそれくらい心の影響を受ける物である事は皆さん少なからず体験された事があると思います
で、そういう意地悪無しで本当に接着剤の層が挟まる事で音は変わるのか?ですが、接着場所に適切な種類の接着剤を必要最小限の量で適切な作業方法で行えば無垢と変わり無いと云うのが私の考えです
接着場所に適さない種類の
接着剤を使用したり、適切な固定作業を怠った場合は接着強度が落ちてネック折れ修理の場合は弦の張力で接着が剥がれてしまう可能性がありますし、多層ネックや2ピースなど張り合わせボディの場合は接着面積の不足や圧着不足で接着面が剥がれてしまったりします
また接着剤の量が多過ぎて木材と木材の間に接着剤の「層」が出来るほどになると音響的に影響出てくる可能性はありますが、そんな事はド素人が作業をしない限り工場物にしても修理時にしてもあり得ませんので心配する必要は無いと思います

Q:ネックの木材で板目と柾目があると思いますが、それぞれの特徴が知りたいです。 なんとなくですが、柾目のほうが強度が出て高級品というイメージがありますが・・・
A:確かに高級なギターには柾目材が使用されている事が多いように思いますし、柾目は狂い難いという人も多いですし、そう断言する大手メーカーもあります
ただ、経験上柾目材のネックでも変な方向に曲がってしまっているを見た経験がありますし、当店の取引先の業者は「柾目でロクなもん無い!」と痛い経験でもしたのか(どんな経験か知ってるけど(^_^;))嫌っている人も居ます
まず木材には夏目と冬目と云う物がありますがあります
樹木は温かく日の長い夏の時期には成長が早く、寒く日照時間の短い冬には成長が遅くなります。成長が遅いほど木の細胞は密度が高く硬く締まった様になり濃い色になります
この部分を「冬目」と言いますが、一般的に「木目」と呼ばれる木の模様がこの「冬目」になります
例えばメイプル材の場合、木目の間の白い所が「夏目」になります
ネック材を柾目で切り出した場合、ネックが弦の張力で引っ張られて反る方向に対して固く締まった冬目が“柱”の様に立ち並ぶ事をイメージすると板目よりも柾目の方が丈夫だと云う風になるかと思われるでしょうしが、強さ弱さ以外に狂い易い方向と云うのがあります
下の画像の矢印方向がそれぞれに狂い易い方向です

この絵は上もしくは下が指板側と思ってみて下さい
多くのギターはトラスロッドが仕込まれていて反りを調整する事が出来るようになっています
そう思ってもう一度上の画像を見て頂くと板目の木目特性で狂いが発生した場合、トラスロッドで調整出来るが柾目で狂いが出た場合トラスロッドでは修正できない方向に曲がってしまうと云う事です
実際、1弦が弦落ちすると云う事で持ち込まれたギターがこの様に曲がっていた事がありました

イラストが小学生レベルで申し訳ございません(土下座
1弦側のネックサイドに定規を当てると真ん中あたりに隙間が出ていて、このせいでミドルポジションで弦落ちしてしまっていたんです
で、このネック材は柾目材でした
建材の薄板材では確かに柾目材は狂い難い切り出し方になりますが、ギターやベースのネック材となると別の方向での問題点もあり得ると云う事です
ただ、柾目にせよ板目にせよ角板材の時点できっちり乾燥し(ただし自然界にあり得ないほどの乾燥のさせ方には私は懐疑的です)、ネックの形に切り出したら数日置いて捻じれなど狂いを出させてから平面を出し、グリップを削っては数日置いて狂いを出し、更に平面を出してから指板を貼り付け(1ピースネックの場合はここで指板R加工)てと工程ごとに狂いを修正しながら加工してして行く事が狂い難いネック作りにおいて最も重要な事で、同じ加工工程を取ったとするとやはり柾目の方が狂い難かったり順反りに強かったりすると思いますが、こう云った工程を踏まずにただ単に柾目材を使えば良いと云う考えで作られた場合は上のイラストの様に修正できない方向に曲がってしまう事もあるんです
最後になぜ柾目材が高級かと云うと、一本の丸太材から切り出せる数が少なく希少性があるからです
希少性の材を使用していると云うスペックがあれば木材原価以上の付加価値が付けられますし利幅が出ます
世の中はそう云う事で回っているのです

Q:木ネジというものに強度的な疑問点を感じております。エレキギター、ベースにおいてボディとネックの接合は未だに木ネジだと思うのですが、ネック側に鬼目ナットなどを使用して、ボルトでの接合のほうが強度が上がると思うのですがいかがでしょうか。 ネックだけでなく、ブリッジやペグなども同様に考えることが出来る気がしております
A:
確かにフェンダージャパンのイングヴェイモデルのネックにはアンカーボルトが打ち込まれていますね
ジョイントネジはネック側のネジ穴がバカになってネジが利かなくなっているのをよく見かけますが、あれはネック側の強度的な問題と言うよりは製造時の下穴が大きすぎたり、ネックを外して再度取り付ける時に元のネジ溝にきちんと合わせずに適当にねじ込んでしまった結果だと思います

ボルト結合にも問題点はあります
@ボルト結合は少しでも緩むとガタガタに緩んでしまう
例えば木ネジ止めのジョイントネジは一旦ねじ込まれた事があり、ネック側のネジ穴にネジ山の溝が入って居たとしても指先だけで締め込んで行く事は固くて出来ませんが、アンカーボルトが入ったイングヴェイモデルの場合、指先がボルトの頭をつまむ事が出来る限りクルクルと指先で回し込んで行く事が出来ます
ジョイントネジはボディが乾燥して0.1ミリでも収縮すると緩みますが、木ネジであれば緩んでいても木との摩擦でクルクルと回ってしまうような事はありませんが、ボルトですと締め付けた最後のトルクが維持できないと簡単にクルクルと緩んで来てしまいます

サドルの弦高調整用イモネジを無くしてしまう人が良くいるのですが、サドル1個あたり2本あるイモネジの片方が弦の振動などで緩みだしてサドルが傾き、隣のサドルがつっかえ棒になり緩んだイモネジが宙に浮くとその後はさび付いていない限り弦振動でクルクル回り最後には気が付かないうちに抜け落ちて無くしてしまいます
ハムバッキングピックアップの高さ調整ネジも細いボルトネジですがこれもボディの振動で回転して高さ調整のバネが伸び切る所まで緩むとボルトが外れてピックアップがキャビディの中に落ちてしまいますがこれも良くある事です
流石にジョイントネジの場合は長さもありますので酷く緩むとさすがに気が付くと思いますが、接合強度を上げるつもりが簡単にガタが出るようでは本末転倒ですよね
であれば強いトルクで締め込めば良いんじゃないかと思われるかも知れませんが、例えばジョイント部分の場合、木ネジでも強く締め込むとジョイントプレートがボディに喰い込んでボディの塗装にヒビが入ってしまいます
ボルトでそれ以上のトルクを掛けると最悪ボディ自体にヒビが入ってしまうかも知れません
また、ジョイントネジの締め付けトルクで音が変わるという方もいらっしゃいます
(私は特にそうは思いませんが…)
そういう方には微妙な締め付けトルクも音のチューニングになるようですので緩めのトルクでは緩み切ってしまう様なボルト止めは否定されてしまうかも知れませんね
A鬼目ナットやアンカーボルトは作業が面倒
元製造側からの目線で言いますと木ネジで十分な強度を保てるところにわざわざアンカーボルトを打つのはひと手間が加わる事になりますがそれが多数のネジ穴でとなるとあまりしたく無いでしょうね
もちろんレスポールなどのテールピースや、フロイドローズなど2点支持式のトレモロユニットなど、木ネジではアンカーが傾いてしまったりするような部分にはどのメーカーも手間を惜しまずアンカーボルトを打ち込んでおります
Bユーザーが求めない
多くの楽器ユーザーにとってのキラーワードの中には「ボディ(又はネック)にダイレクトに云々」と云ったキーワードがあると思いますが、とにかく出来る限り金属物や木材以外の異物を排除したがるのが多くの傾向だと思います
(ジョイントシムや接着剤の層もこれに含めても良いかも知れません)
そう云った事から仮にメーカー側がコダワリであらゆる所にアンカーボルトを採用したとして、場合によってはユーザーの反発を受ける可能性も考えられるのでは無いでしょうか?
木ネジもアンカーボルト&ナットも適材適所だと思いますね




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