表紙イラスト:生頼範義(以下同じ)

 8年目のSFアドベンチャーはカラーページを巻頭に移し、石原藤夫の連載コラムを新設するなど刷新を図るが、内容的には大きな変化はなかった。日本SF大賞はかんべむさし『笑い宇宙の旅芸人』である。

 この号から、SFチェックリスト発足時からのリーダである伊藤典夫が退陣する。レビューを手がけなくなった85年以降も、チェックリスト欄の方向性を仕切っていた存在だった。また、同じく発足時メンバーだった安田均が7月以降実質的にリタイアする。

 各人への作品割り当てなどは、これ以降鏡明、星敬により行われるようになる。

1987年1月から12月までの担当者:
鏡明・安田均・大野万紀・野村芳夫・岡本俊弥・福本直美・星敬・白川星紀・喜多哲士

 86号収録のレビューは、1986年8月25日から10月25日までの25冊(7月の1冊を含む)。

 今月の注目作は、カート・ヴォネガット『ガラパゴスの箱舟』、かんべむさし『笑い宇宙の旅芸人』、筒井康隆『旅のラゴス』である。

ガラパゴスの箱舟 カート・ヴォネガット 早川書房 福本直美
笑い宇宙の旅芸人 かんべむさし 徳間書店 安田均
旅のラゴス 筒井康隆 徳間書店 鏡明
エコトピア国の出現 アーネスト・カレンバック ダイヤモンド社 岡本俊弥
魔界王国 クラーク・A・スミス 朝日ソノラマ 大野万紀
海ふかく ウィリアム・ホープ・ホジスン 国書刊行会 野村芳夫
紀・魍魎伝説5 谷恒生 角川書店 星敬
未知の地平線 ロバート・A・ハインライン 早川書房 星敬
南極大氷原北上す リチャード・モラン サンケイ出版 大野万紀
幻文明の旅 荒巻義雄 徳間書店 岡本俊弥
死霊たちの仮面 竹河聖 廣済堂出版 野村芳夫
宇宙島へ行く少年 アーサー・C・クラーク 早川書房 白川星紀
定本ラヴクラフト全集8 H・P・ラヴクラフト 国書刊行会 福本直美
魔性菩薩(サイコダイバー5、6) 夢枕獏 祥伝社 鏡明
人喰い鬼の探索 魔法の国ザンス5 ピアズ・アンソニイ 早川書房 鏡明
サンダイバー デイヴィッド・ブリン 早川書房 岡本俊弥
黄金殺界 木谷恭介 祥伝社 喜多哲士
動乱2100(未来史3) ロバート・A・ハインライン 早川書房 福本直美
ダヤン・ゆりの花蔭に M・エリアーデ 筑摩書房 大野万紀
キマイラ涅槃変(キマイラ吼7) 夢枕獏 朝日ソノラマ 喜多哲士
漂流教室5 梅図かずお+風見潤 角川書店 白川星紀
恐怖のハローウィン13 アイザック・アシモフ 徳間書店 喜多哲士
M/Tと森のフシギの物語 大江健三郎 岩波書店 野村芳夫
妖獣伝 吉津寛 有楽出版社 星敬


 

 87号収録のレビューは、1986年10月20日から11月30日までの28冊。

 今月の注目作は、デイヴィッド・ウイングローブ『最新版SFガイドマップ』、トマス・M・ディッシュ『キャンプ・コンセントレーション』、大原まり子『未来視たち』。『SFガイドマップ』については、白川星紀による辛辣な批判で、“仲間(安田・岡本訳)貶し”だと評判になった。

最新版SFガイドマップ 作家名鑑編 ディヴィッド・ウイングローブ編 サンリオ 白川星紀
キャンプ・コンセントレーション トマス・M・ディッシュ サンリオ 大野万紀
未来視たち 大原まり子 早川書房 岡本俊弥
SFとは何か 笠井潔編著 日本放送出版協会 安田均
惑星救出計画 ダーコーヴァ年代記1 マリオン・ジマー・ブラッドリー 東京創元社 星敬
髑髏伝5 谷恒生 光文社 白川星紀
マッド・サイエンス入門 堀晃 新潮社 白川星紀
サイエンティスト ジョン・C・リリー 平河出版社 鏡明
暗黒街戦士(戦士1) 菊池秀行 実業之日本社 喜多哲士
1008年源氏物語の謎 藤本泉 旺文社 福本直美
淫獣の妖宴 フィリップ・ホセ・ファーマー 光文社 安田均
くたばれPTA 筒井康隆 新潮社 野村芳夫
悲しきカンガルー 横田順彌 新潮社 星敬
未踏惑星キー・ラーゴ 梶尾真治 新潮社 福本直美
環状0号線 かんべむさし 新潮社 喜多哲士
星の導師 水見稜 新潮社 岡本俊弥
腐蝕の惑星 竹本健治 新潮社 岡本俊弥
太陽系オデッセイ アーサー・C・クラーク 新潮社 星敬
竜の歌(パーンの竜騎士4) アン・マキャフリイ 早川書房 鏡明
拷問者の影(新しい太陽の書1) ジーン・ウルフ 早川書房 大野万紀
ザ・サイキック2 田中光二 徳間書店 鏡明
妖術の都、吉備(古事記変幻2) 醍醐麻沙夫 徳間書店 野村芳夫
妖獣地帯2 菊池秀行 講談社 野村芳夫
大江戸仙境録 石川英輔 講談社 白川星紀
帰ってきた雪之丞(荒熊雪之丞2) 横田順彌 徳間書店 福本直美
蕎麦ときしめん 清水義範 講談社 岡本俊弥
SF大辞典 横田順彌 角川書店 喜多哲士
インテグラル・ツリー ラリイ・ニーヴン 早川書房 大野万紀


 

 88号収録のレビューは1986年10月24日から1987年1月15日までの28冊。

 今月は、横田順彌『少年文学大系 空想科学小説集』、平井和正『ハルマゲドンの少女』。
 


少年文学大系 第8巻空想科学小説集 尾崎秀樹他監修+横田順彌編 三一書房 星敬
ハルマゲドンの少女 平井和正 徳間書店 野村芳夫
はるかなる地球帝国(ダーコーヴァ2) マリオン・ジマー・ブラッドリー 東京創元社 野村芳夫
メガロポリス特捜隊(現代編2) 田中光二 角川書店 鏡明
死霊塔主ジマ・ディンゴ(大魔界5) 田中文雄 早川書房 大野万紀
ハルマゲドン黒書3 中島渉 講談社 岡本俊弥
戦士よ、悪魔人類を撃て 南城正樹 講談社 鏡明
こちらアホ課 小松左京 勁文社 鏡明
宿命の赤き太陽(ダーコーヴァ3) マリオン・ジマー・ブラッドリー 東京創元社 福本直美
アメーバ妖女 豊田有恒 集英社 野村芳夫
魔空の迷宮 山田正紀 中央公論社 白川星紀
呪界の総統兵団 川又千秋 中央公論社 大野万紀
大帝の剣(万源力郎1) 夢枕獏 角川書店 星敬
魔法の国よ永遠なれ(ウォーロック3) ラリー・ニーヴン 東京創元社 白川星紀
魔女・魔道師・魔狼 ロッド・サーリング 朝日ソノラマ 安田均
夜来たる アイザック・アシモフ 早川書房 喜多哲士
ゑゐり庵綺譚 梶尾真治 徳間書店 星敬
ビースト・マスター アンドレ・ノートン 早川書房 白川星紀
超人の午後 ルイ・ボーウェル 工作舎 安田均
ダミアーノ(魔法の歌1) R・A・マカヴォイ 早川書房 福本直美
時空漂流船現わる!(銀河辺境外伝4) A・バートラム・チャンドラー 早川書房 喜多哲士
惑星アイリータ調査隊(恐竜惑星1) アン・マキャフリイ 東京創元社 岡本俊弥
アルファ系衛星の氏族たち フィリップ・K・ディック サンリオ 福本直美
スサノオ自伝 芦原すなお 集英社 鏡明
剣と魔法の物語 ロバート・E・ハワード 朝日ソノラマ 大野万紀
宇宙元年新創世記(ビッグウォーズ4) 荒巻義雄 徳間書店 岡本俊弥
石の刻シティ 大原まり子 徳間書店 安田均
地底の王国 邦光史郎 サンケイ出版 喜多哲士


 

 89号収録のレビューは、1986年12月20日から1987年1月31日までの17冊(11月の1冊を含む)。

 今月の注目作は、マーク・ヘルプリン『ウィンターズ・テイル』。
 別に86年総括記事も載っている。

ウィンターズ・テイル マーク・ヘルプリン 早川書房 喜多哲士
ゴールドういろう(定吉七番4) 東郷隆 角川書店 福本直美
スピルバーグのアメージング・ストーリー1 スティーヴン・バウアー 新潮社 福本直美
魔の誕生日 異色恐怖小説傑作選4 ヴァン・サール編 朝日ソノラマ 野村芳夫
ショート・ショート劇場4 小説推理編集部編 双葉社 野村芳夫
破魔神紀 狂乱の巻 志茂田景樹 講談社 白川星紀
恐怖通信U 中田耕治編 河出書房新社 星敬
エリアンダー・Mの犯罪 ジェリー・ユルスマン 文藝春秋 福本直美
大冒険はおべんと持って(みのりちゃん2) 火浦功 早川書房 岡本俊弥
エバは猫の中 ガルシア・マルケス他 サンリオ 岡本俊弥
ホークスライン登場(ホークスライン1) ロバート・アダムス サンリオ 星敬
美空曼荼羅(サイコダイバー7) 夢枕獏 祥伝社 喜多哲士
幽霊なんかこわくない(ふぁん太爺さんほらふき夜話2) 横田順彌 集英社 野村芳夫
ミッドナイト・ミートトレイン クライヴ・バーカー 集英社 白川星紀
淫殺街(コマンド・ポリス1) 菊池秀行 光文社 星敬
炎の神シャーラ(ダーコーヴァ4) マリオン・ジマー・ブラッドリー 東京創元社 白川星紀
未踏星域をこえて(ゼロ・ストーン2) アンドレ・ノートン 早川書房 岡本俊弥


 

 90号収録のレビューは、1987年1月20日から3月10日までの19冊(86年11月の1冊を含む)。

 今月の注目作は、筒井康隆『夢の木坂分岐点』、田中光二『新・ソロモン王の宝窟』、カール・セーガン『サイエンス・アドベンチャー』(86年11月刊)。

夢の木坂分岐点 筒井康隆 新潮社 岡本俊弥
新・ソロモン王の宝窟 田中光二 早川書房 野村芳夫
サイエンス・アドベンチャー カール・セーガン 新潮社 福本直美
飛騨匠物語(江戸幻想小説叢書 壱) 石川雅望 創林社 星敬
聖鬼伝 魔族たちの祝祭 紀和鏡 実業之日本社 鏡明
タイム・トラベラー 伊藤典夫・浅倉久志編 新潮社 大野万紀
妖聖記 竹河聖 有楽出版社 白川星紀
地の涯 幻の湖 田中光二 徳間書店 野村芳夫
破壊軍団(スーパーカンサー1) 山田正紀 徳間書店 白川星紀
銀河英雄伝説8 田中芳樹 徳間書店 喜多哲士
サーラ(魔法の歌2) R・A・マカヴォイ 早川書房 白川星紀
異性人たち 川又千秋 勁文社 福本直美
調停者の鉤爪(新しい太陽の書2) ジーン・ウルフ 早川書房 鏡明
ダーコーヴァ不時着(ダーコーヴァ5) マリオン・ジマー・ブラッドリー 東京創元社 喜多哲士
証拠写真が三十四枚 都築道夫 光文社 星敬
コンピュータ10の犯罪 アイザック・アシモフ編 パーソナルメディア 大野万紀
日本黙示録 川又千秋 祥伝社 喜多哲士
<教皇>ヴァレンタイン(マジプール年代記3) ロバート・シルヴァーバーグ 早川書房 星敬
宇宙船ヴァニスの歌 友成純一 双葉社 岡本俊弥


 

 6月号から小松左京の連続対談「SFってなんだっけ?」が11月号まで連載される。この連載は、城西国際大学の小松左京全集以外には収録されていない。

 91号収録のレビューは、1987年2月25日から3月25日までの22冊(86年12月の1冊を含む)。

 今月の注目作は、笠井潔『巨人伝説 崩壊編』、マーヴィン・ピーク『ゴーメンガースト』、グレッグ・ベア『ブラッド・ミュージック』。

巨人伝説 崩壊編 笠井潔 徳間書店 白川星紀
ゴーメンガースト マーヴィン・ピーク 東京創元社 安田均
ブラッド・ミュージック グレッグ・ベア 早川書房 星敬
ドルロイの嵐(クラッシャージョウ外伝) 高千穂遙 朝日ソノラマ 大野万紀
幻想皇帝(聖妖星編1) 藤川桂介 角川書店 鏡明
惑星カレスの魔女 ジェイムズ・H・シュミッツ 新潮社 野村芳夫
少年小説大系 第9巻 海野十三集 會津信吾編 三一書房 喜多哲士
超人軍団(スーパーカンサー2) 山田正紀 徳間書店 白川星紀
妖山鬼 菊池秀行 徳間書店 福本直美
2000年から3000年まで B・スティブルフォード&D・ラングフォード パーソナルメディア 福本直美
クー 竹本健治 講談社 星敬
神々のワードプロセッサ スティーヴン・キング サンケイ出版 星敬
ショートショート・グランプリ コバルト編集部編 集英社 野村芳夫
タマスターラー タニス・リー 早川書房 喜多哲士
遥かなる地球の歌 アーサー・C・クラーク 早川書房 鏡明
ダーティーペアの大乱戦(ダーティペア3) 高千穂遙 早川書房 大野万紀
銀河乞食軍団(外伝U) 野田昌宏 早川書房 大野万紀
アンティシペイション クリストファー・プリースト編 サンリオ 福本直美
猫恐 田中文雄 光風社出版 野村芳夫
ファンタジーの発想 小原信 新潮社 安田均
ジャクリーン・エス(血の本U) クライヴ・バーカー 集英社 鏡明
神々の血脈(第1話) 西谷史 角川書店 喜多哲士


 

 92号収録のレビューは、1987年3月10日から4月25日までの18冊。

 今月の注目作は、コードウェイナー・スミス『ノーストリリア《人類補完機構2》』。

ノーストリリア コードウェイナー・スミス 早川書房 大野万紀
鉄の踵 ジャック・ロンドン 新樹社 岡本俊弥
スタンド・バイ・ミー スティーヴン・キング 新潮社 白川星紀
惑星壊滅サービス(ダーコーヴァ6) マリオン・ジマー・ブラッドリー 東京創元社 岡本俊弥
ジューマの神々 バルスームふたたび デイヴィッド・J・レイク 東京創元社 福本直美
魔王伝3 完結篇 菊池秀行 祥伝社 喜多哲士
銀河英雄伝説外伝2 田中芳樹 徳間書店 大野万紀
原罪都市(星狩り人4) 川又千秋 講談社 野村芳夫
スタークエイク ロバート・L・フォワード 早川書房 白川星紀
デイワールド フィリップ・ホセ・ファーマー 早川書房 鏡明
トーテム ディヴィッド・マレル 早川書房 野村芳夫
惨殺の女神 ジョン・ソール 早川書房 福本直美
アッシュと地球の緑の森(アッシュ4) 田中光二 講談社 岡本俊弥
ヘルドラド サヴァイヴァリスト1 ジェリー・エイハーン 東京創元社 白川星紀
ホークスランの剣(ホークスラン2) ロバート・アダムス サンリオ 星敬
ナラベドラの鷹(ダーコーヴァ外伝) マリオン・ジマー・ブラッドリー 東京創元社 鏡明
電子頭脳<ユエ> ウィリアム・カミュ 角川書店 喜多哲士
イカロスの飛翔 世界のSFイラスト ドナルド・レームクール他 日本テレビ放送網 星敬


 

 93号収録のレビューは、1987年4月10日から5月31日までの20冊。

 今月の注目作は、筒井康隆『歌と饒舌の戦記』、フランク・ハーバート『デューン 砂丘の大聖堂』。

歌と饒舌の戦記 筒井康隆 新潮社 鏡明
デューン 砂丘の大聖堂3 フランク・ハーバート 早川書房 岡本俊弥
幻想物語の文法 ギルガメッシュからゲド戦記へ 私市保彦 晶文社 福本直美
魔宮伝 淫闘編 麻倉一矢 角川書店 喜多哲士
夢意識の時代 川又千秋 中央公論社 鏡明
時空の支配者 ルディ・ルッカー 新潮社 野村芳夫
ラファエル(魔法の歌3) R・A・マカヴォイ 早川書房 白川星紀
神州魑魅変1 谷恒生 徳間書店 星敬
エピソード1=イロル ふゆきたかし サンケイ出版 白川星紀
恐怖の暗黒魔王(宇宙船ヴァニスの歌2) 友成純一 双葉社 大野万紀
惑星ペリーの謎(宇宙大作戦) ジャック・C・ホールドマン2世 早川書房 福本直美
大魔王にアタック(ラヴ・ペア3) 岬兄悟 早川書房 星敬
エディプスの市 笠井潔 講談社 大野万紀
クローム襲撃 ウィリアム・ギブソン 早川書房 星敬
宇宙コマンド・魔球殺法 新宮正春 講談社 野村芳夫
超能力パニック 高井信 講談社 喜多哲士
ブラッドマネー博士 フィリップ・K・ディック サンリオ 福本直美
セルロイドの息子(血の本V) クライヴ・バーカー 集英社 野村芳夫
ブラックカラー ティモシー・ザーン 早川書房 喜多哲士
SFマガジン・セレクション1986 早川書房編集部 早川書房 大野万紀


 

 94号収録のレビューは、1987年5月25日から6月30日までの24冊。

 今月の注目作は、神林長平『今宵、銀河を杯にして』、スティーヴン・キング『デッド・ゾーン』、キース・ロバーツ『パヴァーヌ』。

今宵、銀河を杯にして 神林長平 徳間書店 喜多哲士
デッド・ゾーン スティーヴン・キング 新潮社 野村芳夫
パヴァーヌ キース・ロバーツ サンリオ 福本直美
ドラゴンランス戦記1、2 マーガレット・ワイス&トレイシー・ヒックマン 富士見書房 喜多哲士
鬼獣伝 菊池秀行 角川書店 福本直美
ヴァンパイアー戦争6 笠井潔 角川書店 星敬
紀・魍魎伝説6 谷恒生 角川書店 星敬
惑星オネイロスの伝説 川又千秋 新潮社 岡本俊弥
サクリファイス アンドレイ・タルコフスキー 河出書房新社 野村芳夫
ムー大陸摩天楼(無宇企画3) 荒巻義雄 角川書店 鏡明
黒い黙示録 カール・ジャコビ 国書刊行会 星敬
インキュパス レイ・ラッセル 早川書房 鏡明
妖樹・あやかしのき 夢枕獏 徳間書店 野村芳夫
母親を喰った人形 ラムジー・キャンベル 早川書房 白川星紀
トウモロコシ畑の子供たち スティーヴン・キング サンケイ出版 福本直美
南から来た拳銃使い(能なしワニ1) 中井紀夫 早川書房 鏡明
ささやかな叡智 マイクル・ビショップ 早川書房 岡本俊弥
ぬすまれた味 小松左京 勁文社 大野万紀
栄光のスペースアカデミー ロバート・A・ハインライン 早川書房 喜多哲士
ショート・ショート劇場5 小説推理編集部編 双葉社 岡本俊弥
カリスタの石(ダーコーヴァ8) マリオン・ジマー・ブラッドレー 東京創元社 大野万紀
漂流の美剣(失われし者タリオン1) 田中光二+宮本昌孝 早川書房 大野万紀
くたばれスネイクス ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスン 早川書房 白川星紀


 

 95号収録のレビューは、1987年6月20日から8月10日までの22冊(86年4月、5月の2冊を含む)。

 今月の注目作は、荒俣宏『帝都物語10 復活編』。

帝都物語10 荒俣宏 角川書店 大野万紀
グランドマスター ウォーレン・スーフィー&モリー・コグラン 早川書房 白川星紀
オルドーンの剣(ダーコヴァ9) マリオン・ジマー・ブラッドリー 東京創元社 野村芳夫
玻璃物語 双蛇宮 国書刊行会 岡本俊弥
非情の灼熱惑星 F・A・ジェイヴァー 早川書房 鏡明
少年小説大系 第5集 高垣眸集 尾崎秀樹他監修+高橋康雄編 三一書房 星敬
シルバーソーン(リフトウォー・サーガ2) レイモンド・E・フィースト 早川書房 白川星紀
聞かせて君のブルースを(スターゲイザー3) 大和眞也 シャピオ 福本直美
ノー・マンズ・ランド モーリス・ルブラン 東京創元社 福本直美
ラヴクラフト全集5 H・P・ラヴクラフト 東京創元社 鏡明
ダンクトンの森 ウィリアム・ホーウッド 評論社 野村芳夫
銀河乞食軍団9 野田昌宏 早川書房 大野万紀
星の墓標 谷甲州 早川書房 岡本俊弥
蒼いくちづけ 神林長平 光文社 福本直美
双星妖美伝 竹河聖 光文社 星敬
思考転移装置顛末 森下一仁 講談社 鏡明
ホークスランの復讐(ホークスラン3) ロバート・アダムス サンリオ 星敬
同姓同名逆人生 かんべむさし 光文社 喜多哲士
ゴースト・モーテル クライヴ・バーカー 集英社 喜多哲士
英雄と王冠(ダマール王国物語2) ロビン・マッキンリイ 早川書房 喜多哲士
銀色の恋人 タニス・リー 早川書房 岡本俊弥
漂流物体X 堀晃 双葉社 野村芳夫


 

 96号収録のレビューは、1987年7月25日から8月31日までの20冊(86年5月、6月の2冊を含む)。

 今月の注目作は、ジェイムズ・ティプトリーJr『愛はさだめ、さだめは死』。

愛はさだめ、さだめは死 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 早川書房 白川星紀
銀河英雄伝説9 田中芳樹 徳間書店 喜多哲士
祟峻天皇暗殺事件 豊田有恒 講談社 鏡明
タリスマン スティーヴン・キング&ピーター・ストラウブ 新潮社 鏡明
淋しい場所 オーガスト・ダーレス 国書刊行会 福本直美
狩りをするエイラ(始源への旅立ち第3部) ジーン・アウル 評論社 喜多哲士
邪星記 弥勒の船 紀和鏡 徳間書店 鏡明
魔界の家 ジェームズ・ハーバート 早川書房 福本直美
永劫 グレッグ・ベア 早川書房 岡本俊弥
警士の剣(新しい太陽の書3) ジーン・ウルフ 早川書房 大野万紀
創竜伝1 田中芳樹 講談社 大野万紀
恐竜物語 畑正憲 角川書店 野村芳夫
青海豹の魔法の日曜日 大原まり子 角川書店 大野万紀
犯人はダ・レ・ジ・ャ事件簿 横田順彌 大陸書房 白川星紀
こちらITT 草上仁 早川書房 野村芳夫
ガニメデの少年 ロバート・A・ハインライン 早川書房 野村芳夫
獣神都市(土竜の聖杯 PART3) 友成純一 廣済堂出版 白川星紀
アルベマス フィリップ・K・ディック サンリオ 岡本俊弥
大日本帝国スーパーマン 北杜夫 新潮社 岡本俊弥
ムーンフラッシュ パトリシア・A・マキリップ 早川書房 福本直美


 

 97号収録のレビューは、1987年8月10日から10月10日までの32冊(特集記事を含む)。

 今月の注目作は、ジュヴナイルSF特集(岬兄悟『亜空間からポストマン』、火浦功『大暴力』、谷甲州『ヴァレリア・ファイル2122年』、斉藤英一朗『T・T 大脱獄』、児島冬樹『夢幻界 オンディーヌ』、竹河聖『そしてゾンビがやって来る』、西谷史『神々の血脈 第2部 修羅の覚醒』、渡邊由自『スイート・マジック』、夢枕獏『キマイラ鳳凰編』、『SF冒険ミステリー封切劇場2』)、平井和正『第二次幻魔大戦 ハルマゲドン』、フレデリック・ポール編『ギャラクシー(上)』。

ジュヴナイルSF特集 星敬
幻魔大戦 第8集 ハルマゲドン 平井和正 徳間書店 鏡明
ギャラクシー(上) フレデリック・ポール他編 東京創元社 福本直美
愛と幻想のファシズム 村上龍 講談社 野村芳夫
姫神伝説T 中島渉 角川書店 星敬
地底の鰐、天上の蛇 倉阪鬼一郎 幻想文学出版局 星敬
迷宮1000 ヤン・ヴァイス 東京創元社 野村芳夫
魑魎の女王(下)(サイコダイバー9) 夢枕獏 祥伝社 喜多哲士
太陽の帝国 J・G・バラード 国書刊行会 岡本俊弥
神々の剣法(失われし者タリオン2) 田中光二+宮本昌孝 早川書房 大野万紀
雷神の怒り(ビースト・マスター2) アンドレ・ノートン 早川書房 白川星紀
ティー・パーティ C・L・グラント 早川書房 岡本俊弥
妖獣王子(明王魔王戦記3) 荒巻義雄 有楽出版社 野村芳夫
時間蝕 神林長平 早川書房 大野万紀
ソーラー・フェニックス リチャード・S・マッケンロー 早川書房 喜多哲士
原始人 筒井康隆 文藝春秋 喜多哲士
盗まれた記憶 イゴール&グリチカ・ボグダノフ 白水社 福本直美
マドンナ(血の本X) クライヴ・バーカー 集英社 鏡明
ハスターの後継者(ダーコーヴァ年代記9) マリオン・ジマー・ブラッドリー 東京創元社 白川星紀
ダークエンジェル メレディス・アン・ピアス 早川書房 白川星紀
裏切り砦の拳銃無頼(能なしワニ2) 中井紀夫 早川書房 鏡明
血飛沫電脳世界 友成純一 双葉社 岡本俊弥
魑魎伝説6 谷恒生 双葉社 大野万紀


 1987年全般については、1988年の4月号に総括記事が書かれている。執筆者は、国内が野村芳夫、翻訳が岡本俊弥。この年は全体のベストは選ばれず、代わって評者による推薦作を挙げた(アドベンチャーのベストは発行年月日1月〜12月で区分けを行うため、概ねその年の2月に出る4月号から翌年1月に出る3月号までが選考範囲となる)。

岡本による総括(同誌掲載分)

 恒例のSF界総括1987年のSF界を振り返ってだが、今年は例年のような形でのベストSF選出ができなかった。そこで、海外SFを展望する中で、注目作を挙げ、最後に評者の個人的な推薦作をまとめてみた。(上記)

 一言でいえば、八〇年代SFの“全貌”が窺える年だった。それが総てではなく、大枠に過ぎないにしても。一昨年来のサイバーパンクは、SF界では久々のムーヴメントであり、ニューウェーヴ以来の議論を引き起こした。その辺りの背景は、昨年の本欄でも書かれているので詳しく触れない。ただ、日本では、ファッションや純文学の世界にまで(曲解されてはいても)“サイバーパンク”が取り入れられ、奇妙なブームを生んだのは事実である。SFがこのような流行の発信源になりうるというのも、サイバーパンクの同時代性を示唆する証拠だろう。

 さて、その分類に入る作家では、グレッグ・ベア『ブラッド・ミュージック』+『永劫』、ルディー・ラッカー『時空の支配者』+『空を飛んだ少年』、ウィリアム・ギブスン『クローム襲撃』+『カウント・ゼロ』、ブルース・スターリング『スキズマトリックス』などなどが翻訳された。一昔前なら、いくら評判が高くても、日本で無名の新人が、ほとんどリアルタイムに(しかも大量に)訳されることはなかったろう。ただし、同じ範疇にくくられるといっても、以上の作家が似通った小説を書いているわけではない。

 ベアは、中ではもっとも従来のSFに近い。複雑怪奇な最新サイエンス(科学的に正しい云々は別問題)を道具に、スケールの大きな作品を書く。ただ、人物像などの描きかたに、意外に保守的な面も見られる。

 ラッカーは、ラファテイなど従来あったマッドSFの流れを汲む。“マッドサイエンス”を実践する作家でもある。

 ギブスン、スターリングは、さすがにサイバーパンクの本命作家らしく、様々な評価/議論を呼ぶ作品だった。ギブスンの短篇集は、この作者の多様性を知るうえで興味深い。ロックグループの「ジョイ・ディビジョン」を、ニューロマンサーの原点に書き始めたギブスンだが、『カウント・ゼロ』ではもともとの猥雑さが薄れた。収束せずに、これ以上発展していけるかどうかが問題だろう。その点では、スターリングの八方破れさには期待が持てる。逆に、複雑なだけで結論を出さなかったことに、批判的な意見もあった。一つ言えることは、小説のまとまりを重視した七〇年代作家に比べての、破天荒さの復権である。

 さて、サイバーパンク以外の八〇年代SFでは、オースン・スコット・カード『エンダーのゲーム』が出ている。この作品、不思議なことに、版元の書評欄、編集者、果ては解説に至るまで、みんなが疑義を差しはさむという扱いを受けている。一般の読者にとって、現代SFではもっとも読みやすい本のはずなのだが。

 一昔前の七〇年代作家では、マイクル・ビショップの『ささやかな叡知』が出た。宗教的なテーマを扱っている。もともと、重いテーマを得意とする中堅作家で、活躍の割には翻訳が少ない。

 同じく、翻訳が待たれていたジョン・ヴァーリイの短篇集『バービーはなぜ殺される』も出た。まだ古典には至らない“心地好さ”を身上にしたこの作品に、どれだけの親近感が得られるかが、読み手にとっての評価の分かれ目だろう。リアルタイムでない分、真の価値が問われる。

 それ以外では、まずなんといっても、『愛はさだめ、さだめは死』と『たったひとつの冴えたやりかた』のティプトリーである。一つの時代を形成した作家であり、これら短篇集は翻訳SFが百出した昨年でも、なおベスト1といえる。ティプトリーも十年前には同時代作家として評価されたのだが、日本での紹介はずいぶん遅れてしまった。

 コードウェイナー・スミスの長篇初紹介『ノーストリリア』も、遅れてきた作品の一つだろう。今や伝説と化した作家で、サイバーパンクを含めて、多くのアメリカ作家の発想はここに源を発する。もっとも、アイデアの割にあっけらかんとした展開だから、ピンとこない人もいるかもしれない。

 昨年は、サンリオ文庫が廃刊となった。営業上の理由からだという。しかし、既刊点数二百冊を越える文庫が、店頭から突然消滅する(しかも注文もできない)のは異常な事態である。そのサンリオから、キース・ロバーツの傑作『パヴァーヌ』が出た。オルタネート・ユニバーステーマが語られるとき、必ず言及される作品である。淡々と描かれるもうひとつの世界は、イギリスSFの風格を感じさせるものだ。同文庫からは、フィリップ・K・ディックの『ブラッドマネー博士』も出ている。古本屋を探してでも、買っておくべきべき本だろう。

 宮崎駿が表紙を飾った、ジェイムズ・シュミッツの『惑星カレスの魔女』、ホーカシリーズの二冊目、ポール・アンダースン&ゴードン・ディクスンの『くたばれスネイクス!』も、大傑作ではないけれど、楽しい注目作として加えておこう。

 以上見てきたように、昨年は翻訳の豊穣な年だった。本誌での調査では、144冊の翻訳書(新刊のみ、再刊は15冊)が出たことになる。これは、フィンクションのみの数値である。(なお、ゲームブックは25冊出ている)。この内訳には、95冊のSF、49冊のホラー・ファンタジイが含まれる。数字だけを見ると、SFは例年と大差がない。話題作が集中したせいだろう。1988年以降はサンリオが消えた分、淋しくなる。シリーズものでは、おなじみのペリーローダンが10冊、新顔のダーコーヴァも健闘して10冊刊行された。

 ファンタジイは、ホラーと半々の出版ペースだった。マービン・ピークの『ゴーメンガースト』(三部作の二作目、今年になって完結した)、マーク・ヘルプリンの現代ファンタジイ『ウインターズ・テイル』、八〇年代作家R・A・マカヴォイの『魔法の歌』三部作などが目立つ。

 ホラーでは、早川書房のモダンホラー・セレクションが、新たなブームを狙って出版された。新刊と既刊本の新装版からなる。ただ、同シリーズに入った『夜明けのヴァンパイア』(ライス)や、『ローズマリーの赤ちゃん』(レヴィン)、あるいは『暗い森の少女』(ソール)といった再刊本を凌ぐ新刊は、まだ現れていない。作品の質では、F・ポール・ウィルソン『マンハッタンの戦慄』や、イギリスでSF・ホラー界を通じて、有望新人と注目される“血の本”(全六巻の短篇集)のクライヴ・バーガー、ようやく日本での人気も上がってきた、スティーヴン・キング(上下を一冊と数えて6冊)らが優れている。

 その他の注目作としては、プロパー作家外のオルタネート・ユニバースもの、ジェリー・ユルスマンの『エリアンダー・Mの犯罪』、韓国の卜鉅一の描く『京城・昭和六十二年』などがある。特に後者は、ほとんどSFの紹介のなかった韓国に、標準以上の作品があることを教えてくれる。いわゆるSF作家でなくても書けるテーマなので、これからは増えてくるだろう。

 さらに、自伝風と称してはいるが、実はバラード“内宇宙”フィクションの集大成である『太陽の帝国』は、バラードの代表作『沈んだ世界』、『結晶世界』と比肩しうるもの。スピルバーグの映画化作品は、批評家大賞などを受賞しているけれど、やはり別物と考えるべきだろう。

 架空博物誌『鼻行類』は、ノンフィクションの体裁で出され(実際そのように勘違いしたレビューもあった)、これもまたもう一つの現実(鼻で歩く動物)を描いたもの。一般読書界で好評だった。

 最後に、大物作家の訃報。一昨年のハーバートに続き、四月のテリー・カー(50歳)、五月には衝撃の自殺を遂げた、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア(71歳)、そして九月のアルフレッド・ベスター(73歳)と、それぞれが亡くなっている。五〇年代からの作家は、大半が70歳代を越え、これからは訃報を多く聞く時代になるかも知れない。

 1987年の推薦作を上記に記した。(翻訳出版順、ファンタジイは割愛した)

1986-87年のSFアドベンチャー収録書評リスト(Excel版)