МУЗЕЙ Ф.М.ДОСТОЕВСКОГО

 館内の照明とカメラのオート・フォーカスのピントの不具合というか不完全さから、画像がぼけたものが多く、何が写っているのかわからない写真も多かった。よって、画像は少なくなるが、記念館の作家の生涯を紹介した博物館は、広さのわりに結構充実している。館の学芸員さんも話し掛ければ親切に答えてくれる、といっても私にはほとんど聞き取れなかった。
 案内ボードのロシア語がほとんど読めなかったので、ここからは詳しいコメントはほとんど無いが、せめて館内はこのような感じだということが伝わったら、と思う。
_
ドストエフスキーとアンナ夫人
___
 本には『死の家の記録』や『地下室の手記』とあった。
 棚の上段の左の写真は、作家の兄ミハイルの肖像だった気がするのだが…。
_
_
1847年に描かれた「ドストエフスキーの肖像」の写真(原画はモスクワの国立文学博物館にある)。描いたのは同じ工兵学校に学び、回想録『ドストエーフスキイの思い出』を残した画家コンスタンチン・トルトーフスキイ(1826−1893)。ドストエフスキーの肖像のなかで、唯一、明るい表情が見て取れる。
_
 左はドストエフスキーが『貧しき人びと』で文壇にデビューし、作品を激賞したベリンスキーやそこから知遇を得た人たちや当時の町並み、デビュー後の監獄に入るまでに出版した小説などの写真。
 右は、そしてシベリヤのオムスクへの徒刑のころに関わった人物たち(トボリスクで福音書を贈ったナターリヤ・フォンヴィージナなど)や徒刑場の労働の様子、看守、牢錠(右の写真の右下に切れて写っている)の写真だと思う。
__
_
ドストエフスキーが使用した机の一つ。机の上には発行した雑誌があった。
__
___
 ドストエフスキーはヨーロッパにいる間、賭博に熱中した。その激しさは恋人のことをほったらかしにすることもあれば、ホテルから食事の提供を拒否され、妻アンナの指輪を質に入れるほどまでになる。ドストエフスキーは賭け金を得るため、そしてどうにか生活するため、お金を知人や編集者から借金を重ね、人間関係を悪化させたことも少なくなかった。
 小説『賭博者』はその体験に基づいている。写真の右にはその『賭博者』を髣髴とさせるようにルーレットが展示されている。ケースで覆われているということは、ひょっとするとドストエフスキーが使用したものかもしれない。それにしては小さすぎるように思えたが…。
_
 ドストエフスキー記念館を出た途端、記念館の内側からドアの鍵がガチャリと閉まる音が聞こえた。私が記念館から出てきた姿を見て、館に入ろうとした男性がいたが、彼にとってはなんとも不運なことであった。
 記念館の外観を撮り、地下鉄に向かおうとすると、一人の男性から話し掛けられた。彼はタカリだったわけだが、私はそれに気づかず、あたふた返事をしていた。タカリだと判り毅然として断ると、彼は憤慨したように去っていったが、ちょっと間違うと危険だったかもしれない。もし相手が集団だったら本当に危なかった。モスクワの地下鉄構内で悪魔≠フ缶ジュースの女の子たちとのやりとりで得た教訓は、自分自身で生かしていなかったのだ…。
ありふれた光景
グリバエードフ運河通りにて
 劇場の開演は午後7時なので時間こそ余っていたものの、私は地下鉄で劇場に向かうことにした。左は劇場に行く途中に見たグリバエードフ運河と、南から撮ったスパス・ナ・クラヴィー聖堂である。運河を滑走する小型ボートや、欄干にて物思いにふける人、ずらっとならんだ違法?駐車の車、このあたりを訪れる多くの人、ペテルブルグではよく見られる光景だと思う。
 芸術広場に着くと、ムソルグスキーオペラ・バレエ劇場の傍の美人のウェイトレスがいたカフェに座り、おぼつかないロシア語で紅茶と大きいピロシキ2つ(計51ルーブル)注文した。そこで、添乗員さんと他の観覧希望者が通りがかるのを待つことにした。
 些末なことに思われるかもしれないが、私はガイドブックに載っていない普通のロシア人が普通に利用するカフェに一人で座り、のんびりすることを目標というか夢に描いていた。外国人ばかりが集団で座っているようなところもあるにはあるが、やっぱりどのような味に出会おうがその土地のものや雰囲気を感じてみたかったのである。人が少なくなった黄昏の芸術広場を眺めながら絵葉書に書きたいことを整理したり、何かしら物思いに耽っていた。正直に告白すると、このカフェにいたとき、とても充足したような気持ちが安らぐ感じがしたのだ。
 芸術広場に先に着いたのは私だったが、劇場には添乗員さんたちが先に入っていた。知らぬ間にタクシーで劇場正面に乗りつけて、入口にて私を開演直前まで待っていてくれたのだ。そのせいで添乗員さんはコートをクロークルームに預け損ねてしまい、私はちょっぴり罪悪感を覚えてしまった(笑)

レクイエムにつづく】     【もくじ】     【Contact