警察大隊について

<1938年~1939年>
 1938年時点での治安警察所属の警察官は62,000名で、大都市(人口10万名以上)を管轄する都市防備警察の警察官のうちの9,000名は各警察署単位で編成された警察百人隊(Porizei-Hundertschaften)=警察中隊に配属されていました。その後これらの警察中隊から3個中隊をまとめて警察訓練大隊(Polizei-Ausubildungsabteilungen)が編成され、各都市に10個の警察訓練大隊が編成されました。
・ベルリン
・ブレスラウ
・マグデブルク
・フランクフルト・アム・マイン
・エッセン
・ケルン
・ミュンヘン
・ドレスデン
・ハンブルク


 1938年3月、オーストリア併合に伴い警察中隊は大隊規模から連隊規模の5個行軍集団(Marschgruppen)としてまとめられ、オーストリアの各都市へと送り込まれました。また、1939年3月のチェコ併合の際にはベーメン・メーレン保護領の治安維持部隊として10個警察大隊により2個警察連隊が編成され、大隊ごとに主要都市に駐屯しました。


ベーメン・メーレン保護領(チェコ)の警察大隊
第1警察連隊「ベーメン」
Polizei-Regiment 1"Böhmen"

警察大隊I/1
警察大隊II/1
警察大隊III/1
警察大隊IV/1
警察大隊V/1
警察大隊VI/1

第2警察連隊「メーレン」
Polizei-Regiment 1"Mähren"

警察大隊1/2
警察大隊II/2
警察大隊III/2
警察大隊IV/2


ポーランド戦時の警察大隊
 1939年5月時点でドイツ警察は全国で163,000名の体制となり、治安警察の人員は1939年9月1日の時点で131,621名となっていました。

・都市防護警察、国家地方警察及び消防警察 121,236名
・警察司令部将校 10,255名
・医師 111名
・獣医 19名

 1939年夏、対ポーランド開戦に備えて17個の警察大隊が編成されました。警察大隊の任務は戦線後方でのポーランド兵の捜索、捕虜の移送、放棄された兵器や装備類の回収、後方地域での治安維持など多岐にわたり、戦線後方でのあらゆる任務に従事しました。

・第1警察集団(警察連隊)第14軍に配属
警察大隊I/1(のちの第92警察大隊)
警察大隊II/1(のちの第63警察大隊)
警察大隊III/1(のちの第171警察大隊)
警察大隊IV/1(のちの第81警察大隊)
警察大隊V/1(のちの第62警察大隊)

・第2警察集団(警察連隊)第10軍に配属
警察大隊I/2(のちの第101警察大隊)
警察大隊II/2(のちの第102警察大隊)
警察大隊III/2(のちの第103警察大隊)
警察大隊IV/2(のちの第42警察大隊)
警察大隊V/2(のちの第71警察大隊)

・第3警察集団(警察連隊)第8軍に配属
警察大隊I/3(のちの第41警察大隊)

・第4特別編成警察集団(警察連隊)ポーゼン軍司令部に配属
警察大隊I/4(のちの第61警察大隊)

・第5警察集団(警察連隊)第4軍に配属
警察大隊I/5(のちの第1警察大隊)

・第6警察集団(警察連隊)
警察大隊I/6(のちの第2警察大隊)
警察大隊II/6(のちの第3警察大隊)
警察大隊III/6(のちの第4警察大隊)
警察大隊IV/6(のちの第91警察大隊)

このほかに治安警察から8,159名の警察官が国防軍に野戦憲兵として出向し、軍務に従事しました。
・将校 280名 警察官(下士官クラス) 7,879名 合計8,159名


警察大隊の拡大
 1939年夏の時点で警察大隊は約80個大隊の新編成が計画されており、また1939年10月には野戦部隊の増強策の一環として警察大隊から「警察師団」が編成されることとなり、第1、第4、第5、第7、第12、第22、第31及び第52警察大隊の8個大隊のほか、合計16,000名の警察官が師団に編入されました。このため、不足する警察官の急速な拡大策として2つの方法がとられました。
1)既存の警察大隊から抽出した警察官を新設大隊の基幹要員とし、兵員は招集した予備警察官により補充・新編成することとし、この方法により補充・新編成された大隊は「警察予備大隊」と呼ばれました。
・1901年から1909年生まれ(30歳~38歳)の予備役登録者から91,500名を予備警察官として召集

2)新規募集された若い志願警察官から警察大隊を新編成。第251~第256警察大隊、第301~第325警察大隊の31個大隊がこの方法により新編成され、これらの大隊は本格的な警察戦闘部隊として期待されました。
・1918年から1920年生まれ(19歳~21歳)の志願者から9,000名
・1909年から1912年生まれ(27歳~30歳)の志願者から17,000名

 この他にもボヘミア・モラヴィア保護領(チェコ)とポーランド西部の旧ドイツ領地域の民族ドイツ人から6,000名の志願者が募集されました。これらの拡大策により1940年8月20日の時点でドイツ警察の人員は244,500名まで拡大されました。

 警察大隊の拡大に合わせて命名方も改正され、各大隊の番号は所属の軍管区(警察管区)に通し番号を組み合わせたものとなりました。ただしベルリン地区(第3軍管区)の大隊は例外で、第1からの第10までの大隊番号が割り当てられました。


治安警察 176,500名
  警察師団 16,000名
  野戦憲兵として陸軍に出向 8,000名
  警察大隊(100個大隊) 60,000名
  国家地方警察、都市防備警察及び消防警察 92,500名
予備警察官 56,000名
保安警察 12,000名


<1940年>
各地に派遣された警察部隊
■ポーランド総督府
 ポーランド占領後、第1次大戦前までドイツ領であった地域はドイツ本国に編入され、残りの地域は「ポーランド総督府」として統治され、さらに「ワルシャワ」、「ラドム」、「クラクフ」、「ルブリン」の4管区が設けられました。各管区にはそれぞれ1個警察連隊は駐屯することとなり、合計で13個警察大隊(将校219名、下士官・巡査8,245名)の警察部隊が派遣されました。

警察連隊「ワルシャワ」3個大隊
第6警察大隊
第8警察大隊
第72警察大隊

警察連隊「ラドム」3個大隊
第309警察大隊
第310警察大隊
第305警察大隊

警察連隊「クラカウ」4個大隊
第311警察大隊
第321警察大隊
第303警察大隊
第314警察大隊

警察連隊「ルブリン」3個大隊
第306警察大隊
第313警察大隊
第308警察大隊

■ダンチヒ-西プロイセン
 第1大戦後にポーランド領となったポーランド西部の地域とダンチヒ地区は、「ダンチヒ-ヴェストプロイセン帝国大管区」としてドイツ本土に編入されました。

7個警察大隊(将校63名、下士官・巡査3,500名)
1個騎馬警察大隊(将校4名、下士官・巡査270名)
1個警察通信大隊(将校4名、下士官・巡査390名)

■ベーメン-メーレン保護領
 1939年秋、ボヘミア・モラヴィア保護領(チェコ)で募集された民族ドイツ人により第201~第210警察大隊の10個大隊(将校144名、下士官・巡査5,401名)が新規編成され、警察連隊「ベーメン」と警察連隊「メーレン」に配属されました。各大隊はベーメン・メーレン保護領内の主要都市に分散して駐屯しており、各都市名を大隊名に冠して呼ばれました。

・警察連隊「ベーメン」6個大隊
警察大隊「ユングブンツラウ」(第201警察大隊)
警察大隊「クラッタウ」(第202警察大隊)
警察大隊「プラハ」(第203警察大隊)
警察大隊「タボル」、(第204警察大隊)
警察大隊「クラボノ」、(第205警察大隊)
警察大隊「パラドヴィッツ」(第206警察大隊)

・警察連隊「メーレン」4個大隊
警察大隊「イグラウ」(第207警察大隊)
警察大隊「オストラヴァ」(第208警察大隊)
警察大隊「ホレシャウ」(第209警察大隊)
警察大隊「ブルン」(第210警察大隊)

■ノルウェー国家行政区
 1940年4月から開始されたデンマークとノルウェーへの侵攻作戦によりデンマークは数時間で降伏し、ノルウェーも6月にはドイツ軍により占領されました。占領下のノルウェーは「ノルウェー国家行政区」となり占領地の治安維持部隊として6個警察大隊(将校73名、下士官・巡査3,270名)が派遣されました。

第105警察大隊
第3警察大隊
第9警察大隊
第91警察大隊
※次の2個大隊は12月以降に追加派遣されました。
第255警察大隊
第256警察大隊

■オランダ国家行政区
 1940年5月、フランスへの侵攻作戦の一環として開始された攻撃により8日間の戦闘でオランダはドイツ軍により占領されました。占領下のオランダは「オランダ国家行政区」となり、過酷な占領政策が実施され当初は5個警察大隊(将校58名、下士官・巡査2,420名)が派遣されました。

第65警察大隊
第66警察大隊
第67警察大隊
第68警察大隊
第69警察大隊

■エルザス-ロートリンゲン及びルクセンブルク
 1940年6月、フランスとの休戦条約は締結されたもののエルザス-ロートリンゲン地方の処遇については明記されておらず、ドイツ本土に「事実上」編入されエルザス地方(アルザス)のバ・ラン県とオ・ラン県は「バーデン大管区」に、ロートリンゲン地方(ロレーヌ)のモーデル県は「ヴェストマルク大管区」に併合され、ルクセンブルクは「モーゼルラント大管区」に併合されました。3個警察大隊(将校45名、下士官・巡査1,100名)が派遣されたとの資料もありますが、1940年までの間でも下記の警察大隊が交代で派遣されていました。
第51警察大隊
第54警察大隊
第55警察大隊
第63警察大隊
第66警察大隊
第74警察大隊
第122警察大隊


管区別警察大隊(1940年末現在)
第I警察管区(ケーニヒスベルク)
・第11警察大隊
・第13警察大隊
第II警察管区(ステチン)
・第22警察大隊
第III警察管区(ベルリン)
・第2警察大隊
・第3警察大隊
・第6警察大隊
・第7警察大隊
・第9警察大隊
・第10警察大隊
・第32警察大隊
・第33警察大隊
第IV警察管区(ライプチッヒ)
・第41警察大隊
・第42警察大隊
・第43警察大隊
・第44警察大隊
・第45警察大隊
第V警察管区(シュツットガルト)
・第51警察大隊
・第52警察大隊
・第53警察大隊
・第54警察大隊
・第55警察大隊
・第56警察大隊
第VI警察管区(ドルトムント)
・第61警察大隊
・第62警察大隊
・第63警察大隊
・第64警察大隊
・第65警察大隊
・第66警察大隊
・第67警察大隊
・第68警察大隊
・第69警察大隊
第VII警察管区(ミュンヘン)
・第72警察大隊
・第73警察大隊
・第74警察大隊
第VIII警察管区(ベウツェン)
・第81警察大隊
・第82警察大隊
・第83警察大隊
・第84警察大隊
・第85警察大隊
第IX警察管区(カッセル)
・第91警察大隊
・第93警察大隊
第X警察管区(ハンブルグ)
・第101警察大隊
・第102警察大隊
・第103警察大隊
・第104警察大隊
・第105警察大隊
・第106警察大隊
第XI警察管区(ハノーバー)
・第111警察大隊
・第112警察大隊
第XII警察管区(コブレンツ)
・第121警察大隊
・第122警察大隊
・第123警察大隊
第XIII警察管区(ビュルツブルク)
・第131警察大隊
・第132警察大隊
・第133警察大隊
・第134警察大隊
第XVII警察管区(ウィーン)
・第171警察大隊
・第172警察大隊
第XVIII警察管区(ザルツブルク)
・第181警察大隊
ベーメン・メーレン保護領(プラハ)
・第201警察大隊
・第202警察大隊
・第203警察大隊
・第204警察大隊
・第205警察大隊
・第206警察大隊
・第207警察大隊
・第208警察大隊
・第209警察大隊
・第210警察大隊
全国区
・第251警察大隊
・第252警察大隊
・第253警察大隊
・第254警察大隊
・第255警察大隊
・第256警察大隊
・第301警察大隊
・第302警察大隊
・第303警察大隊
・第304警察大隊
・第305警察大隊
・第306警察大隊
・第307警察大隊
・第308警察大隊
・第309警察大隊
・第310警察大隊
・第311警察大隊
・第312警察大隊
・第313警察大隊
・第314警察大隊
・第315警察大隊
・第316警察大隊
・第317警察大隊
・第318警察大隊
・第319警察大隊
・第320警察大隊
・第321警察大隊
・第322警察大隊
・第323警察大隊
・第324警察大隊
・第325警察大隊


もらいもの警察官写真の考察


警察大隊の標準編成(1942年)

大隊本部 16名
通信小隊 19名
オートバイ小隊 35名
装甲車小隊 17名
3個警察中隊(各中隊は150名) 合計450名
対戦車砲小隊(37mm対戦車砲×3門装備) 26名
歩兵砲小隊(75mm歩兵砲×2門装備) 26名
輸送段列 97名
衛生分隊 7名
合計693名


警察連隊の標準編成(1942年)

連隊本部 22名
  自動車化通信中隊 57名
  オートバイ中隊 124名
  工兵中隊 35名
3個警察大隊(各大隊は700名):第1中隊~第12中隊
第13(歩兵砲)中隊 163名
第14(対戦車砲)中隊 82名
第15(装甲車)中隊 194名
修理工場中隊 13名


2016.5.5 新規作成

泡沫戦史研究所http://www.eonet.ne.jp/~noricks/