音楽管理・再生ソフト TuneBrowser
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/ 2024.12.25
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私がPCトランスポートで使っているソフトウェアは、TuneBrowserです。
数年前に幾つか試したなかで、私のパソコン環境では、いちばん飾らない自然な音だったのです。
付け加えるなら、背中を押したのは、開発者のTiki氏が主宰されているフォーラムでした。
ユーザーからの質問に対する回答が丁寧で、機能に関する要望にバージョンアップで応えるなど、誠実なやり取りが好印象でした。
また、Tiki氏の過去のブログにはGOLDMUNDやB&Wの記事があり、TuneBrowserの音の背景を垣間見たように思えて、最後のためらいが消えたのです。
TuneBrowserには、私がPCトランスポートに求める機能がすべて揃っています。
しかも、インストールすれば直ぐに使える。
この簡便さはたいへん有り難いものです。
一方で、文字列がぎっしり並んだ設定ページには、図書館で専門書を集めた書架の前に立ったときのような、近寄りがたい一種の威圧感を感じます。
ユーザーが自分の使い勝手に合わせて自由に変更できるよう、詳細に及ぶ設定項目がぎっしり並んでいるので、取っつきにさを覚えたのです。
でも、ブラウザ形式にありがちな、階層が深くて、どこに何があるのか解らない苛立ちはありません。
いつの間にか慣れて、変更したい項目が直ぐに見つかるテキスト形式の合理性に、今では納得しています。
TuneBrowserは開発が進行中で、バージョンアップが頻繁です。
頻繁なので、一回当たりの仕様変更は抑え気味です。
その分、万が一不具合が出たときの修正も迅速です。
このあたり、Tiki氏の几帳面さがうかがわれるような気がします。
このバージョンアップ、Tiki氏のコメントによれば、たいてい音質と関係がない機能の改良です。
しかし、音楽再生ソフトウェアとパソコン環境の相性は繊細で、音質はときに大きな変化を見せるのです。
意図されたものでないだけに、変化は気まぐれです。
けれども私は、この変化を肯定的に受けとめています。
この現象を逆手に取れば、好みの音に近づける手段として利用できる場合があるからです。
音質に影響が表れるのは、おそらく、Windows OSが動作する際に生じる時間的・電気的な微小ノイズによる、微妙な乱れが原因でしょう。
Windowsは、音楽再生ソフトウェアを他のタスクと同様に切り刻んで処理しています。
TuneBrowserのバージョンアップで実行プログラムが変化すると、中断されるタイミングが変化し、微妙なはずの変化が音質にまで及び、これを相性として感じているのだろうと推測しています。
ちなみに、ユーザーごとにパソコン環境は多様なので、相性の出方もそれぞれ異なっているでしょう。
だとすれば、私が感じているバージョンごとの良し悪しも、おそらく他の人の判断とは一致しないのです。
厄介なのは、日常使いのパソコンの宿命とも言えるWindowsのメジャーアップデートです。
先日の24H2では、これまである程度の一貫性が認められた、TuneBrowser各バージョンの序列が覆りました。
改めて比較すると、幸いにも最近リリースされたAVX2 V5.6.0の音が際立って良いとわかり、安堵したのですが、一年後には次のメジャーアップデートがやって来ます。
これが毎年繰り返されるのですから、ほとんど災害です。
そんなWindowsの問題を解決することはできませんが、軽減が期待できる設定項目が、TuneBrowserには用意されています。
TuneBrowserの再生、デコード、制御、ウィンドウの4つの処理それぞれに、別々のCPUコアを割り当てることができるのですね。
この設定は、効果があるがゆえに裏腹の弊害を伴いますが、正しく扱えばかなり効果があります。
Windows専用ソフトウェアを標榜するだけあって、TuneBrowserの面目躍如と言ったところでしょう。
思えばこれまで、オーディオの華といえばスピーカーやアンプといったハードウェアと信じて疑わずにきました。
ところが、TuneBrowserを使ううちに芽生えたのは、ソフトウェアもまたオーディオを構成する重要なコンポーネントであるという認識でした。
TuneBrowserは、まさかこの設定項目で、と疑いたくなる変更で、音の表情を変えることがあります。
そのような経験は一度や二度ではありません。
このソフトウェアには、道具の奥深さがあります。
つまり使いこなしが必要で、その追究に応えてくれる性能を秘めているわけです。
使うほどにそう思うのですね。
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