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遅刻戦隊オクレンジャー
第6話「留年の危機!」


 怪人はみるみる巨大化し、11階建てのビルとほぼ同じ高さまで達した。
「で、でかい!!おい、長官!!」
「分かっておる。ここからでも見えるほどの大きさになったわい。急いで鳥越にレモンをそっちに送り届けさせる」
「どういうことだ?」
「敵の怪人が巨大化したら、戦隊ヒーロー側は何を出す?」
「もちろん、ロボットだぜ!!」レッドが叫んだ。
「巨大ロボット!?」
 レモン、ピンクハウスは声をそろえて言った。バイオレットはただ、その成りゆきを見ている。
「そうだ。今からレッドたちの方に送るロボットは3人乗りだ。あの2人とレモンで搭乗する。鳥越君、君はバイクでレモンを送ってくれ」
「はっ!!」
「あの・・・・男の子だけなんですか?」バイオレットが発言した。
「いや、心配無用。君達用のロボットもちゃんとある。」
「・・・・その方が心配なんですが・・・・」
 ピンクハウスが不安げに呟く。
「あたしたち、ロボットの乗り方なんて教わってないんですけどぉ・・・・」
「いらん!! 戦隊モノでロボットの操縦訓練をしているシーンなどない!! だからすぐにでも動かせるはずだ」
「あの・・・・棄権していいですか・・・・」
 おずおずとピンクハウスが言いかけた時、池里はレッドと通信中だった。
「そうだ、レモンが到着したら3人で呼ぶんだ、『オクレキング!!』とな!!」
「来たぜ、イエローだ。よし、ブルー、呼ぶぞ!!」
「僕はアクアマリンで彼はレモンだ!!間違えるな!!」
「そんなのはどうでもいい!!いくぞ、せ〜のっ!!」
「オクレキ〜ングゥ!!!!」
 不覚にもレッドと声がハモってしまう2人であった。
 ・・・・1分後。巨大化した怪人は街並をことごとく破壊していた。
「おい、長官!!来ねぇじゃねぇか、ロボットがよ!!普通、呼んだら雲の間からキラリと光ってすぐに現れるもんだろう!?」
「馬鹿言ってはいかん。お前達がオクレキングを呼ぶ、そしたらわしが槍杉博士の所にオクレキングの出動要請を出す。それを受けて槍杉研究所はオクレキングのエンジンを発動させ、温まってからカタパルトに移動、目的地まで遠隔操作してここまで持って来るのだ。そう簡単に巨大ロボットなど出撃できん!10分以内に来れば奇跡だ」
「くそ、妙な所で現実的なおっさんだな」
「どれ、わしらも呼ぶかの、ピンク、バイオレット」
 池里は女子2人に向かって言う。
「あたしたちは2人で乗るんですか?」
 もう諦めて乗る気になっているピンクハウス。
「いや、わしも乗る」
「ええ〜っ!?」
 ピンクハウスは露骨に嫌な顔をした。
「いやか」
「え、い、いいえ、そんな。・・・・でも、どうしてです? 博士が直々になんて」
「両手に花だからじゃ」
 池里は答になっていない答を返すと、手を高々と振り上げた。
「さぁ、みんなで声をそろえて叫ぶのだ、『オクレクイーン!!』と!!」
「オ・・・・オクレ・・・・クイ〜ン!!」
 ピンクハウスはもうやけくそだった。バイオレットは意外にも楽しそうだった。
 その約5分後、空の彼方から巨大なロボットが姿を現した。
 そう、それこそ鋼輝くボディー、我らのオクレキングの登場だ!!
 オクレキングはレッド、アクアマリン、レモンのいる地点まで来ると、下降して着地した。その振動で倒れる3人。道路にあった車が1台、犠牲になった。
「よし、乗り込むぜ!!」
 レッドが叫ぶと、オクレキングの頭部から光線が出て、3人を包んだ。そのまま3人は頭部に運ばれ、操縦席に乗り込んだ。
「全く、現実的か非現実的か分からないロボットだな」
 アクアマリンがグチる。レモンは少しシートが狭いようで、座るのに苦労していた。レッドは中央のシートに座し、準備万端だった。
「ようし、少し遅れたが怪人め!! 借りは返してくれる!!」
 レッドは「少し」と言ったが、既に市街地は廃虚と化していた。
「聞こえるか、レッド」
 池里から通信が入った。
「われわれも今、オクレクイーンに乗り込んだ。そっちに向かう」
「了解!!そっちが着くまでには決着が付いてるかも知れないぜ!!ところで、こいつの武器を教えてくれ!!」
「よし、では言うぞ。『戦慄オクレパンチ』と、『炸裂オクレキック』だ」
「待てぃ!!そんなごく普通の技しかないのかよ!!」
「最初から必殺技を出してしまっては面白くなかろう? さ、我々のオクレクイーンの技は、『悩殺バストバスター』と『悶絶レッグサンド』だ。どっちがいいかの?」
「どっちもヤだ!!なんか、セクハラっぽい技ばっかりじゃないですかぁ!!ほら叶も何とか言ってやってよ!!」
 バイオレットは寝ていた。オクレクイーンのコクピットは暖かいらしい。
「・・・・1人足りなくても操縦できるんですか、これ」
「わし1人でも操縦できるわい。お前達は必殺技の時に振り付けと掛け声を出せばそれでいい。あ、あと攻撃を受けた時は大袈裟にもがき暴れるのを忘れるな」
 そうこうしている内にオクレクイーンも(元)市街地に到着した。2体の巨大ロボットが揃ったのだ。
「何をチンタラやっとるんじゃ、早く倒さんと被害が広がるばかりじゃぞ!!」
「それが、変なんだ。欠陥品だぜこのロボット!!」
「なにぃ、どこがじゃ!?」
「パンチやキックを出そうとするんだが、やけに反応が遅いんだ。だから、敵に避けられてしまうんだ。伝達系統がおかしいんじゃないのか?」
「ふむ」
(なるほど、こんな所にもCSPを引き出す工夫がなされているとは・・・・さすがは槍杉博士。遅れた分、パワーは上がっているハズだ)
「急ぐぞ、こいつらの充電しているエネルギーは10分ほどしか保たないぞ」
「なにぃ!?たったそんだけかよ!?」
「馬鹿言え、巨大ロボットで10分も戦う戦隊モノなどない!!CMが終わってすぐ戦わねばならんではないか」
「何でもかんでも戦隊ヒーロー番組を比較対象にしないで欲しいな」
 アクアマリンは憮然とした表情でグチった。
「では、行くぞ!!我らの未来の為に、戦え我らのオクレンジャー!!」
 池里長官の声は外部マイクを通して廃虚の街にこだました。


次回予告
「良い子の諸君、私が池里隼人だ。外から帰って来たら手を洗えよ。さて遅刻戦隊のピンチに2大ロボットがついに合体するのだ。おっと、これ以上は次回のお楽しみだ。次回、遅刻戦隊オクレンジャー『勝手にしなさい』にチェーンジ、オクレ!!おっと、私は変身 しないのだったな」


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