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遅刻戦隊オクレンジャー
第5話「内申書に響くぞ!!」


 レッドとアクアマリンは競争をしつつ、市街地に足を踏み入れた。そこは情報によると侵略者に襲われていたはずだが建物やその他、街のどこを見渡しても壊された所はなく、いつもと変わりない街並みだった。
 ・・・・ただ人影が見えないことを除いては。
「どういうことだ?みんな宇宙人に消されちまったのか!?」
「いや、あれを見ろレッド!!」
 レッドはアクアマリンの指した方向を見た。そこには宇宙船と、それに向かって行列をなしている人々の姿があった。
「・・・・操られているのか・・・・宇宙船に乗せられているようだな」
「助けるぜ、行くぞ!!」
「待て、レッド!!」
「今度は何だ!?」
 アクアマリンが注意を向けたのはマントを身につけ、突起物のついたヘルメットをかぶり、シルバーのキラキラした衣装を着た、いかにも「敵の幹部」然とした人物だった。2人がその人物を見ると同時に、向こうも気づいたらしい。
「誰だ?・・・・他の者とは違う格好だな」
「しまった、見つかったぜレッド!!」
「くぅぅぅ・・・・か、感動・・・・」
「な、なんだお前、何を感動している!?」
「だってよぉ、はるか彼方から来た侵略者が、初対面の俺たちに日本語で、日本語で、だぜ!?話しかけてるんだよ、これぞ特撮ヒーロー物じゃねぇかぁ!!」
「・・・・お、お前・・・・」
「ここへ降りた時、地球人の頭から知識を吸収させて貰った」
 敵の幹部らしき格好をした人物が丁寧にも答えてくれた。
「おい、聞いたか、あのご都合主義的な敵さんの能力!!くぅぅ〜!!」
「レッド!!みんなを救うのが先だ!!感動は後でしろ!!」
(ったく、どっちがリーダーだ!?)
 2人は宇宙船に乗り込んで行く行列に近寄って声をかけた。が、全く反応はなくただ前を向いてひたすら歩いて行く。
「駄目だぜ・・・・完全に操られている。おっ、おい、佐藤!!」
「知り合いか?」
「よく見れば、この後ろは俺のクラスメイトたちじゃねぇか。おい、相田!!」
「ふむ、奴の知り合いか」
 それを見ていた敵の幹部らしき男。
「このセメオトス帝国の英雄、ゴーダッツ様が手を汚すまでもない。あいつらをけしかけてやるか」
 説明的なセリフを言い、ゴーダッツはレッドのクラスメイトの方に手を掲げた。
「さぁ、そいつらは敵だ!!」
「なんだと!?」
 次々とレッドとアクアマリンに襲いかかるクラスメイトたち。オクレンジャースーツのおかげであまり痛くはないが、かなり鬱陶しい。
「くそ、こいつらが相手じゃ殴るわけにもいかねぇ!!どうする、アクア・・・・」
 レッドはアクアマリンの方を振り返って唖然とした。クラスメイトたちが次々と血飛沫を上げて吹っ飛んでいたのだ。
「お、おい、容赦ないなお前!!」
「鬱陶しいからな。特に男は」
 見ると、アクアマリンが殴っているのは男子だけだった。
「さ、さすがだ・・・・。・・・・!!なっ・・・・」
 レッドは信じたくないものを見た。襲い来る人々の中に、剛が密かに憧れていた新米教師の姿があったのだ。
「雪子・・・・先生・・・・」
(だめだ・・・・先生を傷つけたくない!!来ないでくれ!!尊敬する先生を殴れるはずがないぜ!!)
 その時、体格の良い男が拳を振り上げた。体育教師の小野田だった。
「てめぇは殴れる!!」
 レッドのアッパーが決まり、小野田は血飛沫をまき散らしながら遥か彼方に吹き飛んで行った。
「む・・・・あの者たち、少しはやるようだな」
「フフ、ゴーダッツよ。何をチマチマとやっておる」
 空中が光ったと思うと、そこには金色のマントと甲冑を着た男が現れた。
「兄さ・・・・リャクダッツ大臣!!」
「早くしろ、シンリャック大帝がおまちかねだ。これを使え。」
 リャクダッツが手を掲げた瞬間、ボンという音と共に怪人が現れた。
「さぁ、あの目障りな奴らを始末しろ!!」
「おい、しっかりしろレッド!!」
「だめだ、雪子先生に手は出せねぇ!!俺はあの人がいるから、遅刻が決定的な時でも登校してたんだぞ!!窓野雪子21歳、俺の女神だ!!」
「・・・・似合わないセリフを・・・・」
 アクアマリンが叱咤しようとした時、通信機が鳴った。
「アクアマリンだ」
「おお、翔か。どうじゃ、街の様子は」
「丁度いい、聞いてくれ」
 アクアマリンはレッドの様子を報告した(チクった)。
「そうか、さすがはレッド。敵に操られる憧れの君と戦うとは、戦隊ヒーローの鏡じゃのお。おい、翔、お前には敵の幹部に成りはてた昔の彼女とかはおらんのか」
「何で宇宙の果てから来た侵略者の集団に元恋人がいるんだ!?・・・・っと、馬鹿な話をしている場合じゃなさそうだ。怪人が現れた」
「なに、怪人とな!!わしも見たいぞ、今すぐそっちに行く!!」
「レッドはどうするんだ!?」
「分かった分かった。おい、レッド」
 池里はレッドの通信機に回線を開いた。
「操っている奴を倒せば術はとけるはずじゃ。そいつを倒せ、ゴウよ!!」
「操ってる奴・・・・よし、分かったぜ!!そうだ長官、怪人を倒すためには武器がいる。何かないのか?」
「それなら『オクレーザーブラスター!!』と叫んでみろ。掌に銃が現れる」
「よし!!」
「レッド!!怪人がお前に狙いをつけたぞ、気をつけろ!!」
 見ると、怪人がこちらに向かって突進してくる。奴は飛び道具を持っていないらしい。
「いでよ、オクレーザーブラスター!!」
 かけ声と共に、掌にはなにやらもやもやしたものが集まってきた。これがやがて実体化し・・・・・・・・なかなかしなかった。
「おい、なんだこれ、不良品か!? おい、こら、間に合わねぇ・・・・」
 ものすごい衝撃と共にレッドの体は吹き飛ばされ、ビルの壁に激突した。
「てて・・・・」
 オクレンジャースーツの防御力がなかったら命はなかったであろう。レッドが手を見ると、オクレーザーブラスターが実体化していた。
「遅いんだよ、てめぇは!!」
 レッドは怪人に狙いをつけて引き金を引いた。軽いショックだったが、放出されたエネルギー弾はその銃口からは想像もつかない程の威力で怪人を貫いた。
「す、すげぇ・・・・」
「さすがは槍杉博士。出現を遅らせることによってレッドのパワーを増幅させ、それをエネルギーに変えて放出するとは・・・・これぞCSPの力・・・・」
「なにがさすがだ!?1歩間違えば死んでるぞ俺!!」
「ヒャッヒャッヒャ、やるのぉ」
 空中にリャクダッツが浮かんでいた。杖を怪人にかざしたかと思うと、杖はまばゆい光を放って、怪人を包んだ。そして・・・・。
「か、怪人が巨大化していく!?」
「なに、ついに巨大怪人のお出ましか!!」
 通信機の向こうで池里が楽しそうに声をあげていた。


次回予告
「・・・・・・・・あ、ごめんなさい、清瀬叶です。あの、何でしたっけ・・・・?あ、次回予告でしたね。えっと、大きなロボットが出てくるの。それでね、・・・・あぁ、ここ、何だかあったかい・・・・。次回、遅刻戦隊・・・・『留年の危機』・・・・むにゅ〜・・・・。すやすや」


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