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遅刻戦隊オクレンジャー
第4話「放課後、トイレ掃除!!」


「ようし、早く変身しようぜ!!」
 剛が1人、はしゃいでいた。
「まぁまて、ゴウ。戦隊モノは、やはり5人そろって変身してこそ価値があると思わんか」
「た、確かに長官の言う通りだぜ・・・・だが、既に敵は攻めてきているんだろう、悠長なことは言ってられないハズだぜ!?」
「うむ、ではガンスケと叶を通信機で呼びだそう」
 ガンスケとはオクレレモン、岩之介のことである。ちなみに通信機とは、何のことはない、この前のミーティングで配った、ただの携帯電話だ。
「は、は、はい、どちら様・・・・ですか・・・・」
「どうしたガンスケ!?まさかもう敵にやられたのか!?」
「い、いえ、その・・・・そちらへ向かっているのですが、坂が・・・・きつくて・・・・体力の、限界!!」
 いきなりゴトッという音がした。携帯電話を落としたようだ。
「おい!!千代の富士みたいなことを言って・・・・どうした、おい!!」
「どうしたんだ!?」池里のただならぬ様子に剛が声をかけた。
「・・・・どうやらここへくる途中の坂でブッ倒れたようだ・・・・見に行こう。お、ついでに叶君にも・・・・」
 池里は叶に電話をしたが、一向につながらない。1分程して、ようやく叶が出た。
「はぁい・・・・」
「叶君!!今、どこだね!?」
「芝生・・・・の上ですぅ。グラウンドに行こうとして・・・・気持ちよさそうだったから横になったら・・・・あ、寝ちゃってたんだぁ」
「おいおい・・・・」
(ここに来る途中の芝生・・・・あそこしかない。ガンスケも近くにいるな)
 池里、鳥越、剛、翔、麗華は残る2人の救出(!?)に向かった。

「・・・・そろったな。ではみんな、こうして変身ブローチを持て!!」
 5人は池里のとったポーズ通りにブローチをかかげた。
「いくぞ、チェ−ンジ、オクレ!!」
 かけ声と共に5人の体が光につつまれる。
「おおっ、さすがは槍杉博士!!これぞ変身シーンの王道だぁ!!うぅむ、この光の中で今ごろ、麗華君は服を脱いでいるのだな・・・・」
「長官!!変な想像しないで下さい!!」
 鳥越が突っ込む。
 発光が終わると、5人はいかにもなコスチュームに変身していた。
「素晴らしい!!」
「うおお、変身したぁぁ!!感動だぜぇぇ〜!!」興奮するオクレレッド。
「まるで道化だぜ・・・・」不服なオクレアクアマリン。
「体型は変わらないんだ・・・・」そりゃそうだろ、オクレレモン・・・・。
「あのぉ、スカート短いんですけどぉ・・・・」と、オクレピンクハウス。
「それは戦隊モノのヒロインとしては当然だが」
 池里は「何をいまさら」という顔でたしなめる。
「でもぉ、これじゃ見えちゃいます・・・・」
「心配するな、どうせ中は見えてもいいパンツだ」
「それが、違うんですぅ〜!!」赤くなって反論する麗華。
「何だとっ!?どれ、見せてみなさい!!」
「キャー!!」
 鈍い音がして、池里は5mほど吹っ飛んだ。そう、オクレンジャーのパワーは常人の数十倍になっているのだ。
「さ、さすがは槍杉博士・・・・私の望むことをちゃんと分かっている・・・・」
 もはや本来の目的が何であるかよく分からない状態の池里だった。

 池里は唇から血を流し、朦朧とする意識のなかで鳥越の声を聞いた。
「た、大変です!倒れてる場合じゃないですよ!!」
 通信回線を使って集めた鳥越の情報によると、既に世界各地は侵略者の手に落ちたという。
「おい、長官!ブッ倒れてる場合じゃないぜ!!」
(剛・・・私は好きで倒れてるのではないぞ・・・・)
 池里は血を垂らしつつなんとか起きあがった。
「ゆけ、オクレンジャー!!日本の平和を守るのだ!!」
「・・・・その顔で言われても・・・・」
「聞こえてるぞ、オクレレモン」
 池里がレモンを睨む。眼が腫れているので迫力があった。
「レッド・・・・こっちへ」
「ん?」
 手招きされたレッドが池里に近寄った。池里はレッドの耳に近づき、
「リーダーとしての任務を与える」と、超真面目な声で言った。
「な、なんだ」
「・・・・後でピンクのパンツの色を報告しろ」
「あぁ!?・・・・分かった、その命令、しかと心得たぜ長官!!行くぞ、みんな!!」
 言うなり走り出すレッド。その背中に向かってアクアマリンが叫んだ。
「おい、勝手な奴だな!!」
「ふっ、ついてくる自信がないんだろう!!」
「なにぃぃ!?よかろう、僕の脚を見せてやる!!」
 アクアマリンの猛烈なダッシュ。
「凄いな、奴らは。さ、他のメンバーも続け!!」
「あの・・・・僕、まだ息切れが・・・・」
 レモンが胸を押さえつつ喘いだ。とても走れそうにない。
「あたし、こんな格好じゃ行かない!!」
 ピンクハウスもだだをこねる。バイオレットは何を考えているのか分からないが、ぼ〜っとしている。
「鳥越、例のあれだ!!」
「はっ、あの搬入が遅れて今日届いた、あれですね」
「あれ・・・・?」
 3人の前に現れたのは3台のバイクであった。うち2台はサイドカーが付いている。戦隊物特有の、ハデハデなカラーリングだ。
「あいつらが先に行ってしまったので、見せ損ねた。これならあいつらに追いつけるハズだ。さぁ、出撃!!」
「あたしは行かないって言ってるのにぃ!!」
「で、でも長官・・・・」
「何だ、レモン」
「僕たち、免許を持ってないんですけど・・・・」
「かまわん。平和の為だ」
 スッパリ言い捨てる池里。
「それからピンク。帰って来たら好きな服を買ってやるから行ってくれ」
「ほんと!?じゃ、5着ね」
「む・・・・よかろう」
(スーツやマシンの開発費に比べれば安い物・・・・経費で落とそう)
 3人はそれぞれバイクに乗り込んだ。
(ミニスカでバイクにまたがるとは・・・・燃えるな。あれで走り出したら、絶対見えるぞ。よし、前に回って見送ろう)
 がっしゃぁぁぁぁ・・・・ん・・・・。
「むうっ!?」
 池里の希望虚しく、免許のない彼らの乗ったバイクはお互いにぶつかりあい、走行不能となった。馬力が強いだけにそれは「大破」としか言いようのない壊れ方だったが、幸いにもスーツの強固さで彼ら自身に怪我はなかった。
 それが最高時速400kmのマシンの華々しいデビューであった。


次回予告 「はぁい、桃山麗華ですぅ。あたしもう、やだぁ。だって、変な敵の幹部みたいなのが出てくるし、怪人なんて、巨大化しちゃうんだからぁ。スカート短いし・・・・やんなっちゃう。次回、遅刻戦隊オクレンジャー『内申書に響くぞ!!』に、チェーンジ、したくなぁい!!」

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