次ページへ    前ページへ

遅刻戦隊オクレンジャー
第3話「校庭10周!!」


 池里隼人長官があらましをざっと話し終えた時、リーダーに決まった剛が質問した。
「で、その敵ってのはどこにいるんだ?外国か?」
「今、この地球に向かっておる。君達には来る決戦の時に備えて、戦士としての特訓をして貰う。鳥越君」
「は、これですか」
「うむ」
 池里は鳥越の差し出した物を受け取った。
「これで君達は遅刻戦隊に変身できるのだ!!」
「おおっ!!」
 池里の手に握られていたのは光輝くブローチのようなものだった。
「これから君達にこれを手渡す。順番に取りに来てくれ。まずレッド」
「おうっ!」
 剛は変身アイテムを受け取った。
(やっぱ、これだぜ!!憧れの「変身」ができるんだなぁ〜くうっ、感動だぜ!!おまけにリーダーのレッド!!フフフ、気持ちいいぜ〜!!)
「次、ブルー」
「アクアマリンと言ったはずだ」
「あ、ああ・・・・期待しておるぞ」
(戦隊だと?とんだ茶番だが・・・・正義のヒーローというのも悪くない。そう、正義の味方がある日そのマスクを取ると、正体は美青年だった・・・・ふむ、いいシチュエイションだ。これで人気が爆発すれば・・・・)
「次、イエ・・・・いや、レモンだったか?」
「は、はひっ!!」
(こ、この僕が正義の味方かぁ・・・・弱い者の味方・・・・僕が本当になれるんだなぁ、なんて夢のようなことだろう!!きっと悪の侵略者からこの地球を守ってみせるぞ!!)
「次、ピンク」
「あぁん、ピンクハウスがいいなぁ〜」
(あら、このブローチ、おしゃれじゃないの〜。うふっ、けっこういいセンスしてるわ。そうねぇ、正義のヒロインってやっぱ人気の的よねぇ〜。あぁみんなの視線が痛ぁ〜い)
「最後にバイオレット」
「は〜い」
(クーラーきいてないのかなぁ・・・・ちょっとあったかくなってきたみたい・・・・眠いよぉ・・・・)
 そんなこんなで全員に変身ブローチが行き渡った。
「でよ、長官!どうやったら変身できるんだ?早く教えてくれよ!!」
「焦るなゴウ・・・・。実は槍杉博士に頼んでいたコスチュームが遅れていてな。まだそれには着脱能力はあるが、スーツは入っておらん」
「えぇっ、そうなのかよ!」
「スイッチを押すと、現在着ている服が収納され、オクレンジャーのスーツが出てきて自動的に体に装着される仕組み(になる予定)だ。だから、今は服が収納されるだけでスーツは出てこない」
「じゃあ、今は脱がされるだけかよ!!」
「そうだ。何なら今、スイッチを押してくれてもかまわんぞ、麗華、叶」
「やだぁ、長官のえっちぃ」
 麗華が体をクネクネさせる。
「全く、オヤジだなぁ長官!」
 剛が池里の背中にツッコミを入れる。
「ぼ、僕は・・・・」
 あたふたする岩之介。
「全く、下品な奴らだ」
 アメリカンな「やってられんわ」ポーズをとる翔。
 既に寝ている叶。
(こんなので地球は守れるんだろうか・・・・あれが侵略者のUFOでないことを祈ろう・・・・)
 そのやりとりを見て、鳥越はますます不安になるのだった。

 池里天文台の裏にはグラウンドがある。そこに2つの人影があった。
「あとの奴らはなにをしてるんだ?特訓の初日だってぇのに」
 徳大寺剛である。ジャージ姿で、やる気充分である。
「そうは言うが、お前も30分遅れてきたじゃねぇか」
 こちらはサッカー部のユニフォームの青山翔。
「言い出しっぺがそれではな。まして仮にもリーダーだろうが」
「うるせえ、お前は家が近いから早く来れたんだろう」
「あぁ、約束の時間この僕だけか。全く、時間にルーズな奴らは困るよ」
 そこに池里長官が現れた。
「こら、お前も15分遅れて来ただろうが。適当なこと言うんじゃない」
「ち、長官・・・・いや、13分でした!!」
「同じだ、コラ、よくもデタラメ言いやがったな!!」
「なにぃ、遅れて偉そうなことを!!」
 かくして、とっくみあいの喧嘩になってしまった。それを見て池里は思わずニヤリとした。
(いいぞいいぞ、仲間同士のいざこざ、これでこそ戦隊モノというもの)
「こんにちはぁ」
 そこに桃山麗華が現れた。ショートパンツから伸びた脚が美しい。
「おおっ!!」
 思わず喧嘩をやめる2人であった。
「ちちち長官〜!!」
「むっ、どうした鳥越君!!麗華君が来たからと言って、そんなに慌てて登場することもあるまい。まぁ気持ちは分からなくもないが・・・・」
「違いますよぉ〜!!」
 文字通り、転がるように走ってきた鳥越。
「う、宇宙人が、ほ、本当にせ、せめて来たんですぅ〜!!」
「なにぃぃぃ!?」
 鳥越の報告によると、飛来した宇宙船は確認されただけでも数十隻。既に世界各地の空に現れているという。TVから流れる放送はどれもパニックに陥っていた。各国の軍隊も宇宙船に歯がたたないという。
「これでこそ我らオクレンジャー結成の意味があるというもの!!」
「何を1人で燃えているんですかぁ〜!!」
「1人じゃないぞ、鳥越君」
 池里は剛を指さした。
「うおおぉ、燃えて来たぁ!!」
「しかし、こっちには何の準備もないじゃないか」
 翔が冷静に意見を言った。
「心配するな!!遅れていたバトルスーツが今日、届いた!!」
「おっ、じゃあ変身できるんだな!!」
「みんな変身ブローチを出せ!!セッティングするぞ!!まだ来てない奴は後回しだがな」
「どんなデザインなんですか〜?」麗華が発言した。
「知らん。全て槍杉博士に一任している。心配するな、やつは私に負けないくらい戦隊オタクだ。きっと素晴らしいものに仕上がっているはずだ」
 それが心配なんだけど・・・・とその場にいる4人は思ったが、口には出さなかった。


次回予告
「あ、どうも、大文字岩之介です。突然の敵の来襲に、みんな大慌てなんだ。変身1つにも大騒ぎ。おまけに長官てば、僕たちにバイクに乗れって言うんだもんなぁ、免許持ってないのに。次回、遅刻戦隊オクレンジャー『放課後、トイレ掃除!!』にチェーンジ、オクレ!!・・・・だったかな」


 3 / 8


        次ページへ    前ページへ