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遅刻戦隊オクレンジャー
第2話「バケツを持て!!」


「遅い!!最初のミーティングだというのに、誰も時間を守らないとは何事だ!!」
 池里天文台の長官・池里隼人は憤慨していた。
「遅いって・・・・まだ知らせた時間の30分前ですよ」
 鳥越九郎は5本目のタバコをもみ消して言った。
「もう30分前だぞ!!地球の存亡がかかっている大事なミーティングだ、30分前には集まっておくべきではないのか!?」
(遅刻常習犯の集まりにそれを期待するのが、そもそも間違ってるのでは・・・・)
あいかわらずセリフを口に出さない鳥越であった。

 しばらくの後、1人の若者が指令室(池里が名付けた)に入ってきた。
「お〜っす!よう、あんたらかい、このオレを呼んだのは!!」
「やっと来たか、徳大寺剛・・・・」
「おい、オレの名前はツヨシだぞ、ゴウじゃねぇ、間違えんなよ!!」
「それはいい!!いきなりの召集に15分遅れるとは何事だ!?」
「他の連中は?」
「・・・・まだだ」
「んじゃ、オレが一番乗りかよ!!てことは、早いんじゃん、オレ!!」
 剛は胸を張った。
「早くない!!断じて早くない!!」
「おい、おっさん。もちろんオレが何とか戦隊のリーダーだよな!?」
「長官と呼べ!・・・・そうだな、お前が一応リーダーだ」
「じゃ、レッドだよな、もちろん!!」
 剛もこういうのは好きな人種であるらしい。
「そうだ、お前は遅刻戦隊オクレンジャーのリーダー、オクレレッドだ!!」
「・・・・何とかならんか、そのMr.オクレのようなネーミング」
「これだけは譲れん」
 その時、ベン・ルイスさながらのスピードで飛び込んできた者がいた。
「よし、セーフか」
「セーフじゃない!!20分も遅刻しおって!!」
「人を呼び出しておいて、偉そうな口のきき方だな」
 サッカー特待生である青山翔は、いつもサッカーのユニフォームを着ている。分かりやすい奴だ。
「おい、遅いじゃないか」
「何だ、お前は?」
「おいおい、オレはお前らのリーダーだぜ。そんな口のきき方をしていいと思ってるのか?」
「んだと!?きさまがリーダー!?誰が決めた!?いつ決まった!?」
「ショウ!!」
 いきなり長官が青山翔の肩をつかんだ。
「何をする!?」
「まぁ、聞きたまえ・・・・」
 長官は翔に耳打ちをした。
(ブルーといえばリーダーよりミーハーうけする存在なんだぞ。いちばん2枚目がすると相場が決まってるんだ)
 翔は耳打ちが終わると剛に向き直った。
「まぁよろしくな、リーダー」
「あ?あぁ」(何だ、急に?)
 その時、地鳴りと共に3人目の隊員が部屋に入って来た。
「あのぅ・・・・」
「おお、待ってたぞ、イエロー!」
「イエロー・・・・?」
 池里長官は大文字岩之介の背中をポンと叩いた。
「すみません・・・・遅れてしまって・・・・」
 どうやら体の割には気の小さい性格のようである。
「23分遅刻だが・・・・まぁこのさい、目を瞑るとしよう」
 池里もこれでは怒る気にならないようだ。
 続いて、もう1人がやって来た。
「えっと・・・・」
「おお、待っておったぞピンク!遅かったじゃないか」
「あん、だって・・・・ここの場所、分かんなかったんだもん・・・・」
 色目を使うのがクセなのか体に染み着いているのか、やけに悩ましげな視線を送る桃山麗華であった。
「そ、そうか・・・・すまんな、天文台というのはこういう不便な所にあるものでな」
 麗香の服装は白のボディコンだった。しかも妙に丈が短い。
 池里が見とれていると、鳥越が小声で耳打ちした。
「あの・・・・ブラのラインが見えないんですけど・・・・」
「お前、チェック厳しいな・・・・」
「なに内緒話してるんですかぁ・・・・?」
「あ、いや、何でもないぞ!!さて、これでやっと揃ったな!!では会議を始めるぞ!!」
「いえ、長官・・・・1人足りませんが・・・・」
「なにっ?」
 池里は頭数を数えた。確かに4人で、1人足りない。
「えぇっと・・・・集合時間40分遅れか・・・・何をやっとるんだ!?」
「失礼します!」
 ドアが開いて、守衛の1人が入ってきた。背中に女の子を背負っている。
「このお嬢様が、敷地内で眠っていたもので・・・・どうすればよろしいですか?」
「あ、その子は・・・・いいんだ、ここに置いて行ってくれたまえ」
「はっ?はぁ」
 守衛は女の子を静かにソファに下ろすと、敬礼して部屋を出て行った。
「さて、揃ったな」
「ちょっとまて!その子も隊員なのか!?」
 剛が叫んだ。他のメンバーもそういいたげな表情だ。
「もちろん。わが戦隊の頭脳、清瀬叶君だ。えっと、色は・・・・」
「紫がいいですぅ」
「紫っ!?」
 池里は、叶がいきなり喋ったので驚いて振り向いた。
「私、寝ちゃってたんですね・・・・ここ、寒いから目が覚めました」
「・・・・おはよう・・・・紫がいい、と言ったかね?」
「ええ、紫。私の好きな色です」
「むぅ・・・・そんな色は聞いたことがないが・・・・よかろう、君はオクレバイオレットだ」
「あ、それなら俺はブルーじゃなく、アクアマリンがいいぜ!!」
「あたし、ピンクなんてやらしい響き、いや〜。そうねぇ、ピンクハウスってどうかなぁ」
「あのぉ・・・・僕、イエローなんていかにも太ってて大食漢って名前は嫌です・・・・でもユニフォームが黄色に決まってるなら・・・・えっと、黄色い色・・・・そうだ、レモン色とか、清潔そうでいいですね・・・・いえ、できれば、でいいんです・・・・」
 ・・・・かくして、地球の存亡をかけた遅刻戦隊は結成されたのだ。


 次回予告
「やぁ、僕は青山翔だ。みんな、元気かな?さて遅刻戦隊が結成され、特訓を開始しようとした時、早速敵が地球にやってきたんだ。僕たちの活躍に期待してくれよな。次回、遅刻戦隊オクレンジャー『校庭10周!!』に、チェーンジ、オクレ!!」


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