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 OP「遅刻戦隊オクレンジャー」

  HURRY UP! 明日に向かって HURRY UP! さぁ遅れるな
  ベルはもう鳴っている NON STOP! 止められないぜ
  周りを気にせず DASH! DASH! 走り始めたら一直線
  あのゲートを飛び越えたら希望が待っている
  もし1人遅れても 何かを目指して流した汗は 無駄じゃない
  OH OH OH! 我らの 遅刻 遅刻 遅刻戦隊 オクレンジャー



遅刻戦隊オクレンジャー
第1話「廊下に立ってなさい!」


「どけどけぇっ!!」
 学校の大時計は既に9時を指していた。今日の担当教師と風紀委員の手によって校門が閉じられようとしている。
 そこに砂埃を立てて疾風のように突っ走って来る一人の学生の姿があった。
「またあなたね、徳大寺剛! 止まりなさい!」
 本日の遅刻者取締担当の教師、英語の雪子先生が怒鳴った。怒鳴ったと言っても、教師になったばかりの新米先生で、全然すごみがない。
 徳大寺と呼ばれた生徒はおかまいなしに凄い勢いで雪子先生の前を走り抜けた。そのまとっていた風で先生のスカートがひらめいた。
「きゃっ!!」
「悪ぃな、先生!!」
 徳大寺剛は跳躍したかと思うと、校門を飛び越えて校庭をつっきって行った。
「くそ、また逃げられたか!!」
 毎度のことなのだろう、風紀委員長の腕章を付けた生徒が苦々しい顔で言った。
 ビデオはそこで切れていた。
「・・・・どうだね、鳥越君」
「はぁ、白でしたな」
「君、私はパンチラを見せる為に君を呼んだわけではないのだよ」
「えっ?違うんですか・・・・あ、いや、勿論そんなことで池里さんがわざわざビデオを見せたりしませんよね」
「さっきも言っただろう、長官と呼びたまえ」
 池里、と呼ばれたその男は、池里(いけさと)隼人。この池里天文台を預かる大学教授である。
「はぁ、長官」
 この男は鳥越九郎、池里と同じ大学に務めている。
「どうだね、今の生徒のスピード、ジャンプ力。素晴らしいとは思わんかね」
「確かに、常軌を逸してますね」
「誰しも遅刻をしたくないという気持ちから、土壇場にきて発動するパワーを持っているのだよ!火事場の何とかという奴だ。あの力こそ遅刻寸前に発揮されるパワー、CSPだ!!」
「あの、池・・・・いや長官、そのCSPって・・・・何ですか?」
「C(遅刻)S(寸前)P(パワー)の略だよ」
(どうして頭文字の中で、パワーだけ英語なんですか・・・・)
 鳥越はその言葉を口には出さずにおいた。池里は機嫌を損ねたら手に負えないのだ。
「今、未知の生命体がUFOの大群と共にこの地球に向かっている!!この事はここにいる私と君、二人しか知らないことなのだ。その生命体と戦うべき戦士を集うため、私はここに5人の隊員候補を選抜してきた!!」
 ドサッと置かれるビデオテープ6本。
「おおっ!!・・・・1本多いですが?」
「あ、これはっ!!これは違うのだ」
 池里は慌ててテープを1本隠した。ヤバいものかも知れない。
(しかし・・・・この間見えたあれが本当にUFOの大群だとして、地球に来るかどうか、まして攻めてくるかどうかなんて分からないのに・・・・また教授の早とちりが始まったな。特に今回は戦隊を作るときた!!昔から特撮が好きだったからなぁ・・・・)
 鳥越は顔には出さず心の中でグチった。

「1人目は今見てもらった通り、京浜第2高校3年、徳大寺剛君だ。ツヨシと読むのだが、戦隊モノらしくゴウと呼ぶことにする」
(おいおい、勝手に人の名前を変えていいのか?)
 そんな鳥越の前で、次々と隊員候補のビデオが流されて行った。
「次は明星学園3年、青山翔(あおやま しょう)君だ」
「おお、サッカー好きな美青年ですか。アオにふさわしい人材ですな」
 青山翔はサッカー特待生として名門校・明星学園に入った。サッカー部ではキャプテンを務めるが、いかんせん規律にだらしない性格で、遅刻が多い。
「す、凄いスピードだ!!スピードだけならさっきの徳大寺君を上回ってますよね!!」
「そうとも。彼自身、遅刻をする事に何の罪悪感もないのだが、この遅刻劇を演じることにより女子生徒に騒がれるのを趣味としているようだ」
「性格に問題があるのでは・・・・」

「次、豪之山高校2年、大文字岩之介(だいもんじ いわのすけ)君だ」
「すごい体格、いかにも黄色っす!!」
「性格はおとなしいのだが、校門すら破壊しかねんあの巨体だ。誰にも突進を止めることはできん。彼は引っ越しで15km離れた町に家が移ってしまってな。それでも学校を変わりたくないというので、ここまで自転車で通っている」
「それで遅刻が多いんですね・・・・」

「次、杏林館高校2年、桃山麗華(ももやま うららか)君」
「やっと女の子ですね」
「嬉しいか?」
「あ、いや、別に・・・・」
「まぁ、VTRを見てくれ」
「んなっ・・・・!!」
 VTRには、遅刻してきた麗華と遅刻指導の男性教師が映っていた。
「ねぇ、せ・ん・せ・い・・・・いいでしょ・・・・今日だけ、許してぇ」
「きょ、今日だけってなぁ、お前いつもじゃないか・・・・」
「あん、いじわる・・・・麗華、泣いちゃうからぁ」
 そういいつつも麗華は自分の胸元が見えるように教師ににじり寄って、スカートのすそをさりげなくつまみ上げている。
「分かった・・・・早く教室に入りなさい。た、担任がくるぞ」
「あん、ありがと先生!!」
 麗華は投げキッスをして教室に向かった。
「なんちゅううらやま・・・・いや、なさけない教師だ!!それにあの色気バリバリ女子校生は何なんですかぁ!?」
「見て分かる通り、ピンク候補だ」

「次、聖華学園1年、清瀬叶(きよせ かない)君」
「続けて女の子ですね」
(うん?さっきから何かひっかかるが・・・・いつもの取り越し苦労かな)
「どうした?」
「いえ、続けて下さい」
 VTRでは清瀬叶の登校風景が映し出されている。
「・・・・やけに落ちついて登校してますが・・・・本当に遅刻寸前なのですか?」
「彼女はこれで急いでるのだよ」
「ええっ!?」
「彼女はいわゆるお嬢様でな。成績はトップなのだが、あったかいと眠くなってしまい、登校途中でも寝てしまうのだ」
「はぁ・・・・」
(何がひっかかってるのだろう?さっきから・・・・)
「以上が隊員候補の5人だ。彼らが遅刻戦隊オクレンジャーのメンバーなのだ」
「あ!?そうだ!!」
(最初はいいとしよう! 後に行けば行くほど、長官の言う「遅刻寸前パワー」と関係が薄れて行ってないか!? 特に最後の女の子!!パワーのパの字もないじゃないか!!)
「どうした、鳥越君」
「・・・・い、いえ・・・・」
(忘れてる・・・・長官は絶対にCSPなんて忘れてる!!単に遅刻回数で選んだに違いない!!)
 だが鳥越はその言葉を飲み込んだ。今の池里には何を言っても無駄なのだ。


次回予告
「オッス!俺、徳大寺剛!!いよいよオクレンジャーのメンバーが5人、揃ったぜ!!しかしよ、こいつらがまた変な奴ばっかりなんだ。全く、真人間は俺だけかよ。次回、遅刻戦隊オクレンジャー第2話『バケツを持て!!』に、チェーンジ、オクレ!!」

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