JAS法改定に伴う「産地表示」の義務化
水産関係の生鮮食品の表示は、次の4点が中心です。
今回のJAS法改定で決められたのは、「産地」「養殖」「解凍」の表示です。 実施は、2000年7月1日からになっており、期限まで残すところ2週間しかありません。 なお、これには「罰則規定」もあり、「品名表示ガイドライン」とは異なり、強制力を持っています。 これらの表示に当たり、小売店側としては(当然の事ですが)、下記のような立場をとることが必要だと思います。
下記に、京都市における具体的な点を列記します。 京都市以外の所では、各地方の独自性に合わせて、必要なところは読み替えて下さい。 これを読まれた皆様方からのご批判やご助言を期待しております。 メール 2000年6月18日記 |
品名表示の件 | ||
品名表示の基本は「標準和名」です。 ただし、 魚種により、地方名のほうが認知されている場合があります。その場合は、地方名を使います。 輸入魚の場合、日本名がつけられており、それが一般に認知されている場合は、その名前で表示します。 しかしながら、なかには消費者に「誤解」や「混乱」をもたらすような名前もあり、その場合は本来の魚名での表示とします。 |
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魚名 | 市場流通上での問題点等 | 表示のモデル |
マダイ チダイ(チコダイ) |
マダイもチダイも「小鯛」で流通しているが、厳密に分ける事が必要になる。小鯛・大鯛という表示は不可。 | マダイ(必要であれば、サイズを表示) チダイ |
キハダマグロ
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幼魚が「びんちょ」という名前で流通している。京都の地方名であるが、これは誤解のもとになる。 | キハダマグロ(の幼魚) |
カサゴ(ガシラ) | 種類が多く、地方名も多い。地方名での情報では、現場の担当者は発注できない。又、消費者も買えない。 | カサゴ |
メバル | 黒・赤・ソイ関係など、きっちりと分類する。「養殖」も明確に。 | メバル・黒メバル・ソイ等 |
カワハギ ウマヅラハギ ウスバハギ |
この3種が混同して呼ばれている。 はっきりと区別する事が必要。 ムキハゲという呼称は認められない。 |
カワハギ ウマヅラハギ ウスバハギ |
イカ関係 | 小イカ、ワカイカなどと呼ばれているが、イカの名前が必要。 イカの名前が不明確では取り扱いができない。 | 正しい「イカ」の名前を表示する。 |
アジ関係 | 小アジ・豆アジという表示は不可。「マアジ(小)」とかいう表示となる。又、「関アジ」も「佐賀関産マアジ」となる。 | マアジ・マルアジ・ムロアジ等 |
マイワシ | 平子、中羽、大羽という表示は不可。 | マイワシ(大羽イワシ)等 |
アユ関係 | 消費者を混乱させるので、「天然仕様」という表示は不可。 琵琶湖のコアユは認知されている。 |
アユ(養殖)とし、養殖場名を入れるのが好ましい。 コアユ |
カレイ関係 | カレイは種類が多く、地方名も多いので注意が必要。 基本は、標準和名だが、右記の3種は地方名を使う。 |
ミズガレイ(ムシガレイ) ササガレイ(ヤナギムシガレイ) エテガレイ(ソウハチ) |
トロカレイ トロアジ オキヒラメ |
こういう呼称は不可。 原料魚を明確にする必要がある。 | 魚の名前が明確でないと表示ができない。 |
アカウオ | いろいろの種類があるようだが、一般に「アカウオ」で認知されている。 | アカウオ |
メロ | 「銀むつ」「白むつ」等と呼ばれているが、「銀むつ」が一般に認知されていると考えられる。メロにするとかえって混乱する。 | 銀ムツ |
ナイルパーチ | 「白すずき」「すずき」などと呼ばれて流通しているが、これは消費者を惑わす呼称であり、問題がある。 | ナイルパーチ |
クロカンパチ トロカンパチ |
標準和名は「スギ」、メーカーが独自に名前をつけているが、一魚種が2つの名前で流通するのは混乱のもと。 | スギ |
エビ関係 | BTは、ブラックタイガーエビで認知されている。天然エビ関係は、業界名での表示は非現実的。「天然」という表示は、そのことが偽りでない限り、規制はされてない。 | ブラックタイガーエビ 天然エビ |
アカガイ アカガイの身 |
アカガイとサルボガイとが、明確に区別されていない。 「アカガイの身」は、サルボガイが大半だと思われるが、サルボガイの表示では消費者に理解されにくい。 |
アカガイ |
名前の似た魚 | ダルマ・・・メバチの幼魚 ダルマ・・・山陰方面でのメダイの呼称。 |
メバチマグロ(の幼魚) メダイ |
名前の似た魚 | アカイカ・・・ケンサキイカ(ヤリイカ) アカイカ・・・ムラサキイカ(ロールイカ) アカイカ・・・タルイカ(ソデイカ) |
ヤリイカ ムラサキイカ タルイカ |
魚には地方名がたくさんある。同じ魚でも、地方によって呼び方が違う場合も多いし、逆に同じ呼び方でありながら、違う魚の事もある。
荷受けさんが、地方の魚を引かれる場合、京都での名前は何なのか、常に意識していただきたいと思う。 |
産地名の件 | ||
国内物 | 1. 漁獲海域 2. 水揚港(地域) 3. 水揚された府県名 |
1、2、3の順に優先される。 1、2、3のデータを複数で記載する事も可能。 ニケ所表示が可能。たとえば、紀州のマルアジの産地を「和歌山県・三重県」とする等。 マグロなどの広域回遊魚の場合は、「太平洋」と表示することも可能。 転送物などの場合、確実にもとの産地を明確にすることが必要であるが、現実には困難なことが多いと思われる。。 |
輸入物 | 1.国名表示 (海域表示ではない。) 2. もとの形態からの変更があった場合、 加工国が産地となる。 |
アメリカ産、ロシア産等となる。 ベーリング海産等とはならない。 モンコ下足・・・中国産等(原体の産地は、アフリカのどこか) キハダマグロ短冊・・ 韓国産等(原体の産地は、スペインとか) (↑ これらの表示については、私自身は疑問を持っている。) |
国内物・輸入物とも、産地が明確でないものは取り扱いができない。 貝類などで、輸入物を国内で一時的に保管したものが出荷されるが、これは輸入物の扱いとなる。 現状では、これらについて、川上側から正しい産地情報が出されているのかどうか、私自身は疑問を持っている。 |
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「転送もの」は、正しい産地表示ができるのだろうか?
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「養殖」「解凍」の件 | |
養殖 | 普通、養殖物は分かるが、わからないものもある。右記の魚などは、きちんとした情報が必要。イサキ、メバル、ウスバハギ等。 最近では、サバ、サワラなども養殖物があるらしいので、荷受会社からのきちんとした情報提供が必要になる。 既製品で、「単品のお造り盛り」は表示が必要なので、ハマチ・カンパチ・フグ等の場合「養殖」かどうかを明確にする必要がある。 従来、使用されてきた「蓄養」という概念は、「表示」上では無くなった。 |
解凍 | フィレ等の半加工品の場合、その原料がどのようなものであるのか明確にする事が必要。この場合、「魚名」「産地」「原料は解凍物かどうか」など、川上側からの詳細な情報提供は必須となる。 サンマは、「生鮮物」から「解凍物」に切り替わる時期を明確にする。ダブって出荷される時期もあると思うが、その場合は、個々に「生鮮物」か「解凍物」かを明確にする。 既製品で、「単品のお造り盛り」は表示が必要なので、イカやマグロの場合「解凍」かどうかを明確にする必要がある。 トリガイ、アカガイなども同じ。 |
「養殖」であるかどうかが明確でないものは、取り扱いをしない場合もある。 イカ類やフィレ加工品などで、「解凍品」と思われるものであった場合、その点が明確にならない場合は取り扱いをしない事もある。 |
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