症例報告

1.ゴールデンレトリバー系雑種 
 内科的にコントロールできた喉頭麻痺

10歳に他院からの転院症例。12歳の頃、運動負荷時に呼吸が荒くなる。しばらく後、声がかすれる症状が出始めた為、喉頭麻痺を疑い二次診療施設を紹介。左側被裂軟骨完全麻痺、右側被裂安骨軽度麻痺、気道閉塞は起きていないが今後外科的対応が予測されると診断。
外科的治療以外を模索し当院にて甲状腺機能低下症を診断(FT4 1.2ng/dl、TSH 0.58ng/ml)、内服治療開始。
1ヶ月後、劇的に改善しその後17歳に亡くなる直前まで麻痺症状なく、歩き食べることができた。

2.日本猫雑種
 全身性の肥満細胞腫に対するシクロスポリン投与

全身に5㎜~2㎝大の腫瘤が散在した6歳の避妊済み猫。
院内の細胞診にて肥満細胞腫疑い。念の為、外部のラボ(マルピーライフテック)に提出し、同診断。
外科的治療は選択できない為、内服で免疫調整療法を試みた。シクロスポリンをEODで投薬してもらい、2か月後、胸背部に1箇所1㎝大の腫瘤が確認されたのみ、元気食欲も改善し生活の質が劇的に改善した。その後1年半生存。

3.ロングヘアードミニチュアダックスフンド
 長期にわたってコントロールした無菌性脂肪織炎

他院にて去勢手術後、傷が治らないと転院されてきた5歳オスのミニチュアダックスフンド。
切開部の左側が腫れ排膿、大腿部外側腫脹。経過から縫合糸反応性脂肪織炎を疑いステロイドにて試験的治療。2週間後大幅に改善が見られたが、その後確定診断のため2次診療施設を紹介。CT検査で縫合糸と思われる陰影が確認され摘出手術が行われた。
病理にて無菌性脂肪織炎確定。術後一時的に改善が見られたが、ステロイドを止めると悪化するためシクロスポリンへ切り替えた。
その後老衰でなくなる16歳まで症状はコントロールされた。

4.日本猫雑種
 長期に渡るコロナ感染症のコントロール

嘔吐、下痢、便秘など慢性的な消化器症状が続いていた去勢雄猫。
FIP抗体価102400以上が判明しオザグレルを内服で開始、その後10年間消化器症状は治まり、腎不全により21歳で亡くなった。

5.ロングヘアードミニチュアダックスフンド
 フィラリア症、甲状腺機能低下症、扁平上皮癌の症例

3歳の時、フィラリア陽性、イミトサイト、アスピリンにて駆虫治療を行い3年後陰性。
8歳の時、急に元気消失、後躯麻痺を呈し後日、甲状腺機能低下症を診断(FT4 1.3ng/dl、TSH 0.45ng/ml)

 

11歳の時、左脇に皮膚病変、スタンプ採材にて悪性所見。手術にて病変部を切除したが病理(マルピーライフテック)にて扁平上皮癌。

 

完全切除ではあったが深部のマージンがとれなかった事によりピロキシカムを服用。その後3年再発なく過ごした。

6.ラブラドールレトリバー
 起立不能より改善した甲状腺機能低下症

8歳の健康診断時、高脂血症を呈した事から甲状腺機能低下症を疑い検査(FT4 1.6ng/dl、TSH 0.26ng/ml)、治療は様子見。
11歳の時、急に起立不能となり甲状腺薬を服用、数日で歩けるようになり元気回復。
現在13歳。毎日2時間の散歩を日課。

7.キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
 顔面神経麻痺を発症した甲状腺機能低下症

8歳時、急に右顔面が垂れる顔面神経麻痺を呈する。ステロイドによる試験的治療に反応がなく、以前より随時測定していたFT4、TSHの数値より二次性甲状腺機能低下症を疑い投薬開始。数週間後には麻痺完治し17歳永眠。

8.日本猫雑種
 トラピジルによりコントロールした髄膜腫疑い

当院で仔猫の時から診ていた避妊済猫、5歳の頃からクレアチニンが2㎎/dlを超え腎臓食を食べていた。
17歳まで療法食でコントロールできていたが、急に痩せてきた為自宅で皮下点滴を開始。1年後ふらつき、頭部を傾け、左瞳孔散瞳、叫ぶような声で鳴き出す症状を呈した。甲状腺機能亢進症は否定できていたので二次病院にてMRI検査。この時前頭葉に髄膜腫様の所見が見られた。人の髄膜腫の初期治療で用いられているトラピジルを処方し経過観察。2か月後には元気に遊ぶようになり症状は改善していった。その後2年間自宅元気に生活し21歳で死去。