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1.長崎は間違いなく日本一の坂の町

斜度5度を越える斜面面積比率が、長崎市は80%に達している。(神戸市は30%弱)
10度以上の急傾斜地が46.9%
14度以上が19.6%もあります。

2.「車横付け」って分かりますか?

借家などの不動産物件の案内で

(1)「車庫付き」 
(2)「車庫有料」・・・借家の近くに有料で車庫があるという意味の場合が多い
(3)「車横付け」・・・車が行けるという意味です。 
(4)「車入る」  ・・・   〃 
(5)「車不可」             などの、表現が使われます。 

愛宕山手自治会(愛宕一丁目の一部) 98所帯で、横付け出来るのは 2所帯です。
山の手の地区では、とくべつな例ではありません。


3.「横付け」でない人二人に毎日大変ですね!と聞きました

二人は同じ会社に勤務しており、自宅は鳴滝1−25の児玉さんと鳴滝1−24の森田さんです。
二人の自宅はいずれも、100段ほどの石段を上らなければなりません。しかも児玉さんのすぐ南の坂が、森田さんの坂です。
二人の回答はまったく一緒でした。
  • 「自宅に帰る階段を苦痛に感じたことは無い。 身に付いた(自分がいつも通る)坂は,きつくない。」

  • 「だが、同じ様な坂でも  「よその坂」はきつい。」
    (森田君が児玉君の家に行くときは、途中で一度休んでいくとの事です。)

  私には理解出来ません。

児玉さんと森田さん家の地図


4.車横付けでない場合、家を新築するときの建築材料の運搬方法は?

鳴滝1−25の児玉さんに聞きました。

(1)40年前に新築したときは、すべて人夫さんがかついで運びました。

(2)18年前に建て直したときは、と人夫さんで運びました。 
 こがらな対州馬(たいしゅううま)では、砂利・瓦・コンクリートなどを 運び、材木などは人夫さんが運んだ。
 馬はまだまだ現役で活躍しています。 

対州馬


(3)3年前に改築をしたときは、キャタピラ車(キャタピラはゴムで400 KG積みが普通だが写真は750KG積みです)と人夫で運んだ。
 私の家の坂は曲がっている為、キャタピラ車で石段を上るためには 「長い板」を敷く必要があり、下からはキャタピラ車は使えなかった。
 「蟹の横這い」の様に、家の横を通る小道を、キャタピラ車で資材を運んだ。

しかし馬やキャタピラ車は、運べる物がコンクリートや砂利など小さな 物に限定され、結局は「人」の力で運んでいます。

キャタピラ車

対州馬の写真と詳しい説明については、ここをクリックして下さい


5.「車横付け」でない生活の「知恵」 

ソリの付いたごみ収集のプラスチックかご (1)ゴミの収集には、「引き出し」と言って、 「スラセ」と呼ぶ強化プラスチックのソリが付いた ゴミカゴ(引き出しカゴ)で、坂段を滑り降ります。

(2)し尿処理については、水洗がかなりの所まで普及してきましたが、 水洗でないところは(平成5年度で長崎市の下水道普及率55%)

(a)普通は消防のようにホースを何十メータもつなぎます。

(b)ホースを置いておく場所があれば、坂の脇に置いておきます。

長崎方式の塩化ビニールのパイプとバキュウム車に接続するホース (c)側溝に塩化ビニールのパイプを固定しておき、バキューム車が来た時に ホースと接続している所もあります。

長崎方式と呼ばれています。
右の写真を参照して下さい。
(この側溝、よく見ると分かるのですが、なんと石敷きです。)

(3)水道

戦前の住宅地の限度は水道の水圧に関係し、住宅の電灯が海抜高度に 一直線に並んでいたそうです。
今は高部配水施設として、22カ所のポンプ場と、 標高380mのこしき岩配水槽・標高298mの田手原配水槽をはじめ、 配水タンクが約100カ所配置されています。

   こしき岩配水槽・田手原配水槽の写真


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6.消防も長崎方式 !

長崎方式の島田巻のホース (1)長崎では、島田巻」という長崎独特の消防ホースの巻き方をしています。

東京、大阪、福岡などの大都市では、通常「二重巻」の方式です。20mのホースを二つ折りにして、まあるく巻きます。

しかし坂が多い長崎では、ホースを人力で運びあげる必要があるため、肩にかついで運びやすい様に、「島田巻」というジャバラの巻き方をし長方形にします。
分業方式で、一人が3本から4本肩にかつぎ(二重巻だと、丸い形のため4本も持てません)、20mごとに置いていきます。 もう一人が、置いてあるホースを伸ばして行きます。

長崎市消防局で工夫したホースバッグ (2)それと消防車には、長崎市消防局で独自に設計したホースバッグが必ず積んであります。
ホース4〜5本分が収容されており、キャスターも付いていますし、背負える様にもなっています。

(3)その他、指揮車などの車両はすべて4WDです。
また、坂は狭い道が多いため、消防車は通常4トン車が普通であるが、それ以下の小型消防車が配備されています。

(4)「婦人防火クラブ」誕生の地!!

昭和38年11月、地形的な悪条件を克服し火災予防を推進するため、 全国で初めて「婦人防火クラブ」が、式見(しきみ)町に誕生しました。
現在では、全国に組織されているようですが、長崎が第一号で、高台家屋密集地域や市周辺地域を中心として、長崎市内354クラブ52,191人(H6/10/1現在)の 大きな組織に成長しています。
ほとんどの家の前には、赤い「防火バケツ」に水を入れて置いてあるなど、防火には細心の注意をはらっており、 大規模な斜面火災は起こっていません。

(長崎市消防局警防課,予防課にご協力頂きました。1997/01/22 wrote )


7.坂にある家からの景観

星取1丁目の井口さんにお話をうかがいました。

「どんな小さな庭にも、築山(つきやま)があり池があって、しかも動きがあります。」

稲佐山と長崎港という借景で、どんな小さな庭も素晴らしい庭園になります。しかも船の出入りが見えたり、夜は車のライトがきらめき動きます。
どんな名木でも毎日見ていれば飽きますが、この景観は飽きることがありません。

「坂」は、”たいへん”ですが、すばらしいものを与えてくれているようです。
だから「車横付け」でなかっても、さらに山上まで這い上って家が建設されているのでしょう。


8.「休み石」 ( 思いやりの心 )

休み石 長崎市桜町の”長崎商工会議所ビル”の東側の通りを、 南に下って行くと突き当たりのカドにあります(桜町7−1)。
「休み石」に腰を掛けて休憩したか、背中にかついだ荷物を「休み石」に載せて休んだのでしょう。

お年寄りが坂を上るとき、荷物を持ってあげることは、 普通のことだそうです。
おもいやりの心がいつまでも残って欲しいと思います。

長崎東ロータりークラブでは、クラブの30周年記念行事として200年1月に、3ヶ所の幣振坂に「休み石」を設置しました。

思いやりの心その2

浦上街道を歩いていると、天神町の生目(いくめ)八幡宮前付近の坂段(階段になった坂道)の角々に、白いペンキが塗ってありました。
 気をつけて見ると、立山や大浦など至るところで階段のかどに、白いペンキが塗ってあります。
 暗くなっても、階段が分かりやすいように、しています。

  天神町のペンキを塗った坂段の写真へ


思いやりの心その3

  坂にある家の案内板へ


9.稲佐中央通り商店街の「お買い物商品配達サービス

長崎港から見た稲佐山と稲佐の町並み夜景がきれいに見えることで有名な”稲佐山”のふもとにある稲佐地区も、坂の町です。

稲佐登山道の登り口にある、稲佐中央通り商店街組合(60店舗)では、お買い物商品の宅配サービスを11月1日よりはじめています。
商店街の中心にある「サービスセンター」に持ち込めば、段ボール一個当たり150円〜300円(配達地区により差)で、神戸屋パンの浜端会長さんと 宇土靴店の宇土副会長さんがバイクで、13時と16時に配達されています。
また、買い物のスタンプで、配達券と交換出来るようにもなっています。

地元商店街の活性化のねらいも有るのでしょうが、お年寄りの方などを思いやるサービスで、たいへん喜ばれています。  (1997/01/19 wrote)


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