一本釣りのことをこの地方では小(こ)一本釣りという。以前は六ひろ(九メートル位)位の無動力船で、三、四人が乗り込んで魚を釣りに行っていた。 晩は餌にするために浦のエビをこぎ、昼は平島の附近から、別当、こうぞね、かまぶた、にんじゆう、などの魚巣を釣りまわって港に帰るのは晩の九時から十時頃、すぐまたエビをこいで夜明けには網代に着かなければならないので重労働であった。
外海町出津(しつ) 天気がすばらしく好く、空には星が一杯またたいていたある晩、餌(えさ)用のエビも沢山とれて、帆をまき揚げ、地風(北風)の追風(おいて)にのって出帆した。皆は胴の間に睡をとることにし、舵とりだけがカンズカを握って艫(とも)に座っていた。
出帆間もなく胴の間の一人が空の星を眺めていると、船が順風に乗らずに逆方向の艫の方に進んでいるように見えた。いかにも変でたまらず頭をもたげて艫を見ると何者かが舵を抱きしめているではないか。
夢みる河童・濱脇晴美 作陶
(ころこ庵・外海町神浦678)何者だ!よく見ると小坊主だ、頭は小さいが真中が丸くはげ、体中ひげもじゃもじゃ、舵を抱きしめて進行をさまだけているので相当の力持ちらしい、艫の一人にカソズカをはずせと言うが早いか小坊主見かけてそのカソズカで一げき!振り上げた所に大しぶきをあげて海中にもぐりこんでしまった。
艫(とも)の一人が小坊主の姿を見るなり、アバヨウと言いながら一飛びに胴の間に逃げこんだ。小坊主はガアー太郎であった。 .
<外海町誌 外海町役場 昭和49年10月より>
外海町では、かっぱ祭りが4月29日(みどりの日)に、開催されています。
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