【1826年2月19日】 江戸参府紀行より
この日、シーボルトは佐賀の長崎街道・神崎(かんざき)宿を発ち、中原(なかばる)宿〜轟木(とどろき)宿〜田代(たしろ)宿〜原田(はるだ)宿〜山家(やまえ)宿まで、旅しています。
この間は筑後川の流域に近く、かわうそ(川獺)に出会っています。
江戸時代、川獺は日本にたくさん生息し、「中国への輸出品」にまでなっていたことが、記述されています。
出島を出発して以来、私は何匹かのイタチやウサギ以外に野生の哺乳動物を見たことがなかった。今日は一匹 のカワウソが私のすぐ前から小川に飛び込んだのでびっくりした。
コツメカワウソ(インド・東南アジアに生息する)
長崎バイオパークにて日本のカワウソはドイツの普通のものと形や大きさも同じだが、ただ背中がいちだんと濃い褐色で、腹、胸、喉などの毛が灰色を帯びているところが異なっ ている。ともかく日本のはカナダのものほど暗褐色でないから、ヨーロッパ種から新世界の北半球に住むカナダ 種への顕著な移行形態を示している。
---このカワウソは川や湖のほとりに住み、そこから細い川にのぼってゆく。ときには大きな河が海に注ぐあたりの海岸にもいることがある。カワウソは魚類を常食とし、ときどきはカ ニも食べる。一月に交尾し一ないし二匹の子を産み、それ以上産むことは少ない。
コツメカワウソ カワウソの皮は中国への輸出品で、中国の商人はこれに四ないし六グルデソ支払う。また日本人はシベリアの住民、千島やアリューシャソ群 島の毛皮をはぐ人のように、ロから頭部を通って尾の先まで、少しも切りそこなうことのないやり方で皮をはぐ。 皮は灰、明礬、塩をまぜたものをつめ、それから空気にあてて乾かす。
<シーボルト『日本』第2巻 中井晶夫・斎藤信 訳 雄松堂書店 平成6年8月第2刷発行>
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