番外編 俺の天使2
作:MUTUMI DATA:2002.12.1

俺の天使続編。MUTUMIリハビリ(?)作品。
真面目な話ばかり書いてると、疲れるんで・・・。


ここは惑星レオノア。発見者レオノア・サシェ博士にちなんで名付けられた、植民惑星だ。
植民惑星とはいっても、最初の入植者がこの星に入って、既に300年が経過している。
入植者の都市も発展し、一部しすぎたという声もあるけど、今や太古の自然と融合した近代都市惑星として有名だった。主要都市からほんの少し外れるだけで、太古の生物や自然と対面出来る。
原野を走るサーベルタイガーとか、空飛ぶロックイーグルだとか、他の星だったらとっくに絶滅した種族の生物が、その辺にごろごろいたりするのだ。
惑星レオノアが別名『サファリランド』と言われる所以だ。


まあ、そんな事はこの際どうでもいいんだ。この星の成立背景なんて、どうでもいいんだけど・・・。
ロックイーグルの巨大な鉤(かぎ)爪に引っ掛けられ、空を飛んでいる、いや正確にはぶら下げられて運ばれている俺としては、現実逃避もしたくなるというものだ。
体長30メートルのロックイーグルの爪に、何で俺が引っ掛けられなきゃならないんだ〜!!
うぐ。な、涙が出てきた。
びゅうびゅうと唸る風音が、まじに恐いんだよ。時速200キロは出てるぞ。なんで、これで分類学的には鳥なんだ〜!? うう。一体どこに連れていかれるんだよ〜!

情けなくも俺は涙ぐむ。だがしかし、誰だってそう思うんじゃないか?
いくら俺が特殊な訓練を受けた人間でも、こんな巨大生物相手じゃ逃げたくもなるというものだ。
逃げ・・・。正確には、逃げるのに失敗したという方が正しいんだとしてもさ、この状況は辛いって。
足下を見ると地上は遥か彼方だった。豆粒程にも見えない。眼下一面が緑色一色にしかすぎない。
ぞ〜〜〜っと血の気が引く。
俺は『桜花』じゃないんだから、こんな所から落ちたら、まず間違いなく死ぬ。もうきっぱり、はっきり即死コースだ。
「そんな最後は絶対嫌だ〜〜!!」
俺の叫びは耳元でがなりたてる風音に負け、消えていく。
「シズカ〜〜〜!! 何とかしろ〜〜〜!!」
俺は自分の上司兼恋人、『06』固有名シズカに救いを求めた。

想いが通じたのか、通信機から慌ただしいシズカの声が漏れてくる。
「『45ー77』! 生きているの!?」
・・・第一声がそれって酷くない? シズカ〜。
「生きてるよ」
「ああ、良かった。待っててね! もうすぐ迎えに行くわ!」
「迎えにって・・・どうやって?」
時速200キロで動くロックイーグルに、どうやって追い付く気だ? というか、何をする気なんだ?
俺のそんな疑問にシズカはあっさり応えてくれた。
「撃ち落とすから、気を失わないでね。」
え。おい、待て〜〜〜っ!! 最後のハートマークが凶悪だぞ、シズカ〜〜!!
 

ガウン。
何かに狙撃されロックイーグルは、きりもみ状態で落下していく。
「うぎゃ〜〜〜〜〜〜っ!!」
じ、地面が真下に見えるっ!!おち、落ちる〜〜!!
地表到達まで推定何秒かと思わず計算しそうになり、自分がパニックをおこしかけている事に気付く。
「イサ! 大丈夫だから、私を信じて!!」
任務中にも関わらず、『06』が俺の名を呼ぶ。
シズカ・・・。
俺のなけなしの理性はかろうじて、プライドに従った。
どんどん大きく、しっかりくっきりと見え始めた地上に、それの影が見えた。
小柄な人影。シズカと、あれは・・・?
悩む暇もあらばこそ。ドウウン。巨大な音をたてロックイーグルは地表に横たわる。
そして俺は・・・。
地上すれすれ、数cmで激突という際どい所で空中に浮いていた。

た、助かった?
ふよふよと浮いていた俺は、そっと地上に降ろされる。がくんと何故か腰が抜けて、俺は地上に座り込んだまま『06』と共にいる人物に感謝の言葉を捧げた。
「『桜花』、すみません。・・・助かりました」
コードネーム『桜花』。俺達の部隊の指揮官、星間最強の高位能力者はにこっと笑って応じる。
「どういたしまして。でも『45ー77』今度からは、ロックイーグルの餌になっちゃ駄目だよ」
さらりと、笑顔でそんな言葉を続ける。
うぎゃ〜。やっぱり俺って餌として捕食されたんかい!?
「無事で良かったわ。今度からは草原での訓練は、少し規模を縮小するわね」
シズカは胸を押さえ、安堵の表情を浮かべながら、そう述べる。
だけどシズカ。訓練を中止にする気は全然ない訳ね。アハハハ・・・。
「歴代初だね。捕食されそうになった部隊員(コマンド)は」
桜花部隊、その最終責任者はくすくす笑って感想を述べる。
だけど、これって笑っていい事なのか!? 危うくロックイーグルの胃袋におさまりそうになった俺としては、とてもじゃないが笑えない〜。

かくして俺は、ロックイーグルに獲物として捕食されそうになった、最初の犠牲者との称号を得た。
おい。そんなもの貰っても全然嬉しくないぞ〜!! というか、頼む! 皆この話は忘れろ〜!!


付記。俺の名誉の為にいっておくが、俺の他にも捕食されそうになった奴はごろごろいる。俺が特別どんくさいって訳じゃないからな!



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