学校へ行こう
4瞳の中の光
作:MUTUMI DATA:2003.5.5

一矢の時々出て来る病気の原因ですね。ちょっち痛い?


 10年前。


「報告します! 敵、第五守備隊の反応全くありません! どうやら逃走した模様です!」
僕は首を傾げ、側の男を見上げる。
「それは確かな情報か!?」
「はっ! 【陸1】部隊が確認しています!」
伝令はきっぱりと言い切り、僕達を伺う。しばし考え込み、ややして男は僕を見た。
「どうします?」
「・・・おかしいよね。それは、すごくおかしい」
「ええ、私もそう思いますが・・・」
男が僕の疑問に答えた瞬間、それは起こった。
カッ!!
僕達の視界が黄色に染まる。
「うわっ!?」
僕は思わず腕で目を覆った。光が神経を焼き尽くす。
何が起こったのか、さっぱりわからなかった。それが何だったのか、・・・その時の僕は知らなかった。
「艦長!」
男が僕を庇う様に動く。抱きすくめられて、物影に引きずり込まれる。
僕は細く目を開いてそれを見た。物凄い光を発し、空から僕らの方に落下して来る発光体を見た。
次の瞬間、僕らは熱風に包まれる。
ゴオオオオオッ!!
光と熱と風が僕らを翻弄する。僕は男の体に庇われつつも、地面にはり付けられた。物凄い圧力が天上から大地へとかかっていた。ハンマーで押され殴られているかのようだった。惑星の大気に押し潰されるのかと思った程だ。
「うわっ!」
僕は声を上げる。
「くっ」
男も苦痛の声を漏らす。何時の間にか、周囲の簡易テントが吹き飛んでいた。爆風に煽られる様に、何もかもが吹き飛んで行く。地面に伏せ、穴の中のような窪みに逃げ込んでいたとはいえ、全身を揺さぶる風速は並ではない。
これは、何だろう? 何がおこったんだろう!?
僕は錯乱しそうな状態の中考える。外部からの攻撃、それも恐らく・・・大気圏外からの艦砲射撃だろうとは見当が付いた。けれど、ならば・・・。あの光る物体は何だったのだろう?
「うぐっ」
男が苦痛を漏らす。
「セルゲイ!」
「大丈夫です」
耳元で声がした。
「まだじっとしていて下さい」
熱風はまだ止まない。だがしばらくしてそれは唐突に止まった。
僕はセルゲイの体の下から引き起こされる。そして・・・。見た。眼下に広がる荒野を。焼け爛れた大地を。
そこには何もなかった。
「奴等、宇宙船からプラズマ砲を惑星に向けて打ちやがったのか!?」
セルゲイが吠える。下手をすれば大気すら吹き飛ばしてしまうかもしれないことを、敵はしたのだ。恐らく躊躇う事すらなく。
僕のいた部隊はほぼ全滅していた。・・・僕は焼け爛れた大地に呆然と立ち尽くした。
立ち尽くすことしか出来なかった。


*******************************


「ねえ、聞いて聞いて! 大変だよ〜!」
つかの間の昼休み、勢い良く僕らの所に少女が駆け込んで来る。
ボブカットのさらさらヘアの少女、パイ・エルモアは屋上でお弁当を広げていた僕らに向かって、一気にまくしたてた。
「大変だよ。来週の数学のテスト範囲が増えるらしいよ!」
そう言ってパイは僕の隣に座り込む。
「え!?」
「何〜!?」
シグマとケンの二人はパイの情報に目を剥き、叫び返す。
「この期に及んでまだ増えるのか〜!?」
「駄目だ・・・。赤点になる」
各々の感想を述べ、へなへなと凹む。
「最悪でしょ〜! ただでさえ難しいのに〜。もうどうしろって言うのよ」
パイは何故か異様にハイテンションだ。
「私数学苦手なのよ。ううっ。幾ら勉強しても全然わかんないんだよ」
「泣くな、パイ。俺も似たようなもんだから。例外は・・・」
ケンは僕に向かってピシッと指を突き付ける。
ケン、その指は何かな〜?
「例外はこいつぐらいだ!」
じ〜っと三人の目が僕に集中する。
「そうだよな、一矢って頭良かったんだよな。この前の集中テストで学年10位までには入ってたもんな」
「一矢なら大丈夫だろうけどさ〜」
「確かに。一矢君なら幾ら増えても平気っぽそう・・・」
羨まし気に三人は僕を見つめる。
や。あのね、そんな目で僕を見ないでくれる〜。
「僕は別に頭が良いんじゃなくて、たまたまテストに出た範囲が、僕の知っていた所だったからだよ」
嘘は言ってない。うん。
「え。前から知っていたの?」
微かに驚いてパイは僕を見つめる。
そりゃあ、そうだろう。勉強する前から知っているっていうのも、変な話だしな。
「なんて言えばいいかな。う〜ん、ほら僕ってこの星の人間じゃないでしょ。前に住んでいた所って、ここよりカリキュラムが進んでいてさ。勉強もここより先行していたんだよ」
まあ、その星の学校には行ってなかったけどね・・・。
「へ〜」
「そうなのか」
ケンとシグマの感心した様子に、僕はただただ苦笑を浮かべるしかなかった。
なんて言うか、本当に二人とも信じやすいよな〜。ちょっとだけ、良心が痛むよ。
仮面を被りつつ僕はそんな事を思った。
「それに兄達から色々な事を教わってたから」
「一矢君お兄さんがいるの?」
初めて聞く話にパイは興味深々だ。
「いるよ。一番上の兄なんて、一種の天才だと思う。凄いんだよ。だから勉強も良くみてもらったし」
「へ〜。そうなんだ。いいな〜。私も誰かに教えて貰いたいよ〜」
パイは溜め息をつきつつ、そう述懐し、ちらっと上目使いに僕をみる。
うっ、まさかパイ・・・。
「ね〜、一矢君〜」
私に数学教えて!
パイの思考の声が、はっきりと僕に聞こえてくる。
うわっ。それは勘弁して〜! これ以上君達と接触を持つとボロが出そうで恐いんだよ〜。
ひたすらピンチとばかりに、僕は焦りながらパイの会話を途中で遮った。
「無理だよ〜。僕、人に教えられる程理解してないもん。説明なんて出来ないよ。ごめんね、パイ」
先手を僕にとられたパイは、恨みがましそうな目で見上げてくる。
うわっ。し、視線が痛い。
「う〜。仕方ないか〜。ねえ一矢君、誰か良いかてきょいないかな?」
「かてきょ?」
僕は怪訝そうに聞き返す。
時々言葉がわからないんだよな。若者言葉って難しい・・・。
自分だって外見上は若い癖にそんな事を考える。
「家庭教師の事よ。真面目に勉強してみようかと思って」
「そっか。パイ、偉いね!」
にこっと笑って僕は応じる。頑張るパイに誰かを紹介してあげたくなる。でも僕の知っている人で、家庭教師に向いている奴なんていたかな?
シズカやイサは論外だし。どうせいつもあの二人はデートで忙しいんだ。そういえばあの二人、まだ僕には付き合っているのがばれてないと思い込んでるよな〜。バレバレだっての。面白いから内緒にしとくけどさ。
リックは・・・う〜、無謀だ。あいつは勉強が苦手だ。アイラは・・・賢過ぎて無理だな。こっちの頭がついていかない。
他は・・・。
僕は色々思い出して考えてみる。だけど、どいつもこいつもまともじゃないから、推薦なんて全然出来ない。何をやらかすか、想像出来ないもんな。
どっちみち桜花部隊の奴に頼む訳にはいかないし・・・。あれ? 一人適役がいたっけ。
僕はいつも自分の後ろにいるはずの、自分の後ろを預けている奴の事を思い出した。
ボブ・スカイルズ。
僕の副官だ。
性格は至ってかなりまとも。温厚だし(怒ると恐いけど。時々凶悪になるけど。)、忍耐強いし、子供大好きだし。数学ぐらいなら、楽勝で教えられそうだけど。
なんだ、意外にも適任じゃん。
でも・・・。
流石にパイに紹介は出来ないよな。だってあいつは僕の隣にいる必要があるし。僕が頼んだってきっとにっこり笑って、嫌だとかぬかしやがるんだ。
全然人の言う事聞きやしない。僕の方が上官なのにさ。
まあ、元はと言えば僕に原因があるんだろうけど。あんまりいい上官じゃないしな。
無茶はするし、すぐに部隊の指揮は投げ出すし、病気持ちだし。ボブにしたら、とんでもないお荷物を預かったって思ってるだろうし・・・。
桜花部隊に所属しているのだって、僕が無理矢理引っ張って来たからだけだろうし。他にボブがここにいる理由ないもんな〜。
・・・なんか落ち込んで来た。もしかしなくても、僕ってボブにとってはかなりのお荷物なんじゃないだろうか? もう長い付き合いだけど、・・・あいつの人生を束縛しているだけなんだろうか?
違うとは言い切れない。
ボブが統合本部、いいや、委員会から、僕の事を任されているだろう事は簡単に予測出来る。
護衛と監視・・・。
僕の体調がいつまでもこのままだという保障はどこにもないから、常に目の届く監視者が委員会には必要な訳で、ボブは桜花部隊の副官という以外にも、その任務にもついているはずだ。
たぶん・・・な。
だとしたらずっと緊張状態にいるんだろうか? 寿命の短い僕を気にして、常に不安を抱えているんだろうか?
・・・ありえそうだな。ボブならそんな、損な役回りを簡単に引き受けそうだ。
馬鹿な奴。僕の事なんて切り捨てればいいんだ。自分の人生を謳歌すればいいんだ・・・。それなのに・・・。
僕はぶんぶん首を振り、その先を考えまいとした。僕が今何を言っても、ボブは耳なんか貸さないだろう。あいつはそれ程頑固だ。
でも、・・・ボブは近い将来僕から解放されるだろう。だって僕の寿命はそんなに長くないから・・・。
もう何時倒れたっておかしくない。この体はとっくの昔に汚染されている。今こうして動いていることの方が不思議だ。とっくの昔に医者は匙を投げた。いや、・・・僕の仲間が死に絶え僕だけが生き残った時点で、医者達は治療を放棄したんだ。
戦争が終わってから10年、どれほど研究しても一つの成果も得られなかった。・・・今も生きているのは僕だけだ。もう誰も生きてはいない。・・・僕だってもうそろそろ限界だろう。
フォースマスターだから、少しは抵抗出来たけれど。細胞が死滅していくのを止める事なんて、現代医学では不可能だ。薬なんか役にはたたない。多分僕はもうすぐ・・・寿命を迎える。
僕は勉強の話に盛り上がるパイ達を、寂しそうに眺めた。
この子達にはこれから先の未来がある。でも僕は・・・。僕にはこの先なんて・・・ないんだ。
僕はほんの少し、嫉妬にかられた。若々しいパイ達を、正直羨ましいとさえ思った。僕にはないものを持っている彼らが、僕はこの時直視出来なかった。


「また明日ね、バイバイ一矢君」
「じゃあな〜、一矢」
「変質者に気をつけて帰れよ〜」
パイ、シグマ、ケンの声に見送られて、僕は苦笑を浮かべつつ手を振りながら通りの角を曲がった。
最後のケンの台詞がなんだかな〜と、思うけどまあいつものことだ。変質者に狙われたと言って以来、自棄に気をつけた方がいいと、口煩く言われているから。
パイ達が優しい事にかわりはないんだけど、それって僕に言う台詞じゃないよな〜。
僕はそう思いながら、元気な三人と別れた。その直後、パイ達の姿が見えなくなってから、低い男の声が僕に降りかかる。
「変質者とは・・・何かあったんですか?」
言わずと知れた僕の副官【02】ことボブ・スカイルズだ。何時の間に来たのやら、ちゃっかり僕の後ろに立っている。
「冗談だよ」
僕は振り向き端的に答えた。
あの台詞を真面目にとらえれたのでは、たまったもんじゃない。冗談ってことにしておくに限る。
それなのにボブはじ〜っと、疑わしそうに僕を見た。
「怪しいですね〜」
「そう? で、何か用なの? 外では話しかけないって方針は、止めたの?」
ボブは僕の隣に並び、歩きながら書類を差し出す。書類って言っても、薄い紙のような端末に表示されたもので、電子的なものだ。
「中央医局からです。今月の定期検診さぼりましたね」
「う」
僕は呼び出し、召喚状を手に固まる。
「ドクターが泣いてましたよ。3回連続でさぼったそうじゃないですか」
僕は隣を歩くボブの頑丈そうな体をちらっと眺め呟く。
「いいんだよ。・・・どうせ無駄なんだから」
「!」
「・・・ボブだって知ってるだろう? 僕の体が汚染されている事を」
ボブは青くなって、僕の言葉を遮る。
「一矢!」
「とっくの昔に告知されてるよ。・・・というか、僕の部隊があの光を浴びたことは有名じゃないか。あの光を浴びて今も生きているのは、もう僕だけだ。治療法、まだみつからないんだ。・・・僕の時間はもうそんなにないはずだよ。ねえ、だったらどっちでもいいだろう? 定期検診なんかしたって、同じなんだから」
「・・・」
「どうせもうすぐ死ぬんだから」
僕はいっそさばさばした感情を抱く。怯えて生きるのは、・・・堪え難い。思ったよりも苦痛だ。
「僕に残された時間が少ない事を委員会だって知っているから、僕の最後の望みを叶えてくれたんだ。そうでなければ、僕は今ここにはいなかったはず。そう思わないか?」
ボブはじっと僕の話を聞いていたが、やがてぽつりと呟いた。
「そう簡単にはいかせませんよ」
「ボブ?」
「そう簡単にはいかせません。・・・委員会が一矢をあっさり諦めると思いますか? フォースマスターという星間最強の高位能力者を、切り捨てると思いますか?」
僕は顔を伏せた。
「委員会か・・・。たしかに足掻くかもね。でも現実は待ってはくれないんだよ。今更どうするっていうのさ」
「・・・方法はありますよ。解決策ではないかも知れませんが、時間を引きのばすことは可能です」
そう言ってボブは空を見上げた。
「ボブ?」
「コールドスリープ・・・」
「!」
僕は、はっとしてボブを見返す。ボブが何を言いたいのか、うっすらと、いやはっきりと理解出来た。
「最悪、そうなるんじゃないでしょうか」
「・・・」
「委員会にしろ、総代(星間連合総代表)にしろ、・・・最後はそれを実行するような気がします。遠い未来で治療法が確立しないとは言い切れませんから」
ボブは空を見ながら呟く。遠く雲の下に飛行機が見えた。白い雲を引き南に流れていく。
「僕が死なない様に半永久的に眠らせるってことか?」
僕の承諾もなしに?
僕はそう思って、苦々しい感情を心の中に閉じ込める。僕の意見を無視したやり方は、いつも思うけど、かなり頭にくる。自分のことぐらい自分で決めたい。その権利すら僕にはないというのか!?
「半永久的とは限りませんよ。意外に目覚めは早いかも知れない」
そう言ったボブの言葉を、僕は首を振って否定する。
そんなこと有り得ない。ありっこないよ。
「ボブ、これはそう簡単には治らないんだよ。遺伝子レベルの話じゃない。・・・細胞が死滅していくんだ。ウイルスとか、核酸の話じゃない。一部の細胞がやられてるわけでもない。僕の体を構成している全細胞がやられてしまってるんだよ。幹細胞も全部だ。・・・もうどうしようもないんだよ。移植も通用しない。ワクチンも遺伝子改変も通じない」
「・・・」
「治療法なんて、・・・ありえない。いっそ僕の記憶をどこか外部システムに落とし込み、・・・僕の記憶や情報だけを取り出して利用した方が、遥かに効率が良いはずだ」
「一矢!?」
僕は大きく息を吐き出し、続ける。
「無駄なことなんだよ」
誰よりも何よりも、僕がその事を一番良く知っている。僕の記憶の中の、この世界では有り得ない知識が僕に告げている。フォースマスターといえども、・・・何も出来ないのだという事を。
僕は黙ってボブの横に並んだ。
「ボブ・・・」
「はい」
「死ぬのは恐い。凄く恐い。でも・・・コールドスリープから目覚めた未来で、・・・誰も知らない未来で目覚めるのはもっと恐いんだ。・・・そこには誰もいないんだぞ。僕の友達も、兄弟達も、お前や他の皆も・・・。誰もいないんだ」
僕はそれが一番恐ろしい。見知らぬ世界に放り出されるのは、何よりも恐い。耐えることなんてきっと出来ないだろう。
「一矢」
「・・・」
「でも俺は、俺達は・・・」
ボブは僕の隣を歩きながら呟いた。
「方法があるなら、例えそれがどんなものであれ、・・・それにかけて欲しいと思いますよ」
「ボブ・・・」
「一矢がどんなに嫌がっても、俺は・・・あなたに死んで欲しくないんです」
僕は、ボブの横顔を見つめた。
「まあこれは俺のひとりよがりでしょうけど」
僕は何と言っていいのかわからなくなった。ボブがとても心配してくれていることは、わかる。大切に思っていてくれることもわかる。
でも僕は・・・。
僕はきっと、コールドスリープはしない。・・・そんなことしたくない。兄弟達や友達やボブ達と同じ時間軸を生きたい。同じ時を過ごしたいんだ。
「ボブ・・・」
「気にしないで下さい。独り言ですから。それにまだ治癒の可能性がゼロと決まったわけじゃない。きっと道は続いています」
僕はそっと瞳を閉じる。
「きっと続いています」
ボブはそう言って、僕を追い越して行った。
僕はボブの大きな後ろ姿を、ちょっぴり曇った目で追う。優しさが胸に染みて、痛かった。もうすぐいなくなるはずの僕が、・・・もっと生きていたいと思ってしまう。現実は過酷で、容赦がないのに・・・ついつい、夢をみたくなる。僕の中の時間はどんどん少なくなっているはずなのに・・・。
僕はこの先の世界を見てみたいと思ってしまった。ボブ達が描く世界を見てみたいと思った。


夢を下さい。
僕に生きていけるだけの夢を・・・。
そうしたら僕はもう少し頑張れるから。きっとまだ生きていけるから。
僕はそう誰かに願いたかった。どこの誰でもいい、誰かにそう願いたかった。


「一矢、あそこに虹がかかってますよ」
ボブが僕を振り返り空を指差す。遥か彼方の稜線の向こうに、淡い色の虹の帯が見えた。
「虹だ・・・」
「ラッキーですね」
ボブはそう言ってくすっと笑う。
「そうそう虹なんか見れないんでしょう? 俺も久しぶりに見ました」
今迄ほとんど宇宙暮らしだったから、こういった自然現象を見ることはあまりない。ボブの言う通り久しぶりに虹を見た気がする。
綺麗だ。
正直そう思った。
「生きる事を諦めるのは、敗北ですよ」
「ボブ?」
唐突な言葉に僕は戸惑う。
「・・・生きて下さい。最後のその瞬間まで」
ボブが何を思ってそう言ったのか僕にはわからない。でも・・・僕は嬉しかった。なぜだかとっても嬉しかったんだ。



←戻る   ↑目次   次へ→