3.冷え症
寒い季節が訪れました。いくら厚着しても足が冷える、腰がスースーと風が吹き抜ける感じがするという人をみかけます。
このように手や足、腰など体の一部分が冷える人を「冷え症」といい、男性より女性に多くみられます。冷え症の人は冬場はもちろんですが、夏場でも冷房のよくきいた場所ではつらく感じます。
冷え症は自律神経がみだれ体温の調節がうまくいかなくなったためにおこるといわれています。そのため頭痛、のぼせ、めまいなど不定愁訴(ふていしゅうそ)を訴える人も少なくありません。
冷え症は現代医学では病気としてとらえませんが、東洋医学では患者さんの状態(証)を知るための所見として重要視されます。すなわち、冷え症の人は体が冷える状態にあるから冷えるのであり、からだの状態を整えることで改善されると考えるわけです。
冷え症のタイプ
(1)陽虚証(ようきょしょう)タイプ
四肢、腰や腹が冷えます。元気や気力がなく、いつも眠い。頻尿、夜間トイレの回数が多い。消化不良や水様性の下痢をおこすことがあります。
陽虚とは陽の気が不足(虚)している状態のことです。明るくほがらかな人のことを陽気な人といいますが、私たちが活発に活動するために必要なエネルギーを陽気だと考えて下さい。ここでいう気とは食べ物や空気により得られるエネルギー、本来備わった生命エネルギー(腎の気といいます)などを指すことばです。
(2)脾虚証(ひきょしょう)タイプ
疲れやすい、食欲がない。四肢の冷えや腹が冷えて痛み、温めると楽になる。便秘(気ばらない出ない)あるいは水様便、ときには兎糞状の便などが現れます。
脾とは脾臓ではなく、東洋医学では胃腸で吸収された栄養物を全身に運搬する機能のことをあらわします。このような機能が落ちることを脾虚といい、飲食の不節制、長い間の心労、過労により起きます。
(3)血虚証(けっきょしょう)タイプ
顔色が悪い、皮膚につやがない。めまい、立ちくらみ、冷えのぼせがみられます。女性では月経痛、月経の遅れ、無月経があらわれます。
東洋医学でいう血とは今でいう血液と同じく、組織・器官に栄養や酸素を与える働きだけでなく、血を循環させること(心)、量を調節すること(肝)、脈外に溢れず全身に行きわたらせること(脾)などの働きも含んで考えます。したがって血虚とは貧血によるもの、脾胃の働きの低下によるもの、循環不全(血お:けつお)によるものなどがあります。
(4)気血虚証タイプ
気と血は密接なつながりがあり、気虚・血虚と同時にみられることがあります。
症状は(1)と(3)の症状が合わせてみられます。
冷え症の鍼灸治療
冷え症には各タイプにあわせて図1のような経穴(ツボ)が使われます。冷え症には温灸(痕のつかない温かいお灸)が多く使われます。家庭では市販の温灸や指圧を行って下さい。温灸はお灸をした周囲が軽く発赤する程度。指圧は気持ちの良い強さで1カ所5〜6秒で10回くらいずつ押して下さい。