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大植英次プロデュース

大阪クラシック OSAKA CLASSIC

−御堂筋にあふれる音楽-
2006.9.3.sun - 9.sat


9月3日(日)

1

オープニングコンサート −相愛学園本町講堂−

オープニングコンサートの会場相愛学園に30分前に到着。講堂(ホール?)の前に並ばされることしばし、満員の会場でいよいよ始まる。
相愛学園の学生オーケストラの中に、大阪フィルのブラスセクションの見慣れたメンバーが入場。
そして大植英次登場、コープランド作曲「市民のためのファンファーレ」が華やかに鳴り響く。
気分は盛り上がる。そして大植の指揮する相愛学園オーケストラがエルガーの「威風堂々」を演奏。
ゆったりしたテンポでありながら堂々たる演奏だった。
学生オーケストラの実力を侮ってました。技術的に何の問題もないし合奏能力も悪くない。
スタートは上々。

2.

神崎悠実(ヴァイオリン)のコンサート −アクセスの2Fホワイエ(ロビー)−

相愛から歩くこと10分、潟Aクセスの2Fホワイエ(ロビー)に到着。神崎悠実のヴァイオリン演奏だ。
ゴールデンウィークの≪星空コンサート≫(大阪城公園野外コンサート)で“チゴイネルワイゼン”を弾いた学生。
早目に着いたため一階で待たされたが、その二階で練習してる神崎さんのヴァイオリンが聞こえてた。
赤のスタインウェイが置かれた会場は狭く、ほとんどの人がロビーのじゅうたんの上に座って聴く事になる。
開演時間になると大きな拍手が階段のほうで沸いてくるのでそちらを見ると、大植英次がやってきたのである。
会場の聴衆に「どうか楽しんでいってください」と話しかけ、演奏が終わるまで傍で聴いていた。
全50公演のうちの40以上の会場に行くつもりですというからびっくり。<大植英次プロデュース>と銘打った催しに偽りはなかった!
予想外の彼の登場にみんなびっくり、演奏後には握手したりみんなから話しかけられたり・・・・
神崎さんの演奏、音が大変きれいでふくよかな温かみのある、ヴァイオリンらしい演奏で、個人的には好きな音だった。このまま良いところを磨いていって欲しいなと思います。特にチャイコフスキーの「メロディー」にその美しさが出てたように思う。


9月4日(月)

3.

ホルン五重奏(村上哲のホルン) −オカムラ大阪ショールーム本店−

ホルンの村上哲さんが中心になった演奏会で、村上さんがゴムホースを使って音を出し、ホルンの原理を説明、会場も和やかな雰囲気。そして「ゴムホースのほうがうまかったと言われないよう頑張ります」と笑いをとった後に演奏したのがモーツァルトのホルン五重奏曲。
狭い会場に響くホルンの音にうっとりしてしまった。大阪フィルの演奏会では、ホルンがもう少し頑張ってくれたら・・・と思うことが何度かあったけど、こうしてすぐ傍で聴いてみるとそんな不安も消し飛んでしまった。
ここでも大植英次がトレードマーク(?)の長いマフラーを身に纏って司会を務めていた。


4.

ヴァイオリンとヴィオラのデュオ −スターバックスコーヒー御堂筋本町東芝ビル店−

一時間後、今度は喫茶店でヴァイオリンとヴィオラのデュオ。
前の会場から歩いて10分、おなかもすいてパンとコーヒーで一息。
時間になるとここにも大植英次来場。
ヴァイオリンとヴィオラのデュオは聴いたことがないので、シュポアの二重奏曲が始まってもその響きが今ひとつしっくりこなかった。そして曲が進むうちにヴィオラの上野さんがミスをして(リズムのとりづらい部分が続いてた)やり直すハプニング。
すごいのはここから。途中からやり直すことになったが、その後の集中力に感動!目つきが変わり、難しいリズムをきちっと合わせながらどんどんどんどん集中して行ってるのが音にもはっきり出てきて、ややだれ気味だったこちらもその気迫に負けじと背筋を伸ばし、集中!
本気モードのアンサンブルの素晴らしさを堪能したと同時に、プロとしての力をひしひしと感じさせてくれた。
楽しいアンサンブルだった。
会場を出る時、大植英次さんの目の前を通ることになり握手。思ったより小さかった。
問題はこの後・・・・

5.

モーツァルト作曲クラリネット五重奏 −フレンチダイニング プラーネ−

19:30からレストランでモーツァルトのクラリネット五重奏曲があるので聴きたいのだが、レストランは予約でいっぱい、演奏を聴く人はレストランの外で立って聴くしかないのである。
時間は30分以上ある・・・・
ブルックス・トーンのクラリネットでモーツァルトの五重奏曲・・・・
秋の夜長に聴くこの曲は、心のオアシスとでもいえるような素晴らしい音楽。
よし、決定!立ってでもいい、聴こう!
決心して歩道に立ってひたすら待つ。それも目の前でフランス料理を食べてる所で・・・・
(これはどう考えても会場設定の間違いです。来年はこんなことのないようにしてくださいね。)
ブルックスのクラリネット、ふくよかな心地好い音色がモーツァルト晩年の名曲を堪能させてくれた。
弦楽器がもう少し余裕のある音だったらさらに素晴らしいものになっていたと思う。
大植英次が聴衆と一緒になって(というか扇動して)「アンコール・アンコール!」。・・・・
演奏が終わりかえろうとすると大植英次が外に出てきてみんなと立ち話。
私も握手しながら「大阪を離れたらだめですよ」と言うと、「ぼくいま大阪に住んでますから。」という返事。
答えになってないような返答でしたが、大阪のファンの気持ちはわかってくれてると思います。
疲れる一日だったけど、充実した一日でもあった。

御堂筋の銀杏並木を見ながらじっと待つ・・・


9月5日(火)

6.

チェロとコントラバスのデュオ −明治安田生命大阪御堂筋ビル1Fエントランス−

昼休み会社の同僚と明治安田生命の1Fロビーでのコンサートに駆けつける。
チェロコントラバスのデュオという興味深い組み合わせだったが、会場が広かったのと人垣の後で聞いたため、チェロがあまり響いてこなくて残念だった。
ここでも大植英次が司会し、コントラバスの三好さんがそれに答えるように
「僕たち団員にとってもこうして皆さんの身近なところで演奏できて大変嬉しい。こんな機会を作ってくれたことに感謝します」と挨拶。
オケの皆さんにとっても大変貴重な経験になっただろうことは、いろんな会場で肌で感じる。


7.

モーツァルト作曲フルート四重奏曲第1番 −そごう劇場−

夕方、そごう劇場で榎田さんのフルート、長原幸太のヴァイオリン、小野さんのヴィオラ、秋津さんのチェロでモーツァルトのフルート四重奏曲。
大阪フィルのトップ奏者のアンサンブル、これはどうしても行かねば!と思い駆けつけたのだが、会場のそごうに行き、14Fでエレベーターが開いたとたん目の前で演奏しているではないか。予定時刻になってないのに何で?と思いながらも、ほんの2・3メートル先から聴こえてくる音にうっとり。後半だけしか聴けなかったが、オケのトップ奏者達の演奏はすごいと感じた。
たぶん、劇場には定員の聴衆しか入らせず、あふれた人たちのために入り口で演奏してたのでは?
満席で入れないという寂しい思いを持ちながらこの日は終了。


9月6日(水)

8.

ファゴット三重奏 −オカムラ大阪ショールーム−

16:30オカムラ大阪ショールームではファゴットの三重奏という面白い演奏会。
途中から聴いたので最初の曲はわからないが、着いたとたんに大変面白い曲が始まった。
大阪フィルのコントラバス奏者、石井博和さん(今日この後にお目にかかることになるのだが・・・)が、同じ大阪フィルの主席ファゴット奏者畦内さんの初リサイタルの時に作曲したという「バッハの鳥小屋」という曲。ファゴットのリードの部分だけを外して鳥の鳴き声を真似たり、「バッハの鳥小屋」「バッハの鳥小屋」と歌ったり・・・・実に楽しく笑いながら聴いてました。
チャイコフスキーの「くるみ割り人形」をジャズ風に演奏したり、アンコールにジャズの定番「テイク・ファイブ」を楽しませてくれたりと、肩のこらないひと時を過ごせました。
ここにも大植英次登場

余談:ファゴットの音域の最も低いのがシの音で、マーラーの交響曲第1番にはその下のラの音が書かれているとのこと。その音を要求されると奏者はファゴットの先に筒を付け足してその音を出すとのこと。



9.

フルート・ソロ(野津臣貴博) −大丸心斎橋店1F−

時を移さずすばやく心斎橋の大丸百貨店に移動、野津さんのフルートソロを聴きに行く。
歩いて10分もかからないのだが、会場に着くともう大植英次が来てる。
百貨店の一階ということでやや騒々しい。
派手なシャツを着た野津さんのワンマンショー!
ドビュッシーの「シリンクス」、バッハの「無伴奏フルートのためのパルティータ」、ジョリヴェの「五つの呪文」など、彼の長い解説つき。そして「五木の子守唄」が決して子供を寝かせるための歌じゃなく、子守として年季奉公してる娘さんが、年季が明けるお盆が待ち遠しい、そんな状況の歌なんだという説明を聞いた後にその演奏を聴くとなんだかしんみりしてしまった。
予定時間を過ぎていて、店の人が“ありがとうございました”と終わらせようとするにもかかわらず、アンコールを無理やり2曲もやってしまった野津さん、お疲れ様。
おかげで次の会場アクセスでは次の演奏が始まっていた。


10.

コントラバス・ヴィオラ・メゾソプラノとピアノ −アクセスの2Fホワイエ(ロビー)− 

コントラバスと歌(メゾソプラノ)とヴィオラという面白い組み合わせの演奏会。
このコントラバス奏者が、前述の<3本のファゴットのためのバッハの鳥小屋>を作曲した石井博和さん
私が会場に着いた時演奏(?)してたのが、大道芸ではありませんと言いながら、「暴走族とパトカー」のモノマネ。
そのあと、「ヴィオラを弾く人(歌とヴィオラとピアノ)」という石井さん作曲の曲が演奏されたが、白眉はその後の、石井博和自身が編曲した唱歌「砂山」変奏曲-独奏コントラバスのための-
この「砂山」、・・・海は荒海 むこうは佐渡よ・・・という新潟の歌。その佐渡に古くからある和太鼓、『鬼太鼓(おんでこ)』の響きをコントラバスで表現すると言うのである。
これがすごい!
子供の頃からよく知ってるあのメロディーが始まる、そして太鼓の音。
ボン・ボン・・・・
次第に大きな太鼓のように響く、腹に応えて来る・・・・
なんなんだ、この響きは・・・・太鼓?コントラバス?唱歌?・・・・

大阪フィル団員のクラシックコンサートであるということを完全に忘れてました。
不思議な、それでいて心の奥の方にずっしりしたものを感じる、そんなひと時でした。
石井さん、ありがとう。




9月7日(木)

11.

ピアノ三重奏 −アクセスの2Fホワイエ(ロビー)−

この日も昼休みからスタート。
アクセス2Fでヴァイオリン・チェロ・ピアノの三重奏。
ハイドン・シューベルトのトリオ、モーツァルトのセレナードやサン・サーンスの“白鳥”など、いわゆる室内楽の名曲を楽しませてもらった。
一青 窈の“ハナミズキ”や唱歌“村祭”もあって、楽しい昼休みになった。



12.

オーボエ・ホルン・ピアノの三重奏  −アクセスの2Fホワイエ(ロビー)−

同じ会場でホルン三重奏の演奏。
オーボエ・ホルン・ピアノという組み合わせは今まで全く聴いたことがない。
メインのプログラムは、ライネッケ(Carl Reinecke)作曲のホルン三重奏曲で、後半の3・4楽章の前にホルンとオーボエの独奏曲を挟むというちょっと変わったパターン。
初めて聴くライネッケの曲がなんともいえず心地好かった。オーボエとホルンという組み合わせの妙。
オーボエでモーツァルトのオペラのアリアを演奏した浅川さんの柔らかでほっとする音色が心を和ませてくれる。オーケストラの中で演奏してしてる時もその暖かい音が一服の清涼剤になることが多い。
ちなみに、この翌日シンフォニー・ホールでベートーヴェンの交響曲第3番「英雄(エロイカ)」の二楽章で葬送行進曲として有名なオーボエのテーマを吹いたのもこの浅川さん。オーボエがうまくないとこの曲が生きてこないくらい重要で、この日の名演の立役者の一人でもあった。
 その浅川さんの奥さんのピアノがまた良い。こんなアンサンブルもあるんだな・・・

夫婦の息のあったところも見せられました。




13.

モーツァルトとバッハの夕べ −竹中工務店1Fエントランス−

場所を移して今度は竹中工務店の1Fエントランス。
フルートの野津さんと、コンサートマスターの一人梅沢さんを中心にしたアンサンブルで、モーツァルトのフルート四重奏曲とバッハのブランデンブルク協奏曲第四番
最初のモーツァルト、意気込みすぎてフルートがややせっかちに出て心配したがさすがすぐに落ち着いてバランスの良い四重奏が堪能できた。
室内アンサンブルでファーストVn.がしっかりしてると全体が引き締まる。その良い例が梅沢さんが加わったこの日の演奏。
後半のバッハは総勢11名のアンサンブルで、その演奏はまるで指揮者がいるかのような纏まった、元気のある音楽だった。


9月8日(金)

14.

ピアノ連弾(相愛大学の学生) −アクセスの2Fホワイエ(ロビー)−

昼休みのひと時、学生によるピアノ連弾。アクセス2Fの真っ赤なスタインウェイにドレスアップした相愛大学の女子学生が2人ずつ2組、楽しい曲を聞かせてくれた。
映画の主題曲や日本の唱歌をアレンジしたもので、クラシックと言う範疇ではないけどリラックスして楽しめた。特に、<サウンド・オブ・ミュージック>の3曲をこういうところで不意に聴くと、危うく涙が出そうになってしまった。青春時代に何度も何度も見た想い出深い映画のシーンが浮かんできて、ジュリー・アンドリュースの歌声が蘇り、ピアノに合わせて一緒に口ずさんでいました・・・・・
そしてこの演奏会で起こったハプニング、ピアノの横に立って聴いていた大植英次がピアニスト達の楽譜めくりをしていたのです。
こんな和やかなひと時、いいじゃないですか!



15.

ベートーヴェン作曲 七重奏曲 −オカムラ大阪ショールーム本店−

次に聴いたのは、≪大阪フィルコンサートマスターの長原幸太とその仲間たち≫によるベートーヴェンの七重奏曲。
メンバーは大阪フィルから3人、京都市響から3人、金沢からの1人。どういう集まりかはわかりませんが、幸太くんと金井さん(クラリネット)の話を交えての楽しい室内楽。
 
   幸太 ≪赤ちゃん、いくらでも泣いてもらっていいですから。≫
       ≪最後のカデンツァの部分でヴァイオリンが華々しい演奏をしますから
         そのときは僕だけに注 目してくださいよ。≫

こんな雰囲気でベートーヴェンの若い頃の作品を楽しく聴かせてもらった。
幸太のヴァイオリン、金井さんのクラリネット、共にすばらしかったし、若い女性ホルン奏者の蒲生さんも、緊張気味だったけど頑張ってアンサンブルを支えていた。
演奏後、幸太君への質問コーナーで、大植英次さんの普段の様子を尋ねた女性に対する幸太君の答え、
「よくしゃべります、それもほとんど音楽の話ばっかり−音楽バカですね-」と首をすくめながら答えていたのが印象的でした。
その大植英次は最初に挨拶だけして、この日の最後にシンフォニーホールで演奏するベートーヴェンの交響曲“英雄”の練習のためにすぐに移動して行った。
(ちなみに幸太くんもその演奏に参加することになる・・・)




16.

フルートの夕べ(野津臣貴博) −アクセスの2Fホワイエ(ロビー)−

シンフォニーホールに行く前にもう一箇所、フルートの野津さんの演奏を聴きに行く。
先日と同じ派手なシャツを着た野津さん、ドップラーの有名な「ハンガリー田園幻想曲」を力演。ここでもやや力任せの演奏だったが、つきのモーツァルトは力の抜けた素敵なモーツァルト演奏だった。
野津さんのプログラムが終わったのが18:45、もう出ないと19:30からのシンフォニーホールの大阪フィル演奏会に間に合わない。
「シンフォニーホールに行かれる方はどうぞ行ってください」という野津さんの言葉で階段を下りようとしたとき、残ってる人たちのためのアンコール曲「赤とんぼ」が聴こえてくる。階段の途中で最後まで聴き入ってしまったではないか・・・・・


17.

ベートーヴェン作曲 交響曲第三番「英雄(Eroica)」 −ザ・シンフォニー・ホール−

今回の<大阪クラシック>の中でいちばん注目していたのがこの演奏。
唯一のコンサートホールでの演奏、しかも曲がベートーヴェンの大曲。
入場料も一番高くて2000円。

開演10分前にシンフォニーホールに到着、汗が止まらない。
会場には年配の聴衆のほかに、高校生のグループや子供たち、そして若い女性もたくさん目に付いた。
汗をぬぐい、気持ちを落ち着けて開演を待つ。

この演奏会には私的には二つの思いを持って臨みました。
 1.<大阪クラシック>の最後を、最高の演奏で飾って欲しい。
 2.大植英次がどんなベートーヴェンを聴かせてくれるか。


まず一番目の思い、この催しは明日もう一日あるけど、私が聴くのは今日まで。あちこちの会場に分散して演奏していた団員が本拠地でどのようなクライマックスを創ってくれるのか興味津々。
それと共に、練習不足で雑な演奏になるんじゃないかという不安もあった。

最大の関心事は、<大植英次がどんなベートーヴェンを聴かせるか>という一点。
大阪フィルのベートーヴェンといえば、朝比奈の名演が不滅の光を放っている。その大阪フィルを振って≪大植英次のベートーヴェン≫ここにあり、という演奏が聴きたいのである。
大植英次、大阪フィルの定期演奏会でベートーヴェンの交響曲は一度だけ、第七しか取上げてない。このときの演奏は、正直言ってそれほど感動的なものではなかった。定期以外で第四番も聴いたが、特別印象に残るほどの演奏ではなかった。
ベートーヴェンの9つの交響曲をどう演奏するかは、指揮者にとって最大の山なのである。いつかはこの9つの交響曲を集中して取上げ、自信を持って聞かせて欲しいという願いは常に持ち続けている。


こんな思いで臨んだ演奏会、いよいよ始まった。
オーケストラのトゥッティ(全奏)が2回叩きつけるように和音を演奏し、すぐにチェロが主題を歌うという開始部分、結構あっさりと入ってゆくのでやや拍子抜けしたが、このほうが力まず・入れ込みすぎずに自然な流れなのかも知れないと思い直す。長い第一楽章はこの流れのまま素直な音楽に終始。
そして第二楽章、葬送行進曲の有名なテーマを弦楽器が流れるように(テヌートぎみ)歌い、やや曲想にマッチしないなと思っていたが、次のオーボエの柔らかなメロディーに魅了されていき、次第にこの演奏に引き込まれてゆく。そして中間部のトリオの主題が哀愁を漂わせたオーボエで切々と訴えてくる。そしてティンパニーの強烈な音と共に音楽が一気に盛り上がる部分に来ると、<これが今の大植英次と大阪フィルのベートーヴェンだ>と言わんばかりの熱演となる。
ここからはまさに鬼気迫るオーケストラの演奏で、久しぶりに背筋に電気の走るような興奮を覚えた。
大植英次と大阪フィルが一体となって<大植サウンド>を創り上げてることを実感する。
 (今から4年前の2002年2月17日、このホールにこの音楽が流れたことを後で思い出しました。朝比奈のお別れ会で。)

続く三楽章のスケルツォ、ここもしっかりしたアンサンブルで立派な音楽。そしてトリオでのホルンの三重奏も安定した音で、心配は要らなかった(この部分でホルンが音を外すとせっかくの名演も少ししらけ気味になるから)。
終楽章の変奏曲も堂々とした演奏で、全体を通じて予想以上の素晴らしさだった。

先に述べたように、大植英次のベートーヴェンに少し不安を持っていたのだが、今日の演奏はそれを吹き払ってくれた。「運命」や第九でどんなベートーヴェンを聴かせてくれるか楽しみになってきました。
そして特筆すべきは大阪フィルの素晴らしさ!練習もそれほど出来てないだろうし、楽員にとって超多忙な毎日を過ごしてきた後だし、多くを望むのは無理かなとやや諦めの境地で聴きに行ってた私をものの見事に裏切ってくれた。音楽監督大植英次と完全に一体となったオーケストラに大きな拍手を送ります。
オーボエの浅川さん、ホルンの村上さん、コンサートマスターの梅沢さん・・・・・・・・・・


アンコールにシュトラウス兄弟の「ピツィカート・ポルカ」。この曲で大植英次は、楽員がついて行けないような指揮をして会場を沸かせる。そして曲の途中でグロッケン(ベル)を鳴らすために、第1ヴァイオリンの一番後ろの奏者が立ち上がるのだが、ベルを持ち損ねて音が出ない・・・・大爆笑。
大植英次も、<もういいです、座ってください>と苦笑い。
何を隠そうこのヴァイオリン奏者、第1コンサートマスターの長原幸太君
当日17:30頃まで別会場でベートーヴェンの七重奏曲を演奏していて、ここに駆けつけて最後尾で演奏に参加していたのです。