128.虚礼ではないか? この行為
●量販店後方出入り口での「礼」
スーパーなどの量販店へ行くと、売場従業員(パート、アルバイト社員を問わず)がバックルームから売場へ出入りする時に何かを言いながら売場方向に向かってお辞儀をしているのをよく見かける。よく見ると後方作業場から売場へ入ってくるときは「いらっしゃいませ」、後方作業場へ出るときには「ありがとうございます」といって出入りしている。
店の管理職と思しき人の場合を別にしても、圧倒的多数の売場作業員の人のこの動作は、「決められていることだからやっている」の域を出ていないのではないか。その所作をみていると、しぶしぶやっている感じで、空虚なものを感じてしまう。
またこれを見てどれほどの顧客が「この店は顧客への気遣いがよい店だ」と思うであろうか?多分「ノー」だと思う。
私はこれは「虚礼」であり、むしろ害のほうが多いとさへ思う。
●その目的は?
そもそもこういう行動を義務付ける目的は何であったのだろうか? いろいろ想定をしてみた。
他にどういう意味があるのだろうか?
- 売場にはいっぱい顧客がいる。その場所へ出入りする時に常に礼をすることで顧客を意識させるという考え。
もしそういう“ストイック”な考えならこの意味づけを日常的に説明教育しながらでないと誰も理解しない。現にこの「礼」の行動は非常に義務的になされているとしか思えない人が圧倒的多数だ。
- 売場にいる顧客に、「我店の社員はは顧客を大事にしています」というメッセージ発信だという考え。
売場にいる顧客は誰も自分に対して「礼」をされているとは見ていないから、メッセージ性はきわめて弱い。
野球選手はプロ野球でもグラウンドに出入りする時にグラウンドに向かって帽子を取って一礼をする。これは観客の存在とはまったく関係がない。小中高校大学の野球部員は練習時でもグラウンドに向かって出入りする時に計2回「礼」をする。賛否はとかくとして、スポーツをさせていただく「場所」に向かって礼をしているのである。それは心身鍛錬の場所に対しての礼だという考え方もあろうし、相撲のように土俵には神がいるという想定がなされていることによる礼もある。いずれもこれは非常に“スピリッチュアル”なものである。
これらは指摘した事例とは少し違うように思える。
●顧客に対する具体的意味のある行動をもっと豊富に!
小売業のお店はそういうものではなくて、顧客に具体的に意味のある礼節や言葉遣い、態度振る舞いでなければならないと思う。
後方で入口で誰に向かってしているのか分からないような「礼」よりも、大きな声と笑顔で「いらっしゃい、いらっしゃい、今日は○○が安いよ!」とでも言ってくれるほうがよっぽど楽しくてスカッとする。また例え作り笑顔でも、客の目を見てしっかりと「いらっしゃいませ」と響くような笑顔で言ってくれる店員さんの方が意味のある行動だと感じる。