124.NOVAの間違い
●事件の概要
この4月3日に最高裁は外国語会話塾NOVAに対し、事前に受講時間単価を安く購入した前払い授業料を中途解約する場合、例え契約規定があってもそれまで受講した授業料を高い時間単価で計算し、清算手続きすることを無効と判断した。
この案件では、債権者が事前にもっとも受講単価が安い600ポイント(時間単価1200円)72万円を事前支払で契約し、386ポイント使ったところで中途解約した。これに対しNOVA側は約定に基づきこれまでの受講時間単価を1750円とし、1750円X386ポイント=675500円分を利用済みとし、残余の44500円しか返還しなかったようだ。
裁判所はこのような場合意は最初に契約した時間単価1200円を基礎に、いまだ受講していない部分の授業料を変換すべきとした。当然だと思う。
●NOVAの間違い
一般的に、新規顧客を獲得することはコストがかかり、既存顧客に長く顧客であり続けてもらうことが企業側からも有利であり、顧客にとっても満足感さへあれば長く顧客でいることに抵抗はない。したがって長い受講時間を経た顧客には安い時間単価にするという発想自体は間違ってはいない。
NOVAの間違いは、事前に授業料単価が最も安い600ポイントの契約をさせてまず授業料の総額を前払いさせようとしてきたことだ。そして中途解約の場合は時間単価が段階的に高くなり、中途解約を損だと思わせてしにくくさせてきたことにある。しかも時間単価の設定から見ると中途解約時の時間単価はかなり高く、差額が大きい。
これでは法律論はともかく、顧客の納得観は得られない。顧客視点がまったく欠如しているといわざるを得ない。
顧客の納得観と、企業が長く顧客でいてもらうことの経済性の両立を考えるのであれば、例えば
こうすれば顧客の負担先行感はなくなり、顧客も納得したはずだ。
- 最初の授業料単価を1750円とし、原則月払いとする。
- 一定授業時間を経過した後の授業料単価は例えば10%安くする。
- これにつきいくつかの段階を設ける。
- そして一定期間の一括前払いをする場合は、授業料収集の事務コスト相当分と金利相当分の妥当な割引をさらに行う。
ポイント: NOVAのやり方は、顧客のことを考えるというより、中途解約をしにくくして収入を先行させるという企業論理優先の考え方だ。顧客中心というには程遠い。