122.望まれる本格的DS業態企業出現

格差拡大二つの要因
5年くらい前だったか、コンサルタントのR.岩島さんから、日米の小売業態を比較したとき、日本ではデイスカウント業態の企業がまだあまり育っておらず、この部分がこれから出てくるかもしれないという趣旨のお話を伺ったことがある。
アメリカはもともと格差社会であった。日本は「パワーセンター」業態のSCがすこしづつ出て来てはいるが、まだ本格的なDS業態企業のシェアーは低い。
それは少し前まで日本の消費が「一億総中流」とまで言われた時代からそう時間が経ていないこともあろうかと思う。

しかしここへ来て、大きな変化要因が少しずつ飽和化のほうへ動きつつあるように思える。それは二つある。
ひとつは、経済のグローバル化による基本的経済政策要因、もうひとつは人口構造の変化だ。

経済のグローバル化に対し、日本の経済政策は荒っぽく言えば、
  ・国策として企業競争力向上のための経済政策優先。
  ・行政及び企業の効率アップのための「構造改革」政策実施。
  ・市場競争原理の推進
ということになる。
その結果、企業が利益を上げてもその大半を内部留保や新たな設備投資資金、研究開発費投資を優先し、被雇用者への還元は薄く、となってきている。好景気といわれながら消費景気にならないのはこのためだ。そうする理由として、企業の国際競争力維持高揚があげられている。
それは非正規雇用の増大などを生み、格差社会の増大となっている。

もうひとつの問題は、人口高齢化、少子化、人口減少が生産者年齢を少なくしているという問題だ。これも荒っぽく言えば、
  ・生産現場への外国人労働者の増大。
  ・低賃金で働く外国人労働者の存在が日本人の賃金上昇のブレーキになる。
  ・日本人労働者の賃金上昇がさらに企業の生産拠点を海外に移す動きの一層    の加速を招く。

この二つの要因が重なって、貧困層や低所得者層の増大が避けられそうにない。

望まれるDS業態店舗の拡大
こうした悪循環が単純に続くかどうかはともかく、基調としてはこういう流れが今後5〜10年間くらいは続くと見なければならないのではないか。低所得者層は、政治の力で多少救われることがあっても所得格差の拡大傾向は続くだろう。

そのように見た時、商品を安く売る本格的業態が望まれる環境はすこしずつ成熟しつつある。現に、ベイシヤや業務スーパーなどでの外国人労働者顧客は見た目で明らかに多い。

少ない年金生活者、年金自体はまずまずでも医療費等に取られて消費に回す生活資金の少ない人、生活保護世帯、ワーキングプア層、こういった人たちは確実に増えている。そして本当に安く商品提供できるDS業態店舗が育つ環境が整いつつある。