117.“よ〜く考えよう、カードは大事だよ〜♪”(小売業カード導入の目的)
●後任者が求められている課題
久しぶりに元いた会社を訪れた。私の2代後の後任者と話し合う機会があり、ハウスカードであるクレジット兼ポイントカードの今後の展開を迫られているという話が聞けた。問題とされていることは、
これらの問題に対する対応策を求められているというのだ。
- クレジット事業の拡大および収益の確保策(キャッシングの利息関連法規改正による収益減少をにらんだもの)
- 他社カードとの提携問題に対する対応策。
- 携帯電話などの新しい媒体出現などへの対応策。
- 現行カードの魅力付け策。
会社はこのような問題の建て方で担当部署に対応策をよく求めてくるもの。ひとつひとつはそれなりに簡単ではない問題である。
しかしここであわててこれらの問題対応策に振り回されてはならない。
●小売業のカード導入アプローチ
そもそも小売業がカードに取り組む場合、二つのアプローチがある。
第1は、小売販売事業だけでなく、顧客のクレジットニーズにも対応しビジネスの幅をクレジット中心に広げて収益増を狙うというアプローチである。
この場合「ハウスカード(自社カード)」の最大の狙いはキャッシング事業による収益拡大が最大の目的である。ショッピングクレジットによる収益は残念ながらそう大きなものではなく、自社商品の販促の一助にハウスカードの役割はそれほど大きいものではない。
この種のカードの例は、発足当時のOMCカード、セゾンカード、イオンカード、イズミの「夢カード」などがそれにあたる。そしてナショナルチエーン各社や西武百貨店は全国展開を目指して早々と別会社化し、広島のイズミも子会社化した。その方がビジネス展開に有利であるからである。
第2のアプローチはカードのポイント機能を通じて、販促機能や、その発展形態としてのFSPないしはCRMを追求しようという考え方である。
この考え方はカードに必ずしもクレジット機能は必須ではない。
世の中に多くあるポイントカードはこちらに属する。しかし単純にお買い上げ金額に応じてポイントがついたり、また「ポイントN倍セール」に使われるだけのものが日本ではまだ大半である。西武百貨店の「クラブオン」カードやオオゼキのカードのように本格的にFSPやさらにCRMのような顧客戦略にまで踏み込んだ企業はまだ少ない。しかしアメリカ小売業のカードは基本的にCRMのためのカードが基本だ。
●カード導入目的の再明確化を!
ところが世の中にはL−PACK(丸井の子会社M&C開発)のように、クレジット機能もポイントカード機能も併せ持つカードが存在する。私の元いた会社はこのタイプのカードであり、私はその提案及び導入責任者の一人であった。
この種のカードは、導入時及びその後のカード運営の視点がはっきりしていないと、社内で議論がゆれることになる。
事実、私は前述第2のアプローチを明確にしていたが、このカードがクレジット機能(特にキャッシング)で会社に大きな利益をもたらし始めると、第2の視点もぼやけ始め、社内で多くの幹部がまちまちに意見を言い出す羽目になる。
ここで改めてカードの目的を明確にしなければならない。前述どちらに軸足を置いてカード戦略を立てるのかを。
金儲けか、顧客中心主義戦略か、どちらのためにカードを利用するのか。
リージョナルチエーンが生き残っていくためには、私は後者であるべきと考えている。
ポイント: 金儲け(=ビジネス)か、顧客戦略(=CRM)か、“よ〜く考えよう、カードは大事だよ〜♪”