116.積立型保険金、友の会満期の未請求事例から
●損保会社の不可解な対応から
損保各社の保険金未払いが後を絶たないという報道がまだ続いている。
顧客がいろいろな特約に加入していることが多いが、顧客から請求がないためにこれが放置されたままのものが多いことが主な理由だと言う。
毎日新聞によれば、損保業界は顧客から請求があってはじめて支払い手続きを起こすという長年の慣習がこのような結果を生んでいるという。
請求がなければやがて時効になり、それは損保会社の収入になるのであろう。
私も元いた会社で損保事業も仕事の一部として担当していた。
あるときこんなことがあった。
そこではさまざまな損害保険販売の中で、積立型傷害保険の満期案内はがきを発送する場面があった。そこには満期案内とともに契約更改のお願い文が書かれていた。私は部下の担当者と損保会社の担当者に、「保険加入期間の間にこんな事故はなかったでしょうか? もし該当事故があれば保険金が下りるので申請をするように」という趣旨の文言を加えるように指示をした。理由は顧客が「積立ファミリー」などの保険でどのような事故なら保険金が支払われるかほとんど知らないし、まして保険に加入していることさへ忘れている人もいるからであった。
保険会社の担当者はそのようなことは今まで行ったことがないと言った。私にすればこんなことは当然のことという思いがあった。
●元いた会社でもこんなことが・・・
損保業界だけではない。私の元いた会社に「友の会」制度があり、一口につき毎月3000円の掛金を12ヶ月支払うと39000円分のお買い物券が支払われるというものであった。これは人気のある制度であり、多くの顧客が加入していた。この仕事も私の管轄であった。
この制度でも毎回12ヶ月の支払を済ませ、葉書による連絡をしていながら、満期の39000円分のお買い物券交換をなぜかしないまま放置されている顧客がわずかであるが毎回いた。しかも私が気づいて指示をするまでこれが放置され、5年後(だったか?)には利益に組み入れられていたのだ。
私は、「少なくとももう1回はこのお客様に連絡をして満期交換のご連絡をするように」との指示をした。私には満期交換請求がなければ一口36000円の掛金を利益算入してしまうような情けないことはやりたくなかったからである。
●未請求を利益参入にという態度は顧客離れを起こす
積み立て型保険、友の会制度、いずれも顧客から毎月一定の金額をお預かりし、事故や満期時に一定の金額の現金や金券をお支払する仕組みだ。
そして必ずと言っていいほど未請求がある。これを掘り起こして顧客にその恩恵を享受していただくことが顧客本位であり、極めて当然なことである。にもかかわらず、これによる利益をある程度“あてにする”ようなことはあってはならない。
当時私がカードデータで調べた範囲では、「友の会」会員顧客はその大半が我社量販店本体の上位顧客であった。会社が優良顧客として守らなければ顧客でもあったのである。
とすればなおさら未請求を利益算入にというよこしまな態度は許されない行為であったことも判明した。
ポイント: 未請求を利益参入するような業界は、“顧客第一”を語る資格はない。