115.消費者金融の利息問題

少し辛かった消費者金融の仕事
消費者金融において、利息制限法、出資法それぞれの上限金利の間のいわゆる”グレーゾーン”金利解消の方向性が問われている。
私も元いた会社で消費者金融事業も長く担当してきたので、この問題についてはいわゆるグレーゾーン金利でビジネスを遂行してきた負い目がある。当時私は消費者金融事業には余り熱心ではなかった。本業の物販イメージが傷つく心配をしてきたからである。そして最高でも50万円までの融資であり、顧客に生命保険をつけるようなことはしてこなかったし、取立てにあくどいこともけしてやらなかった。しかし法の矛盾であるグレーゾーン金利で商売してきたことに変わりはないし、事実上会社の大きな収益源のひとつにもなっていた。

消費者金融各社の収益力
消費者金融会社はここ5年ほどの間収益力を落としてきているが、それでもかなりの収益を上げている。
  • 武富士は2001年3月期の単体経常利益が2418億円
  • 2006年3月期は同じく897億円
  • アコムは2002年3月聞の経常利益が1718億円
  • 2006年3月期では1130億円
武富士は会長の不祥事もあってかなり批判を浴び、業界収益力1位の座を落としてしまったが、2001年度の経常利益は当時全企業のベスト10に入るほどの収益を上げていた。
前期決算の連結経常利益でも下記のような利益を上げるだけの実力を持っている。
  • アイフルが1269億円で60位
  • アコムが1130億円で70位
  • 武富士が922億円で94位
消費者金融会社は平成16年度、約10兆円の利用があり、その残高も約10兆円である。それなりに個人の金融需要に一定の役割を果たしていることは否定できない。それでも契約者に生命保険までつけて資金回収をし、その結果これだけの収益を上げていることに対し、少し儲けすぎではないかという感情が入り込んでくるのは否めない。

金利引き下げだけでは問題は解決しない
今回自民党のなかでグレーゾーン金利を事実上9年間公式に認めようという案が一旦浮上したが、最終的には3年で利息制限法に一本化すると決まったようだ。この過程で、「利息制限法上限金利20%では、審査が厳しくなり、これによって借りられない顧客がヤミ金融に流れ、かえって混乱する」という議論があった。

この指摘自体は一理ある。現在の法制下でも消費者金融からも相手にしてもらえない人がヤミ金に走っている現状がある。消費者金融の金利が利息制限法に合わせて引き下げられるだけで消費者保護が進むと安易に考えてはならない。消費者金融業界も間違いなく、貸出基準を狭めてくることは間違いない。その結果、はみ出される顧客が必ず出てくる。

しかし、「だからグレーゾーン金利を9年も認める」というのは筋違いで、業界が既得権益の延命を族議員が後押しするようなことは理屈が通らない。
この業界も本音のところでは「顧客第一」とはいえない。
むしろ早期に利息制限法に一本化するとともに、金利が改定されることによって、お金を借りられない人がどれくらい出てくると予想されるか、またそれへの対策をどうするかをもっと議論検討しておかねばならないのに、その議論はあまり聞こえてこないことが心配だ。

ポイント: この問題は、法制度の矛盾解消や、高金利の是正という問題だけでなく、「格差是正」、セーフテイーネット問題でもある。