107 「終身雇用制は最大のセーフテイーネット」 小沢新代表発言

民主党、小沢新代表発言より
民主党の新しい小沢代表がテレビ番組で、「望ましいセーフテイーネットは終身雇用と年功序列制だ」といった。
もちろん彼もこれまでの「終身雇用制」や「年功序列制」を無条件に復活させようというのではない。彼は、民間企業で言う「総合職」にあたるような、上昇志向の人たちには実力主義の適用を主張している。そういうタイプでない雇用を望む人に対しては終身雇用を適用することが社会の最大のセーフテイーネットだと主張しているのである。

これに対して、終身雇用制は良くも悪くも古い日本の体質だと考えている人が多いのではなかろうか? また欧米ではこのような考え方はまったくないと思っている人が多いのではなかろうか?
それはそうでもないのである。特に労働市場の流動性が高いとされてきたアメリカで、日本の終身雇用制を注目する向きがあると聞くと驚く人もいると思う。

アメリカの実情
アメリカは10年以上にわたる好景気が持続している。
他方でアメリカは日本以上の競争社会であり、競争を勝ち抜くための顧客対策やマネジメント思想は日本以上の蓄積と伝統がある。 私が注目してきたCRM(Customer Relationship Management)はその延長線上にある。

そのうえで、けしてアメリカのビジネス社会全般がそうだというわけではないが、次のような状況があることに注目しておく必要がある。
  • 競争に勝ち抜くために、顧客満足度の向上を図らねばならない。
  • それを突き詰めると、顧客と対応する従業員の満足を向上させ、モチベーションの向上を図る必要がある。
  • しかしアメリカは好況の連続で、従業員は会社に大きな不満を抱くとすぐ退職してしまう。
  • その結果、優秀な人材を必要なだけ確保することが困難になり、新たに人材を採用できても教育投資などに時間と金がかかる。
  • 従業員のモチベーションを上げて会社に貢献してもらうためには、長期の雇用保障を制度的にも維持していく必要がある。
  • そういう意味で日本のこれまでの終身雇用制の持つ良さの部分は評価の対象になっているところがある。
100 Best Companies to Work for
アメリカでは「顧客満足」といっしょに、「従業員満足度」というモノサシがビジネス界で一定の市民権を得ている。
アメリカに何でもランキング付けをして発表する、しかしそれなりに権威のある「フォーチュン」という雑誌がある。このランキングのなかに「働くのによい会社ベスト100」というのがあり、毎年発表されている。
(参考 http://money.cnn.com/magazines/fortune/bestcompanies/

評価の指標の3分の2は、従業員からみた会社やマネジメント、仕事に対する満足度などの評価項目であり、3分の1は賃金や福利厚生計画、人種対策、等々の数値項目である。このなかには離職率などが含まれており、よい従業員を長く雇用できるマネジメント力が問われている。

アメリカでも優秀な企業は、従業員を大切に扱い、優秀な従業員を長く雇用しようという努力が行われていることがわかる。こうした視点から日本の終身雇用制度の部分的よさを見ているのであろうと思われる。
日本ではこの20年間くらい、正社員が減り、パート社員が増え、人材派遣会社へのアウトソーシング化が高まり、全体としてはアメリカとは逆の“人材の消耗品化”が進んだ。

民主党小沢新代表の言葉はあながち的外れではない。