105.要介護者の旅行ニーズ
●「いい年をして・・・」
我々が暗黙の常識と思っていること、または逆に見逃している人間の欲求がいくつもある。「いい年をして・・・」ということがよくあるが、例えば高齢者でも結婚願望があるし、素敵な異性を見れば惹かれるものだと思う。
高齢者で、足腰が極めて不自由で、極端な話軽い痴呆の気配があるような方でも旅行に出て美しい景色を眺めたいと思うものだそうだ。
ところがそのような旅行は、おいそれとできるような体制が社会のなかにはほとんどない。せいぜいボランテイヤや高齢者施設ががんばって取り組むくらいが関の山であるという。
民間企業でこのようなことをビジネスとして取り組んでいる例はあまり聞かない。しかしこのようなニーズは今後増えるだろう。
●要介護者の旅行ニーズに応えるには・・・
このニーズにこたえるために必要なことは何だろうか。
安価で良質な交通手段を提供する体制、ヘルパーさんなどの医療介護面のサポート体制、旅先の受け入れ態勢、旅行会社の十分な情報入手とノウハウ蓄積、これら全てがレベルアップしていかねばならない。
- 車椅子が運べ、社内の通路や車椅子固定装置などが施されたバスや車両。
残念ながら高価で、保有しているバス会社も鉄道も極めて少ない。- 旅行に付き添うヘルパーさんや看護師さん、医師、医療機関のの理解とサポート体制。
- 旅行先の休憩所などでのバリヤフリー施設や機能。
トイレ、レストラン、展望台、ホテルなどが障害者や要介護者を受け入れられるようにはなかなかなっていないのが現状だ。- 旅行会社は、3のような情報を十分入手しておくとともに、旅先及び旅の途中での緊急事態に備えた病院などと事前に受け入れ態勢を確認しておく必要もある。
それではこれらのレベルアップを実現していくキーは何なのだろうか?
それは高齢者をはじめとする弱者への思いやりが、国や企業、個人にいたるまでさらに深まっていくことではなかろうか。
まだ十分光の当てられていない顧客ニーズがここにもある。
私の元いた会社の旅行部門の後輩たちがこの課題に取り組もうとしている。
大変うれしい限りである。