94.あるOB会「会則」について
●OB会の目的、理念
ある流通企業のOB会会則を見ていたらこんなことが書かれていた。
○○に企業名が入ることを別にすればすべて原文のままである。
- 第1条 理念
- 我々、○○卒業生は在職中に学んだ「奉仕と感謝」の心を発揮し地域社会に貢献すると共に、株式会社○○グループが未来永劫に繁栄する為に全面的な協力をする事を理念とする。
これを見て私はちょっとびっくりした。このようなOB会の考え方がまだ幅を利かせているのかと思った。
この会則を読めば、「OB会会員は会社に協力すべし」と読めるし、OB会はまるで会社の外郭団体であるようにも取れる。OB会とはそういうものなのかと思ってしまう。
OB会の主役は会員である。縁あって同じ釜の飯を食った者どうしが第二の人生を歩むにあたって、互助と親睦、自己実現等を図るための組織がOB会であると私は思っている。
もちろん会社に協力することは誰もやぶさかではないと思う。しかしそれも義務感ではなく、そうすることが自分にとって喜びに感じるから協力するのである。OB会は任意団体であって、会社の延長ではない。このように「会社への協力」を大上段にかざされれるとそれはちょっと違うのではないかと思う。
蛇足であるが、この文章はなんともおかしい。「協力をする事を理念とする」という表現は日本語になっていない。協力は行動、手段であり、それによって何を実現していくのかその精神的表現が理念であるはずである。
また言葉遣いも現代的表現から外れている。「貢献すると共に・・・」とか、「協力する事を・・・」という下線部分は現代ではひらがなで表現することが普通だ。固くてなんともいえない文章表現である。
●会員資格規定と組織観
もうひとつ「会員資格」についての項目があり、次のように記されている。
OB会入会につき、ある程度の在職年数を求めること自体に異論はない。しかし、この案ではパート社員は正会員としては入会できない。流通業ではどこでもパート社員が重要な戦力として働いており、在職15年以上の方もまた管理職経験者もおられる。パート社員をこのような形で除外?してしまうのはいかがなものかと思う。
- @正会員は○○に15年以上在職した正社員で当会の役員会で承認を得た者とする。
それに正社員であっても、「役員会の承認」というのはなぜ必要なのか?。 形式要件に該当すれば原則加入自由としてはいけないのか?任意団体であるのに「入れてやる」という姿勢だ。
とにかくこの会則が想定するOB会は、いわゆる「敷居が高い」組織だと感じた。
そういえばこのような会則はいかめしい文語体的表現ではなく、もっとやわらかい「口語体」表現の会則の方がよいというのが私の意見でもある。
OB会はフラットで敷居が低く、誰もが入りたいと思うような雰囲気の組織で、OBどうしの親睦や情報交換、互助精神が発揮されることが望ましい。そういう組織であれば多くの会員が会社にも喜んで協力行為を行い、結果として会社にも都合がいいことが多くなるのではないか。
OB会はまずはOB会会員のためのものだ。このような会則は真似たくない例だ。
ポイント: OB会はOB会員のためにあるもの。これを外したOB会では会員は喜ばない。会則はそれを表現すべきだ。
(追記)
もう少しこの会則を読んでいたら、「会員死亡のときは弔電を出す。OB会役員死亡の場合はさらに香典を出す」旨の規定があった。
OB会は任意の団体であり、OB会役員は完全にボランテイヤだ。会員死亡の対応に規定上差をつけるという発想もいただけない。会社人間の発想だ。