0.NHKスペシヤル、「どうしたら買ってくれるのか」より

放送内容
9月25日夜9時より、NHKスペシヤル「どうしたら買ってくれるのか。巨大スーパーの模索」という放送があった。一般聴視者向けの放送であり、あまり期待していなかったが、やっぱりという感じであった。
放送内容は、IYの取り組みを中心に組み立てられていたが、主な論点は次のようなものであった。
  • ものあまりの時代、安ければ売れるという観念に囚われ、いまだにその観念から抜けられない。IYの業務改革はそれから脱却するための企業の取り組みのひとつだった(この紹介に多くの時間が割かれた)。
  • ダイエーは「エブリデー・ロープライス」路線をとり、さらに安い商品開発を通じて乗り切ろうとしたが、企業の再生はならなかった。
  • 西友は、世界一の小売業WALMARTの傘下に入り、再生を図ろうとしているが今のところそれはうまくいっているとはいえない。
その上でIYの取り組みとして隔週の店長会議、靴のグレードアップの取り組み、イベント会場に来る客の観察と来店購入顧客の仮説検証スタイルの例の紹介などが放送された。
そして各社の今後の取り組み方向について、こんな趣旨の紹介があった。
  • ダイエーは食品に特化する方向で企業の生き残りをかける。
  • 西友は新物流センターが来年稼動する(WALMARTの強い物流戦略で利益を確保していく?という意味か?)
  • IYは「セブン&アイ・ホールデイングス」を発足し、引き続き顧客ニーズを汲み取れる体質に変えていく。
本当に聴きたかったこと
一般教養番組であり、これに多くのものを期待するのは無理がある。しかしそれでも私が本当に聞きたかったのは、
  • IYやダイエーはポイントカードを採用しているのは、現在そして今後顧客ニーズの把握に活用しようとしているのか?
  • 顧客は商品だけで店を選ぶわけではない。ストアコンセプトは当然社内で議論されているはずだが、これについてはどうなのか?(この点はまったく言及がなかった)。
  • 放送でも言及されていたように、マスの時代は去ったが今後は誰を顧客にするか(客層〜個人レベルまでいろいろ考え方がある)の視点はどうなっているか?
  • 本社と店舗の関係はどう考えられているのか?(大手量販店は戦略がどう変わろうとも、店舗はいつも本社の動向を気にしている)、などなど。
などである。
特に「誰を自分の顧客にしていくか」の議論は総じて大手企業には希薄であるのが現状ではなかろうかとさへ思っている。これは放送されなかったのではなく、まだその水準に達していないのではないかと思う。


ポイント: マスはもはや存在しない。誰を顧客にしていくかの視点のない戦略は意味を成さない。小売業の多くはまだその議論が足りない。