89.役職定年制度は再考を!
●役職定年制の問題
定年退職して1年1ヶ月が過ぎた。あっという間の1年間であった。私の元いた会社も今後団塊世代が定年退職を迎えるが、自分も含めて定年とは何かをようやく少し考えることが出来るようになった。
多くの大企業がそうであるように、定年退職になる前に「役職定年」制を敷いている企業が多いと思う。私のいた会社では2年ほど前に「56歳役職定年制」が敷かれた。私自身はそのとき59歳であったし、この制度からすると私の場合は3年間延長になっていたようなもので、定年を1年後に控え、個人的には特に抵抗はなかった。
ただ、大卒入社で定年退職まで働く最長在籍の者だと38年間在籍することになるが、その人が役職定年該当者になるとそのうちの4年間を無冠で過ごすことになる。しかも役職定年になる1〜2年前くらいからそのことを意識しだす人が多いと思われるから5年間ぐらいはモチベーションの低下が避けられない。在職38年間のうちの4年以上の期間(1割強の期間に当たる)である。けして短くはない。中途入社の人ならなおさらである。
これでは何人もの有能な正社員のモチベーションを下げたまま抱えておくようなものである。これでいいのだろうか?
●役職定年制の存在理由
役職定年の目的は何であろうか?。最大の目的は「後進に道を譲り、組織の活性化を図る」という説明がどこでもされていると思う。これには一面の真理がある。その背景には、
役職定年制にはこうした問題を解決する狙いがあるといえる。こうした目的を達成する目処が立ってきた状況では企業はもう次の戦略を考えなくてはならない時期に来ている。
- 年功序列制度が下地にあって、昇進が伴わなくても賃金上昇がある程度見込まれていた(人件費の上昇)。
- 流通業のようにある時期急成長で管理職のポストが多く発生し、やや力不足と思われる人も管理職についてきた経緯があり、それらの人が多く役職に留まっていること(人事の停滞)。
●役職定年、定年退職制の見直しを!
時代は変わりつつある。企業の営業戦略と従業員のモチベーション管理が生き残りの鍵だ。そのために次のような方向で人事制度の転換を図っていくべきである。
上級役職者はほとんどの人がそれなりに能力を認められた人である。能力も意欲もある人を結果として角へ追いやり、片やそういう人を部下として使う上司も遠慮しがちになる、こういう状況は企業にとっても働く人にとっても不自然で、社会的に見ても矛盾に満ちている。2007年問題でいわれる「スキルの伝承」問題だけでなく、人という資産を大事にするという視点からも再検討すべき問題である。
- 極力フラットな組織にし、管理職ポストを多く作らない。
- 昇進、降格も気軽に行い、リベンジ(再昇格)も容易に実現できるような制度にすること。
- 仕事の評価制度を数字偏重ではなく、種まきの仕事も含めて公正な評価の仕組みづくりと運用を図ること。(従来の成果主義なるものは事実上給与切下げ狙いのものが多い)
- 3と同時に必要なら賃金上昇の年功カーブを見直すこと。
- 1〜3の運用とあいまって役職定年制は廃止し、能力と意欲のある人にはずっと道を開いておくこと。もし役職定年制をしくとしてもそれは定年1年前でよい(定年後の生活プランを企業として指導助言する期間と位置づけする)。
- 次の段階では定年退職年齢を65歳まで引き上げる。
これは退職後すぐに年金受給を受けられるようにするとともに、労働人口減少時代への備えともなる。
ポイント: 早期の役職定年制は、社員、企業、社会にとって害が大きい。人事制度見直しのなかで再考を!。