78.もうひとつの「2007年問題」(その2)

団塊の世代の今後
いわゆる「2007年問題」は、団塊世代が定年を迎え、企業第一線からリタイヤすることが企業に多くの波紋を投げかけることであることは周知のとおりであり、前項でも触れた。
この問題の波及範囲はさらに大きい。
まずシルバー市場の変化が指摘されている。しかしこの問題はさらに細かく見ていく必要がある。

第1ステージ: 60歳から64歳の間。この間彼らは年金が満額受給できない人が多い。これは2007年から2010年くらいまであり、この世代の消費の行方が関心を引く。退職金を手にするものの、年金収入を中心に月々の可処分所得が低いからである。

第2ステージ: 65歳以上〜75歳未満までの間。この間は年金も満額受給になるが、「高齢者前期」に属し、介護保険第1号被保険者に仲間入りし、老いへの入り口に入る。団塊の世代が2012年にはここに突入し、すっぽりこれに入り終えるのが2015年。65歳以上人口約3300万人のうち、ほぼ三分の一にあたる約1000万人が団塊の世代に当たる。そして2015年を以って高齢者人口急増のペースは大きく平準化に向かう。

第3ステージ: 団塊の世代が75歳に入り始めるのが2022年で、すべてが75歳以上の「後期高齢者」に属するようになるのは2025年。約700万人が該当するとされる。75歳以上人口の急激な上昇は2025年まで続く。団塊世代の本格的な「老い」はここから始まる。この時期日本の人口は12110万人くらいと予測され、ピーク時の2006年の12770万人から見ると人口は660万人くらい減少(約5%減少)になっているとされる。

さしあたり団塊の世代は2007年から第1ステージに入り、それは2010年に終了する。

影響を与える分野
2000年の国勢調査によると、一家の家計を担うことの多い男性では少なくとも50歳までは92%前後の人が仕事についている。これが60〜64歳になると「主に仕事をしている」という人は60%に落ち込む。これには自営業の方も含まれているが、被雇用者は全体の70%がおり、この層は定年前と同じ勤務時間や処遇を受けているとは考えられない。したがって一人あたりの収入は壮年時と比べ大幅に下がっているはずであり、年金も満額受給ではないから可処分所得は相当下がるはずである。
消費のリード役を担ってきたこの層が消費面でどう行動するか、関心のあるところである。

旅行や健康関連のサービス商品には支出を減らすことはあまりないだろう。しかし子育ても終えており、夫婦のみの生活が多く、物品消費全体の牽引役にはならない。他方シルバー商品分野では2025年にかけて彼らの消費動向や好み、価値観が多分に影響を与える。さらには有料老人ホームや介護関連ビジネスにも彼らの影響は大きいと思われる。


ポイント: 消費の世界では、「2007年問題」に加えて、今後「2012年問題」、「2022年問題」とも言うべきテーマがあるということだ。