77.もうひとつの「2007年問題」

人口構造の大変化
「2007年問題」ということがよく言われる。いわゆる団塊の世代が企業の定年退職を迎えるピークに当たり、企業の第一線から退くことで世の中にいろいろの波紋を及ぼすことを指して言われることは周知のとおりである。
この他に2007年はもうひとつ重要な年になると思われていることがある。それは、今のところ推計ではあるが2007年以降日本の人口が減少し始める年となるのではないかということである。

国立社会保障・人口問題研究所が平成14年(2002年)1月時点で推計した日本の将来人口予測がある。この中位推計値をグラフに示すと下図のとおりである。


これによると日本の人口は2006年の127741千人をピークに2007年に減少し始めるという予測になっている。要点は次のとおり。
  • 2000年人口 126,926千人、65歳以上人口 22,041千人
  • 2006年人口 127,741千人、   同上人口 26,172千人
  • 2010年人口 127,473千人、   同上人口 28,735千人
  • 2015年人口 126,266千人、   同上人口 32,772千人
  • 2020年人口 124,107千人、   同上人口 34,559千人
  • 2000年の人口より5%以上人口が減少する県は、
    2010年が2県(秋田、長崎)
    2015年が10県(上記2県に加え、山形、和歌山、島根、山口、徳島、愛媛、佐賀、大分県)
    2020年には25県と過半数を超える。
つまり、2020年の総人口は2000年に比べて2%減少するが、65歳以上人口に限っていうと57%増加する。そして2015年までは老齢人口急上昇の最後の上り坂という。

小売業にどのような変化が?
今後の10〜20年の間に小売業でどのような変化が起きるであろうか?
人口が減少するというのはこれだけでも大変大きな問題であり、少なくとも全体的なマーケットは変化、縮小するのである。
  • 生産の全体を担う15〜64歳人口も減少し、非生産人口を養う負担も多くなる。可処分所得の伸びは大きくは期待できない。
  • インターネットは格段に普及し、これによる商品購入は大きく増えよう。
  • 実店舗販売の額は、人口減少とインターネット販売の侵食でマクロ的には厳しい状況にさらされることになろう。
こうなると顧客や客層をもっとミクロに見て、効率と顧客満足度の高さを追求する商売のあり方がいっそう求められるのではないか。このとき、まだマスを追求する商売をやろうとしている企業には明日はないと思うのである。今の量販店はどこまで残るであろうか?


ポイント: 人口構造の急激な変化自体が小売業にパラダイムの転換を促す大きなきっかけになるかもしれない。