72.介護ヘルパーさんのエネルギー源

そもそもの疑問
縁あって介護関連事業の会社に関係するようになった。まだ介護の現場を見たわけではないのでこの事業をよく理解できたわけではない。ただ、この現場の一線で働く人たちは、重労働で、特に得られる収入が多いというようには思われないのにこの仕事を続けられるエネルギーの源泉は何にあるのあろうと思った。

介護の現場には、介護申請者の介護プランを作成するケアマネージャー、ケアの大半を実行するホームヘルパー(1級、2級がある)、看護士資格者などがいる。そして量的に多いのはホームヘルパーの方である。特に2級ホームヘルパー資格は一定の知識と実務研修を受ければ得られるため多くの方がいる。その人たちの年代は中年以上で幅広く、また学歴もそう高いとは言えない人が多い。なかには少数の問題のある人もいるようだが、多くのヘルパーさん達は何がしかのストレスと格闘しながらも生き生きとがんばっておられる人が多いように見受けられた。

私から見れば、
  • 相手は自分の親でもない他人である、「人間」相手の仕事である。
  • 相手は、手足の自由が不自由であったりだけでなく、なかには「認知症」と呼ばれるいわゆる痴呆症の方までもおられる。
  • 仕事は肉体的にも精神的にもきつい仕事ではないか?
  • なぜこんなにがんばれるのだろう?
と不思議に思え、ほんの数人の方に聞いてみた。

答えは「ありがとう」の声
話を総合すると次のような答えであった。
  • 自分達は介護という仕事に対して別に高いこころざしを持っているわけではない。
  • 自分のできる能力から見て、自分のこれまでの生活経験を活かせる仕事は限りがある。
  • 介護の仕事は人間が相手であり、どうしても相性の悪い利用者もいるし、確かにストレスもある。
  • しかし、仕事を通じて利用者やその家族から心から「ありがとう」と言ってもらえることが一番うれしい。
  • その「ありがとう」という言葉が仕事を続けられる最も大きな力になっている。
意外と単純な答えであった。

大学病院の看護部長をされていた方がこんなことも言っておられた。
  • 「看護婦(今は看護師という)も、高い理想を持ってこの職につく人がいる。それはそれでいいことだが、えてしてこういう人は何かにつまづくとすぐへこたれてしまう人が多い。
  • 患者さんから慕われ、信頼されるよろこびや具体的経験が、看護婦という重労働を耐え抜き、一人前になっていく最大の力であり、理屈だけで仕事をしている看護婦さんはだめです。」
「なるほど」と感じ入った。


ポイント: どんな仕事でも他人から「認められる」ことがその仕事を継続し、成長していける最大のエネルギー源だ。