71.☆アメリカのセルフチェックアウトシステム論議(情報)
なお、下記の原稿は2003年11月に書いたものであり、内容が若干古い。
日本でもこのころイオンが千葉県柏市のマックスバリューでセルフチェックアウトの実験を開始している。ここではアメリカの実情紹介を念頭においている。
●支持されるセルフチェックアウトシステム
今アメリカでは景気回復基調だが、雇用は増えていないという。それを説明するわかりやすい例としてスーパーマーケットのセルフチェックアウト増大があげられている。顧客満足という視点と、セルフチェックアウト採用増大はどう見られているのであろうか。これに関して相次いでアメリカの小売関連サイトで興味深い内容が公開されている。ひとつは著名な調査会社ACニールセンの最近の調査発表であり、原文は下記にある。http://www.acnielsen.com/news/american/us/2003/20031110.htm
これによれば、
かなり新しいシステムにもかかわらず、これを受け入れる顧客動向が強いという。
- 「合衆国の61%の世帯がセルフチェックアウトレーン利用経験がある」
- 「これらの32%はそれをすばらしいと感じている」
- 「セルフチェックアウト利用暦のあるうちの52%の世帯はこれをOKと見、16%は煩わしいと見ている」
- 「セルフチェックアウト利用暦のある世帯の70%は継続して使うといい、25%が今後は使いたくないという」
ニールセン調査の詳細は上記のサイトを見て欲しい。
●唯一の接客接点、チェックアウト機械化の反応
これに関連してアメリカのRetaiWireというサイトでセルフチェックアウト論議がされている。
タイトルは「消費者は、人間よりも機械の方を好む」http://www.retailwire.com/Consumer/Con_Sngl.cfm?doc_id=9416
主な論点や主張を整理すると次のようだ。セルフチェックアウトを支持する声の大きな根拠は集約すると、
つまり消費者、小売業両者にとって見合うものがあるという説明なのだ。別に言い換えると、
- 十分な教育訓練を受けていないチェックアウトの人材とサービスレベルの低い小売業が増えており、それよりはセルフチェックアウトのほうがいい。
- セルフチェックアウトは、早いし便利だ(ただし非UPCコード商品が多いとそうでもない、との指摘も)。
- 企業から見れば、コスト的に有利であるという視点もある。
顧客がチェックアウトに望むものは一様ではなく、懇切丁寧な応対を求める人、とにかく便利さや迅速性を優先する人、さまざまである。こうみると顧客満足や顧客サービス向上は、セルフチェックアウトと矛盾するものではないのかもしれない。現に上記サイトの中では両方を用意すべきという声も強かった。
- 企業競争の激烈化で、チェックアウトの十分教育をしたスタッフ配置が難しい現状がある。
- 顧客も、便利性やいいスタッフのいないチェックアウトを避けたいという思いが一致してセルフレーンを支持する人が増えているという。
●問題の立て方
セルフチェックアウトが日本で普及するかどうかは分からない。アメリカと日本では事情が異なることもある。だがこの問題は小売業の根幹問題ではない。このサイトの最後のほうに、ミッシェル・バンクス(Michael Banks)という人が「(企業間)競争は主観的問題だ。チェリーピッカーまたはハイエンド顧客のどちらのために競争するのか(が主要課題だ)」という指摘が印象に残った。要は、自分の大事にしたい顧客がセルフチェックアウトシステムを望むかどうかだ。